夕焼けが綺麗な公園のベンチ。あたしは涙をこらえながらそこに座っていた。
さっき彼にされたことを思い出すとまた涙があふれてくる、そんな時だった。
「お姉ちゃん、どうしたの?」小さな女の子が話し掛けてくる。
「あなたは?」と訊くと少女は答える。
「セールスレディです! 何か悩み事はありませんか?」といって名刺を渡してくる。
あたしはそれを受け取って、今まであったことを話すことにした。
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551:2006/07/09(日) 17:23:28 ID:qXUK4vnY
「……そうだったんですか、それは大変でしたね」少女は話を続ける。
「彼って女の子のことを何にも分かっちゃいないんだから」あたしは応じる。
「でも、やっぱり彼と良く話し合った方がいいんじゃないでしょうか?」
「そうね、とはいってもまた同じようなことをされると思うととても……」
話していて、あたしはまた涙があふれて泣きそうになる。
「わかりました! 要は彼が二度とそんなことしないようになればいいんでしょ?」
「確かにそうなんだけど……そんなことできるの?」
「まかせてください! これでもあたし優秀なセールスレディなんですよ」
少女は言った。そして続けて
「明日になれば分かります。明日になったら彼のところに行ってみてください」
そういって少女は立ち去った。先ほどの悲しさがいつの間にか無くなっている。
少女の言葉に癒されたあたしは、とりあえず家に帰ることにした。
翌日。あたしはいつものように学校へ行った。
しかしなぜか彼は来ない。今まで学校を休んだことなどない彼がなぜ?
その日はそればかり考えていて授業は上の空だった。
下校時間になり家に帰る。それからあたしは彼の家へ行くことにした。
迷いが無いと言ったら嘘になる。でも昨日の少女の言葉がなぜか耳に引っかかっていた。
彼の家へ行き彼の部屋に入る。しかし、そこには彼ではなくて一人の女の子が。
悔しいことにあたしより美人だった。しかも守ってあげたくなるほどの可愛い子だ。
「誰? 誰なの?」あたしは訊ねる。その答えは意外なものだった。
「僕だよ、祐二だよ。といっても信じてもらえないだろうけど」
彼の声ではない。明らかに女の子の声だった。でもなぜかその子に彼の面影が……
「祐二なのね、あなた。でもなぜ女の子の格好なんかしてるの? まさか」
そういって、あたしは彼の胸を触った。その感触はまさしく本物の女のものだった。
「実は昨日の夜……」彼は話を始めた。
それによると、夢の中に女の子が出てきて話をしたとのこと。
背格好について訊くとまさしく昨日会ったあの子ではないか。
「あなたって、女の子のことを何も分かっちゃいないのね」
「ほっといてくれよ、僕は男なんだ。分かれと言う方が無理だよ」
「じゃあ、なぜ君は彼女にそんなことをしたの?」
「そ……それは……男の生理というものなんだ。仕方ないんだよ」
「そうなの、それじゃあたしが女の子のことを分かるようにしてあげる。
あとは彼女に教えてもらいなさい。えいっ!」
その後のことは覚えていないとのこと。
ただ、朝起きてみたら女の子になっていたことだけは事実であった。
その話を聞いていて、あたしは今何をするべきであるかはっきりと理解した。
「そう、それじゃ今から女の子のことをやさしく教えてあ・げ・る」
そういって、あたしは彼、いや彼女にやさしくキスをした。