無敵!不死身!!巨大娘スレpart8

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134名無したん(;´Д`)ハァハァ
"アーヴによる人類帝国"の領地の一つ、惑星デルクトゥーの軌道宇宙港―――その
広大な待合ホールは旅客船を待つ人のゴミで埋まっていた。
迎えを待っているボクはその中でもひときわ異彩を放っている。復古主義を主張したよ
うなデザインの長衣に身を包み、額には黄金の頭環をはめているのだ。アーヴ貴族の
標準的な正装だが、地上世界出身のアーヴ貴族は少ない。間違いなくこの宇宙港で
はアーヴ貴族はボク一人しかいないだろう。それに「星達の眷属」を自称する彼らは地
上世界にあまり興味を抱かない。
135名無したん(;´Д`)ハァハァ:04/07/21 23:36 ID:ZgmmABcl
 道行く人は皆、ボクを遠巻きに避けて歩く。こちらを指差して母親に何かを聞い
ている子供もいたが、母親は慌てて子供の手を払って叱咤していた。惑星デル
クトゥーではアーヴへの反感が根強いために、いかな地上人でも白い目で見ら
れる。しかしボクがデルクトゥー人に囲まれて暴力を受けることは無い。かれらは
「アーヴは復讐を何倍にもして必ずやり遂げる」と信じているからである。実際に
はアーヴは公平な種族だが、帝国主義的な領土拡張を行ってきたためにこのよ
うな悪名が広まったのだ。そしてこの悪名は彼ら自身をも守ってきた。僕も例外
ではないということだ。
136名無したん(;´Д`)ハァハァ:04/07/21 23:37 ID:ZgmmABcl
と、唐突に何かを引きずるような重い金属音がホールに響き渡り、周囲がざわめいた。
今までこちらを盗み見ていた周りの人々も、音のする方――多くの人でごった返して
いる一般の搭乗扉の隣、高さが150mもある巨大な扉に注目している。たいていの人
は、あの扉は何のためにあるのかと宇宙港の職員に尋ねるのだが、職員がこう答え
ると必ず納得する。
「…アーヴ専用の搭乗扉だ」

扉が完全に開くと、そこには一人の巨人がいた。人類には存在しないはずの青い髪、
やや細身の体、美しい顔、そして100mを超える巨体――間違いない、アーヴだ。顔
だけでは性別が分からない者も多いが、腰がくびれていて胸の部分がやや膨らんで
いることから女性であることが分かる。それに黒を基調としたシンプルなデザインの
衣服に身を包んでいることから、どうやら軍士らしい。
137名無したん(;´Д`)ハァハァ:04/07/21 23:38 ID:ZgmmABcl
ホールは静寂に包まれた。人々は現れたアーヴをしばしの間見上げた後、今度は
ボクとアーヴを交互に見ながら道を開けはじめる。たちまちアーヴとボクとを結んだ
直線上に道ができた。アーヴ女性は道の終わりにボクを見つけると、数千もの視線
を浴びつつ堂々と一歩を踏み出す。着地と同時にホールに重い音が響き、その姿に
人々から驚嘆の声が上がった。何せ彼女の足だけで小型の宇宙艇くらいの大きさ
がある。
…正直、緊張していた。惑星デルクトゥーのアーヴ言語学校に通っていたとはいえ、
貴族身分だったのは当然ボク一人。それにアーヴを実際にこの目で見るのは今日
がはじめてだったのだ。それにこの巨体である。緊張しないほうがおかしい。
138名無したん(;´Д`)ハァハァ:04/07/21 23:41 ID:ZgmmABcl
あれこれ考えているうちにアーヴ女性はボクの手前30mほどで止まると、ボクを悠然
と見下ろしながら踵を合わせて敬礼し、口を開いた。
「リン・スューヌ=ロク・ハイド伯爵公子・ジント閣下か?」
「い、いかにも!」彼女に聞こえるように声を張り上げる。
…でかい。
テレビではよく『アーヴ特集』などという番組が視聴率を集めるが、平均身長は130m
前後らしいのでそれなりの大きさなのだろうとは思っていたが、実物はテレビで見たも
のとは比べ物にならない迫力があった。映画の中に迷い込んだかのような錯覚を受ける。
139名無したん(;´Д`)ハァハァ:04/07/21 23:42 ID:ZgmmABcl
急にアーヴ女性の体が目の前に迫ってきた。片膝を立ててしゃがんだのだ。
「巡察館<ゴースロス>より迎えに参った。手に乗られるがよい」
といって、左手をボクの目の前に差し出す。綺麗な手であった。…しかし、
アーヴの初対面の挨拶はあっさりしているものだ。愛想笑いくらいしてもい
いのに…それとも、地上人だから馬鹿にされているのだろうか。
「どうかされたか? ああ、土足でも気にされることはないぞ」どうやらこちら
の逡巡を誤解したらしい。
「そうですか、では、失礼」
140名無したん(;´Д`)ハァハァ:04/07/21 23:43 ID:ZgmmABcl
彼女の手の平はちょっとした部屋くらいの面積がある。軽く十数人は乗れる
くらいの広さだ。手の平の上は柔らかくも硬くもなく、そして暖かい。
急に下に押し付けられるような感覚…彼女が手を持ち上げたのだ。同時に彼
女は立ち上がり、手の平に乗せられたボクは彼女の目の高さに持ち上げら
れた。視界一杯に広がった美しい顔にドキッとしてしまった。顔をよく見て分か
ったが、どうやら年齢はボクと同じくらいらしい。アーヴは遺伝子改造で不老
の肉体を得ているとはいえ、成人になるまでは地上人と同じように成長するか
らだ。
よほど地上人が珍しいのだろうか、彼女はまじまじとボクを見つめている。ボク
も彼女の美しい顔に釘付けになり、目を逸らす機会を失ってしまった。しばし
見つめ合う。
ほんの一瞬、彼女がニヤけたような…気がした。