またいつものように天使ちゃんはお見舞いにきました
「あくまちゃん、具合はどう?」
天使ちゃんが聞いてきます
「また・・・来たの・・・?・・・良くないよ・・・・」
あくまちゃんがもそもそと起き上がりながら言いました
「そっか・・・・早く良くなってみんなと遊べるようになるといいね」
天使ちゃんが明るい笑顔でいいました、しかしあくまちゃんはそっぽをむきました
あくまちゃんは天使ちゃんが『みんな』と言うのが嫌でした
(いつだって・・・あたしは『みんな』の中にはいないのに・・・!)
そう思うようになったからです
「どうしたの?あくまちゃん?・・・やっぱり・・・具合良くないみたいね・・・」
「わかったなら早く帰ってよ」
あくまちゃんはそっぽをむいたまま天使ちゃんにいいました、これ以上天使ちゃんが『みんな』
なんて言い出すのが我慢できなかったのでした
「わ、わたし・・・もう帰るね・・・お大事に・・・」
天使ちゃんの声はどこか震えてるようでした
しんと静まり返った病室
点滴の液がまた一つぽたりと落ちていきました
つづく
で、このスレどうすんべ。
しとしと雨の降る昼下がりに天使ちゃんがお見舞いに来ました
手にはなにやらスケッチブックを持っています
「今日は雨で退屈なんじゃないかなと思ってもってきたんだよ」
天使ちゃんはにっこり笑って言いましたがあくまちゃんは少しムッとしました
(あたしは雨でも晴れでもずっと病室なのに・・・)
なんてことを考えてるうちに天使ちゃんはてきぱきとお絵かきの準備をはじめました
「ね?ね?お互いの顔を描いて後で見せっこしようよ」
天使ちゃんはそう言うともう一冊のスケッチブックをあくまちゃんに渡しました
「あたしお絵かきなんてしたくないよ」
あくまちゃんがそう言おうとしたとき天使ちゃんがクレヨンの箱のふたを開けました
「あっ・・・すごい・・・」
あくまちゃんは驚きました 箱の中には何十色というクレヨンがずらりと並んでいました
そしてそれを見てるうちにこのいろいろなクレヨンを使ってみたいと思うようになってきました
「じゃあ・・・ちょっとだけ描いてあげる」
あくまちゃんはそう言ってスケッチブックを開きました
二人はもくもくと互いの顔を描き始めました
ときどき天使ちゃんと目が合うのをあくまちゃんはなんだか照れくさく感じました
しばらくして天使ちゃんの髪の毛を塗ろうとしたときあくまちゃんはあることに気付きました
「あれ?天使ちゃん、金色が無いよ?」
そう、ずらりと何十色も並んだクレヨンの中に金色だけがありませんでした
「あっ・・・ほんとだ・・・無い・・・。どっかへ無くしちゃったかなあ?」
そういって天使ちゃんがクレヨンの箱をのぞきこんだとき、あくまちゃんはふと天使ちゃんの絵を見ました
・・・黒一色の絵
自分は何色も使って描いてあげてるのに天使ちゃんはあたしに黒しか使ってくれない・・・
確かに髪の毛も翼も黒だけれどくちびるは天使ちゃんと同じうす桃色をしてるのに・・・
「もういい!!お絵かきなんてやめる!!」
あくまちゃんは乱暴に自分のスケッチブックを閉じてしまいました
「ど、どうして?いいよ、無理して金色をつかわなくても・・・」
天使ちゃんの言葉にさらにあくまちゃんは腹立たしくなりました
(あなたは黒一色でしかあたしを描いてくれないくせに!!)
「急にどうしたの・・・!?あくまちゃん・・・じゃ、じゃあせめて途中でもいいから絵を見せっこ・・・」
「嫌よ!あなたの絵なんか見たくもないしあたしのも見せたくないわ!!」
そう言うとあくまちゃんは自分の描いていた絵をビリビリと破ってしまいました
その瞬間、わあっと声をあげて天使ちゃんが病室の外へ駆け出していきました
「何よ・・・天使ちゃんが・・・悪いんじゃない・・・!」
雨の音がさらにはげしくなってきました
あくまちゃんは天使ちゃんがおいていったスケッチブックを開きました
やはり黒一色
しかしよく見るととても薄い青色で波線のようなものが描かれていました
どうやら天使ちゃんは海を描こうとしてたようでした
そしてその線のすぐそばに
『また二人で海へ行きたいね』
と書いてありました
スケッチブックにまた一つ、また一つと涙が落ちていきました
つづく