古刹

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エリスの作品の魅力はその言葉の透明感にある。「レスザンゼロ」にもその傾向は感じられたが、
まだそれはナイーブなものだった。しかし「アメリカンサイコ」にはもうそんなナイーブさは微塵も
ない。残酷さや陳腐なブランド趣味はむしろ装飾品であって、小説の本当の中心は感情から遠
ざかったエリスの透明な言葉だ。これを訳し出すには、かなりの力量が必要だろう。ストーリーの
方は、どちらかといえば破たんしている。(これはこの後の作品「グラモラマ」にも言えることだ。)
しかし、それにもかかわらず、なおこの作品はその言葉の魅力で読者を惹き付ける。作品のまと
まりという意味では「レスザンゼロ」の方がまとまっていたと思うが、言葉の力ではこちらの方が上。