壬生を精神鑑定するスレの2

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62/名無しさん[1-30].jpg
週末の大通りを黒猫が歩く
ご自慢の鍵尻尾を水平に 威風堂々と
その姿から猫は忌み嫌われていた
闇に溶ける その身体目掛けて石が投げられた

孤独には慣れていた むしろ望んでいた
誰かを思いやる事なんて煩わしくて
そんな猫を抱き上げる 若い絵描きの腕
「こんばんは 素敵なおちびさん 僕らは良く似ている」

腕の中もがいて 必死に引っかいて 孤独という名の逃げ道を
走った 走った 生まれて初めての
優しさが 温もりが まだ信じられなくて
どれだけ逃げたって 変わり者は付いて来た
63/名無しさん[1-30].jpg:03/07/01 20:03 ID:Bb9SwapA
それから猫は絵描きと二度目の冬を過ごす
絵描きは 友達に名前をやった 「黒き幸」ホーリーナイト
彼のスケッチブックはほとんど黒尽くめ
黒猫も初めての友達に くっ付いて甘えたが ある日

貧しい生活に倒れる名付け親 最後の手紙を書くと こう言った
「走って 走って こいつを届けてくれ
夢を見て飛び出した僕の 帰りを待つ恋人へ」
不吉な黒猫の絵など売れないが それでもアンタは俺だけ描いた
それゆえアンタは冷たくなった 手紙は確かに受取った

雪の降る山道を 黒猫が走る
今はなき親友との約束を その口にくわえて
「見ろよ!悪魔の死者だ!」石を投げる子供
なんとでも呼ぶが良いさ 俺には消えない名前があるから
64/名無しさん[1-30].jpg:03/07/01 20:05 ID:Bb9SwapA
ホーリナイト」「聖なる夜」と呼んでくれた
優しさも温もりもすべて詰め込んで呼んでくれた

忌み嫌われた俺にも 意味があるとするならば
この日の為に産まれて来たのだろう どこまでも走るよ

彼は辿り付いた 親友の故郷に 恋人の故郷まで あと数キロだ
走った 転んだ すでに満身創痍だ
立ち上がる間もなく 襲いかかる 罵声と暴力
負けるか俺はホーリーナイト 千切れそうな手足を

引き摺り なお走った 見付けた!この家だ!
手紙を読んだ恋人は もう動かない猫の名に
アルファベットを一つ加えて庭に埋めてやった
聖なる騎士(Holy Knight)を埋めてやった