SAO A
SAOの魅力の一つはリアルで身近な英雄だろうか。
これまでファンタジーアニメの主人公は、
運動神経が万能であったり、秘められた特殊能力を持っていたりした。
しかし、これは我々の現実とは大きくかけ離れている。
多くの一般人には、超人的な運動神経もないし、ましてや特殊能力なんてものは存在しない。
この主人公が初めから備えていた「資質」が我々と主人公の間に壁を作っていたのである。
SAOでは主人公がこうした資質を持っているという描写はなく、
主人公の能力やスキルはゲームにより提供される形を取っている。
レベルという数値が強さであり、そこに個人の資質は介在しない。
能力を内在から外在、先天的から後天的なものにすることで、
誰もが主人公になれる可能性を提供することに成功したのだ。
これにより主人公に自己投影がしやすくなり、物語に入り込みやすくなっている。
そしてただのゲームで終わらせないところがSAOの妙である。
ゲーム内の死をリアルの死と結びつけたことで、
「たかがゲームだろ」という批判は封じられ、
ゲーム内での成功がリアル世界での賞賛に結びつくように構成されている。
手に届きそうな英雄像を見せ、英雄願望を満たすことがSAOの面白さにつながっている。