窓際の哲志の憂鬱:第7回
「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜っっっ!!!」断末魔のごとき叫び声を
あげながら哲志は目を覚ました。「はあっはあっはぁっはあっ・・なんだ夢
か・・・しかし・・糞ッ片蟹の野郎ッ・・・」哲志はつい転寝をしてしまったのだ。
夢の中で哲志は他人の命を持てあそぶ悪魔であった。夢の中で哲志
は、仇敵片蟹青年を恐怖に震えさせ、世界を震撼させる地獄の大魔王
であった。しかし、それは哲志の腐った脳みそが生み出した愚かな幻想にすぎな
かった。現実世界の哲志は、片蟹青年に手も足も出ず、鼻であしらわれるチンケ
な存在にすぎなかった。2ちゃんねるの片隅に見つからないように
名無しで片蟹青年の悪口を書き込むのが、哲志の唯一の抵抗であった。
「糞ッ!面白くねえッ!糞でもするか!」哲志は床一面陰毛だらけの
便所に入った。「ブリッブリッブリッ!」ダンボールを引きちぎるような音を
たてながら、哲志は排便をした。激しい痛みが哲志の体を貫いた。
「ウッウッウッゥゥゥゥゥ・・ウッ!」哲志は脂汗を流しながら糞を垂れた。
「はあっはあっはあっはあっ・・」切れ痔の哲志は毎回排便の度に鮮血に
染まった糞を垂れるのであった。哲志は便所の戸をいきおいよく開け放つ
と、誰もいない部屋に向かって大声で怒鳴った。
「痛みに耐えてよくがんばったッ!勘当したッ!」それはおまえだろうというつっこみ
が聞こえてきそうだった。漢字もろくに知らない馬鹿な哲志であった。
「さて・・次はメシだな」哲志は夕食の準備にとりかかった。メニューは
当然ウンコカレーであった。が・・「しまった!コメを買い忘れた!糞ッ!
コメはチャチャの漫画と違って万引きしにくいしなッ・・」哲志は舌打ちをした。
「しょうがねえな。今日はスープカレーにしとくか。」哲志はさきほど出した
「モノ」を鍋に入れ、水をたっぷりと注ぎこみ、鼻歌を歌いながら調理にとり
かかった。
哲志は、自分の生活はゴミを一切排出しないオールリサイクルの先端を行き、
環境にやさしいエコライフだと密かにひとりご満悦であった。
こうして、また哲志の1日が暮れていくのである。
窓際の哲志の憂鬱:第8回
「あ〜食った食った 満腹だ!」哲志は夕食のウンコスープカレーを完食し満足
であった。そもそも哲志がウンコを食すようになったのは、以前たまたま
見かけた雑誌の記事で「飲尿健康法」なるものを読んだからである。
「小便がそんなに体にいいなら、クソはもっと体にいいに違いない」と考え、
自ら「食便健康法」なるものを考案したのであった。
当然飲尿健康法も実践していた。哲志は毎朝一番に出る真黄色の小便を「一番搾り」
と称し、ヤクルトかわりに毎日飲んでいた。
「おっと、もう7時だな・・今日は金曜日か・・金タマでも見るか・・」
(哲志は「ポチたま」と「金スマ」を混同して覚えていた)
哲志がテレビをつけると、丁度「ドラえもん」を放送していた。
「うっ!ううう・・うっうっ・・・っ!」哲志はドラえもんを見ると、激しい憎悪を
覚えた。なぜだかわからないが、テレビをハンマーで殴りたい衝動にかられた。
恐らく水田わさびが嫌いだったのであろう。「くれよんしんちゃん」には
何も感じなかった。
ムカついた哲志は風呂に入ることにした。脱衣所に入ると、まず鏡の前に直行し、
入念に円形脱毛症のチェックをした。「リーブ21って、万引きできるのかな。
まあ、チャチャの漫画もできたんだからできるだろう」哲志はひどく前向きであった。
哲志は一人ほくそえみ、体をクネクネさせながら、ホーズをとり、ニヤリと笑った。
「ああ・・俺ってそんなにキムタクに似ているのかな?俺が外に出るたびに、
近所の餓鬼どもがキムタク、キムタクって、後を追ってくるからな・・・」
実はそれは「キムタク」ではなく「キモタク(キモいオタクの略)」であったのだが
哲志の耳にはそう聞こえたのである。真実を知らないのは哲志ひとりであった。
「俺はやっぱりキムタクよりは草ナギつよしだよな・・」
全てにポジティブな哲志なのであった。
窓際の哲志の憂鬱:第9回
哲志はまだ鏡の前にいた。鏡に映った自らの姿をうっとりとして眺め、
恍惚の境地に浸っていた。「この角度がキマるんだよな・・・」哲志は最近
キムタクを意識して、髪を伸ばしていた。体を斜めにかまえ、ポケットに
手を突っ込み、体を小刻みにゆすりながらカメラ目線で喋った。
「カンケイないね!」実はそれは柴田恭兵のマネだということを知らなかった。
さて、ここで、哲志の一週間の食事メニューを紹介しよう。
土曜日 ギョニソもやしいため
日曜日 もんじゃ焼き
月曜日 雲固カレー
火曜日 から揚げ
水曜日 もんじゃ焼き
木曜日 雲固カレー
金曜日 雲固スープカレー
哲志は「ハムスターのから揚げ」に味をしめ、またあの美味を味わいたいと
思ったが、資金がなかった。そこで「まあ、似ているだろう」ということで
自室屋上にいるネズミにエサをやり、丸々と太ったところでシメていただく
ことにした。これなら元手はほとんどタダであった。哲志は自分の頭のよさに
有頂天になった。「もんじゃ」は・・・以下省略。
「プォォォォォォ〜」哲志はおもいきりすかし屁をした。食い物がよくないので
屁にも勢いはなかったが、青春の香りがしたと哲志は思った。
「ウッ」半裸状態でウロウロしたせいか、哲志は下腹部に急な刺し込みを感じた。
急いで便所に入ると、哲志は歓喜の叫び声をあげた。
「やった−!今日はボンカレーだッ!こりゃ手間が省けたッ!」
幸せな哲志であった。