北海道新聞 2007年5月22日(火)朝刊全道21面
<放送エクスプレス>中学生の実像伝えて45年
中学生の実像を伝えてきたNHK教育「中学生日記」が今年、放送開始から四十五年を迎えた。
NHK名古屋放送局が制作する番組は、受験戦争、不登校、いじめなど中学生を取り巻く問題を真正面から取り上げてきた。
きっかけは「団塊の世代」が中学校に進んだころの一九六○年に制作された教育番組。受験や非行など中学生をめぐる問題が
注目されていたこともあり、六二年には番組内の再現ドラマを独立させたドラマ「中学生次郎」を始めた。
その後「中学生時代」「中学生群像」と変わったが、七二年からは「中学生日記」となった。
ドラマだけでなく、現役中学生による討論会も積極的に実施。現在はいじめ問題を中学生の視点で考える
「いじめなくしたい!プロジェクト」を進めており、投稿を基にしたドラマや討論会などを順次放送している。
四十五年も続く長寿番組だけに、テーマ探しには苦労する。「出演している生徒との会話が大切です」。東明克実ディレクターが話す。
スタッフの体験や問題意識からテーマを設定するほかに、生徒との雑談からも多くのテーマが生まれている。
出演の生徒は現在、約二百三十人。それぞれ違う経験や感性を持つ彼らとの対話を重視することは、中学生のありのままを正確に
伝えることにつながる。スタッフが設定したテーマについても彼らの意見を聞くようにしている。
「生の部分を拾い上げないと、問題の核心にも迫れないし、見ている人たちに伝わらない」と東明ディレクター。
リアルな番組へのこだわりは、それだけではない。出演者が演じるのは自身の年齢と同じ役。
中学生の見方だけでは偏る恐れがあるため、現役教師の意見を取り入れることも忘れないという。
四月末、名古屋市にある名古屋放送局内のスタジオで五月十九日放送の「“腐女子”だって恋をする」の収録が行われた。 ←
一カットごとに、中心人物を演じる平川佳奈さんと中島由美子さんがスタッフと意見を交換。
せりふの言い方、表情、立ち方、動き方…。スタッフの細かい指示に自分の意見をしっかりと返す姿に感心していると、
東明ディレクターが「毎回、最初はどうなるかと思うが、演じる中でどんどん成長するんです」。
演技の面白さに目覚める生徒も多く、“卒業生”には、中野良子や竹下景子、森本レオ、伊武雅刀、戸田恵子など実力派俳優が名を連ねる。
本年度は新たな試みとして、“卒業生”で俳優の近藤芳正が七八年に演じた中学生の三十年後を描くシリーズを放送。
より多くの人に見てもらうため、放送日時を月曜夜から土曜夜に変更した。
【写真説明】NHK教育「中学生日記」に出演する生徒たち
紙面画像
ttp://ranobe.sakuratan.com/up/src/up191989.jpg ※岩手日報2007年5月21日(月)夕刊3面にも同内容の記事「放送ウイークリー 実像を伝え45年NHK教育『中学生日記』」