もっと地方でもアニメを放送しろよヽ(`Д´)ノ 3
「ほう、ホンマに医者なんじゃな」
通された待合室には、広島の選手のポスターがべたべたと貼ってある。
サインボールもたくさん飾られていた。
どうやら熱狂的な広島ファンのようだ。
「故郷の広島から独り出て来て、ここまでになったのは、広島カープが心の支えだったからなんだよ」
男は新井にそう言うと、またあの錠剤を取り出した。
「新井さん、これは一種の麻薬だ。神経を極度に集中させる効果がある。アメリカ球界では禁止薬物だ。
しかし今の日本のプロ野球界では、まだ知られていない。試合の1時間前に服用してくれ。
飲み過ぎると逆効果になる。必ず1錠だけを、試合の1時間前に飲むんだ」
「でも、それは、、、やってはいかんことじゃろ」
「いいか悪いかはバレてからの話だ。でもこれを飲まなければ、あんたは今季もパっとしない成績のまま。そして広島は今季もBクラス。下手すりゃ最下位。そうなれば浩二監督はクビだ。あんたそれでもいいのかね」
それは悪魔の囁きだった。
「なに、ステロイドなんかの筋肉増強剤と違う。あんたの肉体的資質は抜群なんだ。そんなものは必要ない。ただ、一打席一打席、今よりもっと集中させるだけのものなんだよ。あんたの素質を、ほんのちょっと引き出すお手伝いをするだけのものだ。決して悪いことじゃないよ」
なお逡巡する新井に、男は錠剤を強引に渡した。
「騙されたと思って飲んでみろ。飲まなきゃ、あんたは去年と同じ。そして浩二監督はクビだ」
意を決して錠剤を飲み込んだ新井は、半時間後、今までにない高揚感を味わっていた。
『広島カープは、ワシが救う!』
「どうだ?効いてきただろう?」
「ああ、ええ感じじゃ」
「もう一度言うが、これは魔法のクスリじゃない。あくまであんたの力を引き出すお手伝いをするだけのものだ。一番大事なのは、練習だ。くれぐれも、飲み過ぎんように」
男は新井に錠剤の入ったピルケースを渡し、タクシーを呼んだ。