「敏江、手伝ってあげなさい」
敏江は眉子の手をつかむとぐいっとラジオペンチを押し込んだ。
「いたああああっ」
ペンチの先端は、細い指と比べかなり太い。
爪の間に差し込んだだけで血が流れ半分爪が剥がれかけた。
「さあ、自分の力で引き抜きなさい」
眉子は懸命にペンチを引っ張るが、抜けない。
「はやく抜かないと、痛いだけよ」と亜紀。
「眉ちゃんは、美人で頭も運動神経もよいのに力がないのねぇ。捻ったり、ひねったりいろいろ工夫しなさいよ」と亜紀はアドバイスを送る。
眉子は時間をかけて、何とかねじり剥ぐことができた。
「もう1枚はぎなさい」
「ゆるしてください。もう、限界です」
亜紀は無視して、眉子を睨み付ける。
「わ、わかりました・・・・」
眉子はまた自分の爪を剥がし始めた。今度は、要領を覚えたらしく最初の半分の時間で剥がされた。3枚目もより速く剥ぐことが出来た。
「上手になったからこれくらいで許してやるわ。次行くわよ」
鉋で少しづつ爪を削っていく。いつ肉に刃が当たるか分からない恐怖感が眉子を緊張させる。刃が肉に達すると眉子は悲鳴を上げた。
足の指の裏から釘を突き刺し爪を剥がす。万力で爪を割る。爪の間に糸を通し、剥がれるまで引く・・・。
20枚もある爪は、眉子に20通りの苦痛を与え剥がされた。
傷口には焼きゴテがあてがわれ、治療されたことは書くまでもない。
一枚ずつ時間をかけて剥がしていったので、全部剥がしおえる頃は、夜中近くになっていた。
眉子は、失神することなく耐え抜いた。正確には、オピオイド拮抗薬により、興奮状態がつづき、体が失神状態なのに精神は、起きている状態がつづいていた。
しかも、痛みに慣れることがないので、一枚一枚、新鮮な激痛を味わい続けたのだ。
章一は、眉子を失神させるため、爪を剥がした肉に油を塗り、火を灯した。
「あああああっ!」
拷問イスの上で身悶える眉子。襲ってくる激痛に逃げ場のない精神は、自ら消えるしかない。
「この程度では、なかなか眠らないな」
章一と亜紀は、目をあわせ微笑んだ。
指先の炎が消えかける頃、眉子は、目を見開いたまま、失神した。