22〜23日目の間(8月10〜11日、深夜)
見回りの敏江が地下牢に入ってきた。昨日の休息で落ち着いた眉子は、賭に出る覚悟を決めた。章一や亜紀は、言いくるめそうにないが敏江ならなんとかなるかもしれない。助かるのは今しかないのだ。
「敏江さん。今日のことで警察の捜査も本格化すると思うの。あなたたち警察に捕まってしまうわ。そうなったら、死刑になるかもしれないわ」
「だまれ。つかまりっこない」
「お願い。わたしの話を聞いて。わたし、あなたのようなたくましい女の人が好きなの。あなただけは、捕まって欲しくない。
でも、他の人たちは、そうじゃないと思うの。章一さんと亜紀さんは兄弟だし、亜紀さんと明美はいい仲みたいじゃない。
捕まったら3人が口裏を合わせればあなただけ死刑になることだって考えられるわ」
「ふん。亜紀様はそんなことしない」
「でも、あなただけ、後かたづけさせられたり、夜の見回りさせられたり、わたし、貴方が好きだから・・・ここから逃がしてくれたら、警察であなただけ、脅されてしかたなくやったって証言するわ。
そして、他の3人が逮捕された後、わたしはあなたの腕の中で虐められたいの。キスして。敏江さん」
眉子は目を閉じ敏江に自分の顔を差し出す。
「本当だな」
敏江は眉子の唇を吸い、舌を差し入れてきた。眉子は鳥肌が立つほど身震いしたが、舌を絡ませる。
「ああっ、んぐ、んぐ、ス、テ、キよ敏江さん・・・」
眉子は敏江に見送られ地下より出ることに成功した。眉子に失敗は許されない。慎重に館の様子を確かめる。
亜紀の部屋からは、明美との喘ぎ声が聞こえてくる。章一はもう寝てしまっているようだ。今、外へ出ることは簡単だが、西も東もわからない山中を裸で彷徨うことになる。
体中傷つき、内臓も痛めつけられた体で、逃げ切れる可能性は、少ない。
眉子は居間へ行き電話を見つけ、110をダイヤルした。
「もしもし、警察ですか」
「う〜ん。そうですが、あなただれです?」
眠そうな声だ。
「わたし、河合眉子っていいます。助けて下さい。誘拐されて、閉じこめられています」
「え、まだ、報道されていない。い、イタズラじゃなさそうだな。今、どこにいますか?」
「わかりません。どこかの、別荘みたいです。逆探知できますか?」
「待って下さい。少し時間がかかります。電話を切らないで」
「は、早くして下さい。わたしの家族を保護して下さい。逃げたら殺すって言われているんです」
「わかりました。すぐ、本署の方へ連絡を入れます。犯人は何人ですか?」
「4人です。男が1人、女が3人です。女の子3人は、わたしと同じ高校の生徒で、真野亜紀、敏江、工藤明美っていいます。男は真野章一で、学者みたいな人です」
「わかりました。逆探知が成功しました。すぐ救出に行きますから、隠れていて下さい」
電話が切れた。