新聞雑誌でアニメ・オタク特集が載ったら集まるスレ3

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97メロン名無しさん
朝日新聞 2006年12月1日(金)夕刊6面
(時評圏外)エロマンガよ永遠なれ  小川びい

 今回はエロマンガについて……と書き出して、ちょっと緊張してる。なにしろ、このコラムが載っているのは朝日新聞。
朝日と言えば、90年9月4日の社説「貧しい漫画が多すぎる」が思い浮かぶ。
 Hな題材を扱ったマンガを「低劣」「貧困」と非難した、あの社説をきっかけとして、90年代はじめに「有害コミック騒動」
が起きたのだ。
 ……てな歴史も教えてくれる本が出た。永山薫の『エロマンガ・スタディーズ』(写真、イースト・プレス)は、手塚治虫から
始まるエロマンガの歴史を縦軸に、現在のジャンルの広がりを横軸にして、その全体像を描こうという野心作だ。連綿と続く歴史と、
様々なフェティシズムによって生み出された異形のジャンルの数々は、よく知らない人にとって驚きの連続だろう。
 時に暴走するその記述は、研究と呼ぶには少々ゆがんでいるかもしれない。けれど、この本の読みどころは、まさにそのゆがんで
暴走する部分だ。いみじくも社説が指摘したようにエロマンガは「低劣」で、発想が「貧困」だ。読者と描き手の欲望のままに増殖し、
影響も隠さない。だからこそ豊かな実りもまた多く、他のジャンルへも多くの作家を輩出してきた。こんな暴走する世界を
表現するには、書き手もまた暴走せざるをえないのだ。編集側からの証言である、塩山芳明『出版業界最底辺日記』(ちくま文庫)
と合わせて読めば、さらに面白い。
 一方で、安田理央・雨宮まみ『エロの敵』(翔泳社)によれば、エロ雑誌やAVを中心とするアダルトメディアは今、ネットの影響で
大変な危機に瀕しているという。エロマンガも他人事ではない。一見百花繚乱なのも裏を返せば、強い求心力を失い、ひたすら
読者のニーズに合わせ分化した結果とも言えるのだ。歴史を振り返る企画が出ること自体、全体が落ち着きつつある証拠かもしれない。
 どうかエロマンガがこれからも低劣で(おもしろく)ありますように!  (ライター)


参考サイト:悠々日記 ttp://d.hatena.ne.jp/YUYUKOALA/20061202

『エロマンガ・スタディーズ 「快楽装置」としての漫画入門』(永山薫/著 イースト・プレス 2006.11)
http://eastpress.rabby.jp/search_buy/srh_shouhin.php?serial=520
『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』(塩山芳明/著 筑摩書房 2006.7)
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480422354/
『エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること』(安田理央・雨宮まみ/共著 翔泳社 2006.9)
http://www.seshop.com/detail.asp?pid=7222
98メロン名無しさん:2006/12/05(火) 22:17:18 ID:???0
【発掘!オタク記事】(>>97の参考 16年前の記事)

朝日新聞 1990年9月4日(火)朝刊5面
(社説)貧しい漫画が多すぎる

 東京都の生活文化局が、市販されている332種の週刊誌や月刊誌について、そのセックス描写を調べてみた。
硬派の雑誌も含めた調査だが、それでも、あきれるような数字が並んでいる。
 「漫画の50%は性的描写を含み、8%は自慰行為を描いていた」
 「グラビア写真に登場する女性のうち、41%が性的器官を強調されていた」
 四コマ漫画を除く、いわゆるストーリー漫画を約1200作品、約13万コマを丹念に調べた結果だ。グラビア写真の人物は
約7000を点検しており、この種の調査としては、前例のない規模だろう。
 外国からやってきた人は、電車に乗ってみて、露骨な漫画や写真の載った印刷物を広げる日本人の多さにびっくりする。
ポルノが解禁されている欧米でさえ、場所も時間も構わずに、これほど堂々と「性」がはんらんしている地域は珍しいだろう。
 都民へのアンケートでも、青少年への影響を憂える声が大きかった。こうした漫画や写真を幼い時から見せられて育つと、
どんな人間になるのだろうか。文化の将来を考えて、そら恐ろしい気持ちにもなる。
 とくに強調したいのは、こうした現象を女性の立場で考えてみる、ということだ。今回の調査を分析した執筆陣は、
性の商品化、とくに女性を「モノ」として見る風潮を厳しく批判していた。
 都民に「女性の身体の一部分を強調した表現をどう感じるか」と聞いてみた。女性の55%は「不快だ」「女性蔑視(べっし)」
と答えており、「きれい」との反応は17%だけだった。男性の、それぞれ18%と39%に比べると、感じ方の違いが分かる。
 集められた漫画の多くが、男性中心の物語だった。暴力による性行為でも女性は快感を感じるとか、つねに奉仕するポーズを
女性にとらせるとか、男の好色に都合良く描かれている作品が少なくない。
 男性の編集者や漫画家は「物語の流れから必然の描写だ」「女性蔑視どころか、美しく描いている」などと反論する。しかし、
「性交の場面がキス場面の2倍以上もある」といった調査結果を読むと、商売優先、そして発想の貧困、と思わざるをえない。
 この夏、「鉄腕アトム」の手塚治虫さんをしのぶ展覧会が、東京国立近代美術館で開かれた。ユーモアと人間性、そして
文明の将来を憂える哲学など、改めて学ぶことは多かった。その理想と創造力を後輩作家がもう少し受け継いでいたならば、
「漫画亡国」の批判も起こらなかったろうに。
 昨年、大胆な水着ポスターなどに抗議した女性グループがあった。不自然な図柄は劣情を刺激し、女性の人格を無視している、
という主張だ。非を認め、前向きの努力をした企業も少なくない。エッチな出版物についても、女性の側から「不快です」
の声が続けば、内容は変わっていくかもしれない。
 もちろん、低劣であることを理由に、法律や条例で規制するべきではない。問題の多い雑誌などがあっても、話し合いと、
出版側の自制で解決していくべきだ。
 その代わり、マスコミに携わるすべての人々は、1975年に国際婦人年世界会議で採択された「メキシコ宣言」を思い起こして
もらいたい。こんな趣旨の一節である。
 「すべての報道、情報、文化メディアは、今日なお女性の発展を妨げている文化上の要因の除去につとめ、女性が果たしていく
価値を肯定的に社会に投影させることについて、高い優先度を与えるべきである」

紙面画像 http://ranobe.sakuratan.com/up/src/up155681.jpg