構成とストーリーについて
この作品について特筆すべきはその構成であり
主軸のストーリーの間に時系列を無視して短編のストーリーを挟み、一度視聴者に先の展開を見せる事で
その短編中のキャラクターの行動、言動が全て伏線として生きる。
これによって視聴者は通常のように先の展開を予想するのでなく、
前の展開を推測し整合性を取ろうとする作業をすることになるが、
この知的作業に通常のamusingとしての面白さではなくinterestingとしての面白さがある。
またこのメメント的構成法はキャラクター描写、世界観描写にも一役買っている。
というのは短編という一つの完結したストーリーを説明無しに登場するキャラクター達が
物語中の個々の事象に対してとても個性的な個々の対応をありのままに示す、
この「加工された描写」というより「生の素材」とも言うべき、
新しい形での視聴者へ向けたキャラクター性の提示が
実に直感的で、何より具体的なキャラクター描写になっているのだ。
そして最後にこの構成はシナリオの面に於いても大きな意味を持っているといえよう。
時系列の先を見せて伏線を張ってしまうという構成は一見無茶苦茶に見えるが、
実は一般的にしっかりしていると言われるご都合展開によって伏線を張る形の構成より
本質的な意味でしっかりとした構成だと言える。
というのは通常の構成ではどうしても本編でのネタバレの部分的な提示にシナリオ的無理が生じてしまうからだ。
その点、短編として時系列の先の展開を見せ部分的なネタバレにするという手法をとれば
当然本編のストーリーに無理や負担が生じず、自由にストーリーを組む事が出来るのだ。