ゴーストハント ネタバレスレ

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54緑の我が家
横断歩道の手前で立ち止まって、ぼくは信号が変わるのを待つ。
ぼくはなぜだか、人間のことや人間社会のことがよくわかる。
変な猫だって言われるのはそれだからだ。
尻尾が長くて真っ白で、体は小さい。ぼくはそれが自分がまだ子供だからなんだって分かってるけど、他の猫に言わせるとぼくは子供のはずがないらしい。実際、ぼくよりも小さかった猫がぼくを追い抜いて大人になって、そうしてどんどん年を取ってしまう。
どうも他の猫よりも歳の取り方がが遅いみたいなんだけど、その理由は分からない。
だからやっぱりぼくは「変な猫」なんだろう。
でも、ぼーさんは気にしてないので、ぼくも気にしないことにしてる。
てってこ歩いて、ぼくはウチのあるビルの前に来た。自動ドアを入ると、守衛のおじさんが声をかけてくれた。
「お帰り」
「ただいま」
ぼくは答える。おじさんにはわからないけど、こんなのは気分の問題だ。
エレベーターの前に立ち止まるとサラリーマンの人たちが声をかけてくれる。ビルは12階建てで、ウチは12階にある。階段を使っても良いけど、人がいればエレベータを使うことにしてる。
「あら、梅吉、元気?」
OLのおねえさんが声をかけてくれた。
ぼくは、元気、とあいさつする。
「やだぁ、どうして猫が居るんですか先輩」
「12階の猫よ。梅吉っていうの」
「12階、どこか入ってたんですか?」
「まぁね。そこの猫なの。見かけたら、12階のボタン押してあげてね」
「エレベーターに乗るの?すごーい」
ぼくにはエレベーターくらい何でもない。12階のボタンは一番下にあるから、何回かジャンプすれば誰もいなくたってちゃんと12階で降りられる。
人がいた方が楽だし、誰もボタンを押してくれないときは適当な階で人と一緒に降りて階段昇ってしまうけど。
エレベーターが到着して、のくは中に乗り込む。おねえさんが12階のボタンを押してくれた。ボタンの横には小さな板がついてる。
何階に何て言う会社が入っているのか書いてあるんだ。
12階の板には何もない。会社が入っているわけじゃないからあたりまえだけど。まさかウチって書くわけにもいかないし。

続く。