【なるせ】楽画喜堂をオチするスレ41【AA・RA】

このエントリーをはてなブックマークに追加
463メロン名無しさん
天秤神社は、長い石段を上った先……黄道町を一望できる小高い丘の上に建っている。
ただ辿り着くためには長くて急な石段を上る必要があるためか、神社に人の気配は無かった。
しいて言うなら社務所に神主さんらしき人が居るだけだ。
この石段を逆立ちをしながらだとかタイヤを引きずりながらだとか、そんな格好で往復している人が時々目撃されるらしい。
鳥居をくぐると、そこには野球が出来るんじゃないかって位に広い敷地が広がっている。
ここで真剣だとか槍だとかを振り回している人が時々目撃されるらしい。
でも……悲しいかな、黄道町ではその位は驚くに値しない出来事だったりもする。
この町の人達は『銃刀法』って言葉を知ってるのかなぁ……?
もっとも、世の中には刀の携帯を特別に許可される職業もあるらしいけど、僕は詳しく知らない。
「倉田君、また難しい顔してるよ」
「ごめん……」
「ほら、狐さんは居なかったけど良い見晴らしだよ」
最上に示されるまま、僕は景色を眺めた。
高い所にあるだけあって、見晴らしは本当に良かった。
ここに来るのは初めてじゃない筈なのに、僕は目を大きく見開いていた。
「本当にそうだね」
すぐ近くに銭湯の煙突、そこから少し離れた場所に昇龍高校、人馬遊園地の観覧車も見える。
パノラマのように広がる僕が生まれ育った町、そしてすぐ隣に最上可奈。
……このままで良いんじゃないかな、とも思う。
このまま最上といろんな場所に行って、いろんな経験を共有して、きっといろんな景色も見る。
……それでも良いんじゃないかな、とも思う。
黒崎先輩とは別れたんだ、もう僕は責められたりはしない。
だから……このままで良いんじゃないかな、と思っていた。
いつの間にか僕は、最上だけを見つめていた。
「やっと直った、そのしかめっ面」
「そう……かな?」
自分では良くわからない、でも最上がそう言うのならそうなんだろう……
 ……ちゅっ……
「……っ!!?」
唇と唇が触れ合っていた、静かに目を閉じる最上が視界いっぱいに広がっていた。
完全な不意打ちをもらっていた。
「ちょっ……最上!?」
「ちょっとだけ素直になってみました」
最上は悪びれもせずに笑っていた。
それが酷く恥ずかしくて、いたたまれなくなって、僕は最上とは逆方向を向いた……
……心臓が……止まるかと思った……
本来病院に居なくてはいけない人物が……黒崎先輩が……
唖然とした顔をしながら、鳥居の影に立っていた。
464メロン名無しさん:2006/08/24(木) 14:28:24 ID:???0
「はぁ……あんた、やってくれたな。それ、立派な偽造行為なんじゃねぇの?」
「何を言われようと構いません。あなたが犯した罪とくらべればちっぽけなものですから。」
よくまぁ口が回りやがる。とりあえず……いまはその場しのぎだ。
「かせよ。」
そう言って奏でから偽造紙を奪うようにぶんどる。こんな事をしても意味が無いと分かってはいたが、気が済まない。
ビリビリ……
何度も細かく破り、結婚なんかの意思がないことを教えてやる。
「あら……それを作るの、結構なお金がかかってるんですよ?」
「ふん……桐原グループからすればそんなの痛くも痒くもないだろ。そんなことだったら、あんたの姉さんの記憶でも戻してみたらどうだ?」
今の一言で奏の顔色が変わるのがわかった。大人びたふりをしていても、やはり子供であることには変わりはない。感情を面に出すのを抑えられないのだ。
「姉さんだなんて……気安く呼ばないで!」
自分の気持ちを落ち着かせようとしているのか、一度深呼吸をしたあと、またいつもの無表情な顔に戻る。いつ見てもこの顔はいやな感覚だ。
「でもまあ、あなたが姉さんにしたことを麻子さんが知ったら、きっとあなたのことを軽蔑するでしょうね。」
「……好きにしな…もう、麻子とは…もどれないさ…。」
何故か、心がイタイ。なんでだろう。