奈々穂「知っていたんだろうおまえたち………」
りの「はあ……?」
シンディ(……………)
まゆら(……………)
ざわ… ざわ… ざわ…
奈々穂「フン……!」
りの「?」
奈々穂「この舞台は………遊撃を殺す場だと……新入りの蘭堂りのはともかく…………他の古参の連中は知っていた。知っていて黙っていた………!
なんのことはない…みんな消極的とはいえ隠密に協力していたってわけだ……!
一方で…隠密の強権に不満…不平を抱いているはずなのに……一方で協力してるみたいな……
そんな……精神……大嫌いだっ………!聖奈さんも嫌いだが………私はそういうどっちつかずのぬらぬらした奴…そんな奴らも…大嫌いなんだっ………!」
小百合(……………)
れいん「副会長……」
りの「はあ………」
奈々穂(誰が負けるかっ…!勝つっ…!勝つっ…!私は勝つっ……!
ここでっ…!ここでっ…!ここで勝つっ……!負けるわけにはいかないっ…!
天地っ…!ここで負ければ天地っ…!負ければこの地下の底の底(極上生徒会)で………さらに絞りとられる悪夢に突入っ……!事実上予算を半分もピンハネされちゃってまさに奴隷っ……!
沈むっ……!這い上がれない………沼の底にっ……!
しかし勝てば…今勝てば…予算を取って……向こう一ヶ月は活動可能にっ……!
となれば……先月分の赤字をまゆらに叩き返してもまだ余裕は残る……!
やり直せる………完全に……!目指せるっ……!またあの希望…理想の楽園を目指せるっ……!
ダーツの目一つで…天地っ……!くそっ……!くそっ……!くそおっ………!
なんでこうなるんだ遊撃の予算はっ……!いつも……!いつも………!)
>>181 ×小百合ちゃん
○奈々穂さん
だったorz 最初小百合で書いてたんだけど修整するの忘れてた…なんという失態だっ……!
「極上生徒会録カイジ」第一期エンディングテーマ「偶然帝王」
キミはいま 他人だね
互いを知らない 出会って間もない
キミもいつ 捨てられる?
繋がれないから おいで偶然の帝王(エンペラー)
それは地獄の底に見えた ゴキブリのよう
同じ場所にいる だけど気づけない
大金が積もるだけで 世界が虹色になって
運命ごと 変えていく刹那
船に来た ゴミを見て
最初の一言 そこに偶然の帝王(エンペラー)
それは目の前にやって来た いい話
腕組んで解かねば 世界が灰色に見える
この城だと 道は開ける
探してる 手に入れたい
大金を求めて 何処かにあるはず
きっかけを 待っている
掴み取りたい おりて偶然の帝王(エンペラー)
抜けない針 Eカード 二度刺しても
他にいるから わがままな黒幕
続いてる 長い夜
仕込んだ当たりクジ 勝利感じて
破られて 傷ついた
きまぐれなピンチ やるな偶然の帝王(エンペラー)
勝ちまくる 笑い出す
常軌を逸して 快感に感謝で
キミとやる 脳を焼く
ギャンブルのジャンキー そこに偶然の帝王(エンペラー)
「極上生徒会録カイジ」第二期エンディングテーマ「戒する奇跡」
積もった借金の数だけ 地下の刑期は長引く
だからくじけないで いつの日か脱出はかなうの
そっと働いていて 金(ペリカ)が尽きるほどに
飲み食いしたら どんな物も極上(スペシャル)ねきっと
夢みてた外出 訪れるその前に
地下でさえも 借金になる地獄に落ちて
舞い上がる粉塵 未来の死になっていくはず
だからあきらめないでチンチロを 挑みつづけてく
激しいイカサマの中 けなげに力を合わせ
賭け金をもっと釣り上げて 特殊な賽を信じて
ずっと望んできた 一時的な生還
数々の人を食らう 底なし沼(パチンコ)
莫大な借金を 返し切るそのために
男の子は考えながら 王国に挑む
頼れる仲間と組んで まだ見ぬ億を目指そう
私にしか勝てない勝負が 待ってる気がする
玉を弾く役物は 飴とカイロを仕込んで
クギを緩めビルも傾けてく クルーンの傾斜を信じて
待たせた仲間の数だけ 手元に金は無くなる
だからくじけないで いつの日か奇跡を掴むの
乏しい残金の中 けなげに仲間を救い
毎日をもっと輝かせて 明日の勝利を信じて
極上だ!
琴葉(途中…………途中、途中、途中………
そう考えていることで今の私はやっと凌いでいる。生きながらえている
その日その日食うだけの任務をしあとはただ覇気なく半ば眠っているような日々
くそっ……!
そうさ……途中だと思わなければやってられないっ……やってられないっ………!
しかし………それにしてもどういうわけなんだろう
あれから何日か経つのに副会長からの連絡、つまり銀河久遠自身の釈明はない
もっとも銀河久遠が来たところでどうにもならない。なんせ会長命令だ
四期生の隠密じゃ聖奈さんの指示からして覆せない
神宮司奏会長の部屋に銀河久遠が忍び込んでもスパイとしての制裁はまず出来ない
出来ないのだ………まるで同じ場所を走らされているルームランナーのマラソン
汗はかくが一歩も前には進めないという徒労の循環、これでやる気の起きる奴の気がしれん
そんな奴はまるで変態だ。マゾもいいとこ、私には理解不能
どうしてがんばれる……?どんなに一所懸命「何か」を築いたところである日連中の手先がドアを開け奏会長の秘密を探り当てたらそれまで、全て終わる。全ては砂上の城
くそっ……!くそっ…!くそっ…!くそっ…!
見逃さなければよかった………あの副会長を見逃さなければ……私は禍根を残さず任務に没頭出来た
プラス銀河久遠の背後関係とか…そういう情報を手にすることもできた
それだけわかれば極上生徒会は先へ行けたかもしれない
キッカケが掴めたかも………獅子身中の虫を追い出す……キッカケ………!)
琴葉「うっ……!くそっ……」
みなも「こらっ…!出てこないよっ……!調査目標っ…!タラタラしないでっ…!ボケがっ……!」
琴葉(……………)
みなも「つまんないっ……!出てこないじゃんいい加減……!」
琴葉(……………)
みなも「なんなのよ……?琴葉先輩……そういう態度がね……」
りの「みなもちゃんっ…!お茶が入ったよっ……!大福もあるし…どう……?軽く……」
プッチャン「二人ともっ…!食わねえか〜〜〜〜〜〜〜?」
みなも「ったく…!そうなのぉ〜〜〜〜?ちょっとだけだよ……」
うき… うき… うき…
みなも「あーーーーどうしたの……?来なよ琴葉先輩も……あーん………?」
琴葉(うえぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ………たまんない〜〜〜〜〜っ
こんな雰囲気たまんないーっ
私はダメだ、つくづくダメ………ここの他の連中のようにうまく取り入ることができない
結果浮き疎まれてしまう……まさに典型的社会不適合者、天の邪鬼、損ばかりだ……
この難儀な性格のせいで私は行く先々で他から疎まれ、いつも情報収集や裏工作など損な役回りをいつも追わされる
そしてなんというか………始末に悪いのは私にはその方が心地よいというか…楽なのだ
他人とぬるぬる係わって作り笑いするより数段楽
結果毎度繰り返してるいつものパターン、一人「孤立」という沼にズブズブ嵌まっていき、気が付けば変人扱い………)
189 :
メロン名無しさん:2006/02/19(日) 04:05:18 ID:Y57Uo9820
ちょwwwww何此処wwwwww
香「あっ………?」
りの「声の様子が変だったから、もしや和泉さんは風邪か……と思いまして………急遽みんなに召集をかけました……!」
奈々穂「おーいみんな……!極上生徒会出動……!」
れいん・小百合「はい………!」
りの「さぁ……和泉さんはもう休んで…!」
香「蘭堂さん………蘭……」
香(うっ………!うう……なんなの……今の幻想は…?弱っている……!
あ………!う……!ううっ……!
う……!
バカ………!ありはしないのよ……!
苦しいときに仲間が駆けつけるみないな………んな調子のいい事は……!
そんなのは……フィクションの中だけの話よ……!
現実にはありはしない………!かつて……一度でもあったかしら……?
ピンチに………援軍が駆けつけた事など……!ないっ………!ありゃしない………!
ハァ……ハァ……
苦しみは一人……いつだって一人…!
一人で乗り切る………!わかりきった事じゃないの……!
孤軍奮闘よ…………
孤軍………
孤……)
聖奈「ただピロットちゃんを持ってるだけで女の子を磨くことになる。マジカルな生き方が手に入るのよ」
みなも「マジカル……?」
聖奈「ためしにピロットちゃんをここに置いて、今手ぶらでお部屋に帰ってみて。そうすればわかる、お姉ちゃんの言った言葉の意味が……」
みなも「……………?」
カン… カン…
みなも(!……荒らされてる……!いったい誰が………?)
キ……(みなもの部屋の前に奈々穂が出現)
みなも(奈々穂副会長さん………目が尋常じゃない。精神に変調……?
この家捜しも副会長さん……みなもが取ったピロットちゃんを取り返しに来た……!)
ユラ…
みなも「おいっ!言っとくけどここにはなにもないよ……!
ピロットちゃんは預けちゃった……手元にはないっ!みなもに手をかけても一文の得にもなんないってこと……!損得もきかないのっ……!副会長さんっ………!」
ユラ… パタ…(奈々穂、みなもの部屋から去っていく)
みなも「ハァ…ハァ……」
聖奈「ピロットちゃんを失った奈々穂さんは普通じゃない。ガラリと変わって仏が鬼になるくらいザラ………」
みなも「……………」
聖奈「人はみな……その薄皮一枚の下に鬼を飼っている。「ピロットちゃんを抱いて暮らす」ということはその鬼の海を泳ぐことよ。ただ持っているだけで鍛えられる」
みなも(……………)
聖奈「言葉じゃなく実感できるでしょう。ピロットちゃんの魔性、人のもろさ」
トゥルルル… トゥルルル… チャ…
みなも「……もしもし久遠副会長さんですか?」
久遠「ああ……みなもさん」
みなも「奈々穂副会長さんがそっちに行ってない?行ったら気をつけて!あの人相当おかしいよ……!」
久遠「ククク……みなもさん、奈々穂さんなら今帰ったところですわ」
みなも「え…?大丈夫ですか何か危ない目に……?」
久遠「別に……穏便に話し合っただけですわ……これからのこと…奈々穂さん感謝しながら帰られましたわ」
みなも「感謝……?」
久遠「ええ………これから先は私と奈々穂さんでボロ儲けしようという話をしてさしあげたのよ
主役はあくまで奈々穂さん……私は後ろでお金を出すだけですの
とりあえず海外限定販売のピロットちゃんをお渡ししましたわ。ただし金利が5日で一割……」
みなも「なにィ……!」
久遠「ククク…みなもさん、これが一番カタイのよ。なにも危険なことをしなくていい……
5日で一割を複利を回すと倍に増えるのに約40日、80日で元金の四倍。四ヶ月たてば元金の八倍
この条件は事件を見つけ隠密の手伝いのために遊撃の出動にもっていくまでにどうしたって三、四ヶ月はかかる。奈々穂さんがまゆらさんとの交渉に勝って得た予算はそのまま私に流れるということですわ
事件が解決したらまた借金、奈々穂さんにはただ馬車馬のごとく働いていただきますの。私の金利を払うために」
みなも「おいっ……!いい気にならないでよっ!それで気のきいたペテンうってるつもり…?刺されるよっ副会長さん……!」
久遠「ハハハ…!上等じゃありませんの…!かまいませんわ……!
奈々穂さんがとちくるった真似をしてきたらいつだって飼い慣らしてさしあげますわ……金がからめば命がけ、これは当たり前のことですわ……!」
みなも(………どいつもこいつも…狂っやがる……!)
奈々穂「出ろっ……!ごくつぶしっ………!」
りの「ククク………私のこと覚えてます……?」
奈々穂「覚えてるも何も………おまえはうちの組織の中じゃ……ちょっとした有名人だっ……!
なにしろ会長の寵愛を受けて……生徒会書記に就任してしまったんだからな……!」
りの「ククク………なら……話が早いや……
その有名人が…どういうわけか……金に困ってましてね……
このままじゃ逆立ちしたって宮神学園なんて学校………通い続けられないんですよ……!
奈々穂副会長さん……紹介してくださいよっ………!極上生徒会っ………!遊撃でも隠密でも………何でもやりますよ私は…!」
奈々穂「………クズがっ……!聞いてるぞっ……!おまえ定期試験で赤点だったんだって……?
それだけの痛手を追って…………まだ懲りず……生徒会だぁっ……?
狂ってる………!ジャンキーもいいとこっ………!」
りの「副会長さん……もう少しだったんですよ………!本当に……もう少し……もう少しだった……!
勝ちは…私の手の平に…確かに落ちてきた………!
フフフ………まあ、未熟ゆえ……取り逃がしましたけどね……!
しかし……もう大丈夫…!わかるんですっ…!次は勝てる……!絶対にね……!
となりゃあ………ここで引く手はないっ……!
勝てるんだからっ……!常勝っ……! それはもう……見えているっ………!私は負けないっ……!」
奈々穂(………哀れな……哀しいほどの…生徒会ジャンキーぶり………
勝ちが見えてるだの…負けないだのって……いったいどこをどう突っつけば……そういう考えに至るのか………?
完全にいかれているっ……!妄想もいいとこっ……!しかしその妄想に……本人だけが気付かない………)
りの「ねえっ……!どっちなんですっ……!?生徒会っ……!紹介するのかしないのか……?」
奈々穂(……………)
ピ… ピ… ピ… ピ…
奈々穂「あ〜〜〜〜……もしもし……あーそうだ………至急来いっ……!その時……“K3”もな……」
香『はっ……?“K3”って“隠密の3”のことですか………?
(久遠(KUON)・琴葉(KOTOHA)・桂聖奈(KATURA SEINA))』
奈々穂「そうだっ……!」
ピッ…
奈々穂「クズ女っ……!ついて来いっ………!」
りの「さすが奈々穂副会長さんっ……!話が早いっ……!」
久遠「どういうことですのこれ……?」
奈々穂「どうもこうもない………まあ…蘭堂りのというのは……計りを超えた楽天家……
彼女の心は……なんであれ…最終的に物事は………「自分の思い通りはこぶであろう」………という妄想で満ちている
だからこそ負けても負けても生徒会メンバー抜擢に命を注ぎ込める
つまり……やはり……最終的に勝つ気でいるんだっ……!なあ…………蘭堂……」
りの(……………)
奈々穂「乗れ夢想者っ……!案内しよう新展開に………!」
りの「………望むところですっ……!」
バタン…(車両部の車に乗り込むりの)
奈々穂「……おまえたち…………挟めっ……!確保だっ……!」
琴葉「はっ………!」
りの「……副会長さん…今度は……どんな役職ですか………?」
奈々穂(……………)
りの「なるほど………例によって……事前の告知はなしですか……まあ…いいです……!聞きませんよっ……!たとえどんな役職でも……私は…………」
奈々穂「蘭堂……ありはしない………勝つも負けるも……」
りの「えっ……?」
奈々穂「うちの決まりでな………チャンスは一度まで……つまり……もうおまえに生徒会の役職は紹介できないんだ……!」
りの「えっ……!?」
奈々穂「つまり………働くんだよおまえは……!」
りの「なにいっ………!?き……聞いてないですよっ……!そんなことっ………!」
奈々穂「言ってないからな………」
りの「な……なんだ………ぐっ……!うぐぐっ…!ぐぐっ…!う……」
琴葉「副会長………終了しました……!」
奈々穂「フフ………」
聖奈「あと2〜3分で寝ちゃいますね〜……!」
奈々穂「そうか……なら目隠しの必要もあるまい、ほっとけ……!」
琴葉「はっ……!」
りの「ふ……副会長さんっ……どうす……る……気………ですか……働く……って……いったい……?」
奈々穂「まあまあまあ………それは起きた時のお楽しみ……!でも………」
りの(……………)
奈々穂「言葉通り………そのままの意味で……地獄っ…!地の獄なんだっ…!
そこに……蘭堂の学年は五期生だから………まあ…だいたい……5年入ってもらう計算か………」
りの「ご…?ごねん……」
奈々穂「そう5年………!」
りの「ふ………ふざけ……降ろして………降ろ……へ………降ろ…………」
奈々穂「ククク…………降ろへません………!」
りの(暗黒へ…!気が付けば……私は地の獄……!地中の底の底………
亡者巣食う強制労働施設にいたっ………!働くっ……!働き続けねばならないっ………!
この地の底で5年っ…!地下に蠢くミミズか……何かよくわからない虫ケラのように……
5年だって……?くそっ……!悪夢だ……悪夢……これが悪夢でなくてなんなのっ………!
ふざけないでっ……!こんなこと続けられるはずがないっ………!
重労働に加え………熱気と騒音…粉塵…悪臭…不衛生…こんな劣悪な環境下じゃっ……!
死んじゃうっ…!こんなことしてたら……死んじゃう…!
なんで…?なんでたかが赤点になったくらいで…こんな目に………?
くそっ…!くそっ…!しかし………どうもそれがこの世じゃ一番の罪悪らしいっ………!
ここに集められてる人たちは…皆それを犯したっ……!多額の学費を背負い…働かされる亡者たち…
場所はどこか知らないけど……漏れ聞いた話じゃ…この工事は奏会長さんたちのシェルターを兼ねた………超豪勢な地下王国造りということらしい……!
今私がやってるところは……なんでも地下テニス場になるんだって………!
かっ……!ふざけないで………!ふざけないでよっくそっ……!くそっ……!)
歩(やったっ…!これで生き残り……生き残りは決定的……!
仮にこのあと琴葉さんが追跡調査を行ったとしても………
それでも家族が人質に取られてるとわかるだけ……!生徒会に残れるっ……!
生き残りっ……!よかった…よかったですね……久遠副会長…!)
安堵の空気流れる。それは当事者の久遠にとどまらず
この生徒会の隠密、宮神学園の生徒会で出会い共に過ごした、そんな言うなら仲間の間にも広がる
久遠の無事を喜ぶ空気……暖かい波長………広がる……!
久遠(うっ………!)
そう……気がつけば一人ではなかったのだ
味方がいたっ……!こんなにもたくさんの人間が応援してくれていた………
と………言っても誰も大っぴらに声はあげない……
応援と言っても拍手も歓声もない………ただ祈るだけの応援だ
いくら久遠が困ったとしても…誰も手を差し伸べはしないだろう………
それどころか………ちょっと生徒会側に凄まれればスゴスゴ引き下がる………
そんな…吹けば飛ぶような薄っぺらい共生…共感だ……!
しかし……今までともに震え………ともにこの生き残りを………喜んでくれたのも事実………!
久遠(それでいいっ………!そんな安っぽい……役に立たない友情でいい………!
いや…役に立つ友情なんていうのが…そもそもおかしい……そっちの方がよっぽど眉唾ですわ…!
求めてはいけないっ…!そんなもの……!私は「思い」だけでいい…!
ありがとう…………ありがとうみなさん………!)
ピシッ
久遠(え……!?)
(奏)会長「なぜ私の部屋への侵入を許す…?あなたはそれを防いで当たり前でしょうが……!」
琴葉「すみません………この女…宮神学園にいる間に心変わりしまして……」
(奏)会長「バカがっ…!それまでの日常が重い時、いよいよとなれば安穏を追い逆の目にいってしまう。反転は……スパイの習性……お定まりの心理じゃないのっ………!
あなたは……そんなことも見抜けないの………!?
まるで木偶の坊……人を見る目のない女だわっ……!興を失ったわっ……!
これであと残りの学園生活をその女は安全に副会長の役職を全うして逃げのびる………面白くもない終局だわ…なんのスリルもない………クズがっ……!」
ざわ…
そして極上寮の消灯時間後、琴葉と歩は辿り着く
会長の部屋に潜入した久遠の………その無防備な背に……!
歩(くっ…!来たっ……!)
その背はまさに風前の灯火
小刻みな震えが止まらずキーボードを叩くだけで精一杯というそんな状況の背………
もはや制止するまでもない、一声恫喝すればその危うい均衡は崩れ逃亡……逃亡するだろう…!
歩(くっ………!)
逃亡……………逃亡する…………!
無力…あまりに無力な背……!奈落の縁に泣く赤ン坊…!
歩(くっ………!くうっ……!)
ボロ… ボロ… ボロ…
歩(私は………何をしようとしているの……?止めなければ会長の秘密が暴かれる……
止めなければ暴かれる……止めなければ暴かれる……止めなければ暴かれる……!)
ボロ… ボロ… ボロ…
歩「けど……………」
久遠「え………?」
ボロ… ボロ…
歩「止めないっ………!止めない……止めないっ……止めないんだっ……!
止めなきゃ奏会長の秘密が暴かれるとしても………止めないっ……!止めないっ……!
私は止めないっ……!止めないっ……!止めないっ……!」
ボロッ… ボロ… ボロ…
久遠(……………)
琴葉(……………)
琴葉「…………ば……ばかっ……!断罪しろっ……!そんなこと言ってる時かっ………!」
歩「琴葉さんも裁かないでっ……!琴葉さんも本当は断罪したくない……断罪したくないんですっ……!なら裁かないでっ………!」
琴葉「ばかっ……!本心もくそもあるかっ……!いやでも…断罪しなくてはならないんだっ…!
副会長は目の前……目の前だっ………!今ならまだ間に合うっ……!
どけっ…!どけぇっ……!私は…神宮司の御庭番なんだっ…………!どけぇっ……!」
歩(うっ……!)
琴葉「断罪するっ…!おまえが裁かないんなら……私が二人とも断罪するっ……!」
久遠「ひっ………!」
琴葉「き……消えろっ……!」
歩(うっ………!)
バッ…
琴葉「あっ…!くっ……!」
歩「言ったでしょっ…!私達は言ったでしょっ………!
久遠副会長は私達の仲間だって………その通り…………大切な仲間なんですよっ……!
琴葉さんは今半ば……狂っている………見失っているんですっ……!自分をっ…!
目を覚ましてくださいっ………!目を……!」
琴葉「黙れっ……!消え失せろっ…!」
久遠「ひっ……!ひいっ……!」
歩「やめてっ……!やめてぇ〜〜〜〜っ………!」
琴葉「本来……生徒会会議の内容公開などここでは許されない
ありえないことだ……そんな娑婆っ気は…………!
しかし……今日たまたまその場におられた…御会長の配慮で今回は特別に一般公開されることとなった……!」
奈々穂「はあ………」
琴葉「まあ……この中の何人か…にとっては非常に興味深い勝負になるだろう。ありがたく拝聴するように………!」
小百合「……?なんだ……?」
れいん「勝負って………」
琴葉「説明しよう。皆も覚えているはずだ……この極上生徒会を題材にして作られたトレーディングカードゲームのことを…!」
小百合「は……?」
琴葉「そして書記の蘭堂りのが……
今…我が生徒会の販売するカードのゲームデザイナーの桂みなもと勝負をしている……!
彼女自身と…………ここにいる何人かの……カード販売中止を賭けて……!」
奈々穂「ええっ……!?ちょ………ちょっと……!マ……マジなのか……?それ……!」
琴葉「本当だ……!嘘を言ってどうする……?まあ見るがいい………
これからその様子を流す……!ライブ……生中継だっ………!」
小百合「はあ………?」
ざわ… ざわ… ざわ… ざわ…
香「バ………バカなっ…!聞いたことないわよ……そんな話………!」
歩「あ……!映ります……!」
奈々穂「うっ……!」
れいん「ふ…………副会長っ……!」
奈々穂「な………なんだなんだ……!マ………マジ……マジか………!り…・…りの………!」
小百合「りの……!」
れいん「りの……!」
パッ…
まゆら(………………ぐっ……!なんてことなのっ………!ふざけないでっ…!
そのトレーディングカードの製造費用は元々生徒会の予算じゃないの……!
それをりのとか遊撃はプライバシーの侵害という理由で販売を差し止めようとしてるのよ……!
そんな理由で勝負して……データ改定…全面回収………?販売停止だぁ〜〜〜〜?
ゆ……………許せないっ……!の…………呪ってやるぅ〜〜〜〜〜〜〜!
失敗しなさいっ………!失敗しなさぁ〜〜〜〜〜〜い!りの………!)
琴葉「なんだ……もうダメージを受けたのか………!HP10か……!」
奈々穂「え…?HP……?」
琴葉「ゲームのルールだ。今相手からの攻撃を受けた……最大HPの10分の1……!」
奈々穂「は……?じゅ…………10分の1……?」
琴葉「そうさ。驚くには当たらない。何しろゲームデザイナーとの勝負だからな……!
当然だ……それくらいのアドバンテージがあるのは……!
問題はそれが早……最初のターンでなったということだ……!
蘭堂りののHPは10という話だから残る攻撃の機会はあと1ターン……1ターンで相手の残りHP100……!つまり……勝負はもう終盤………!焦りが出てくる頃だ……そろそろ………!
何しろ………このまま何事もなく終われば勝負前に逆戻りなのだからな…………!
そうなった時のカードの売り上げというか生徒会メンバーのプライバシーは………軽く日本全土の人間に響き渡るだろう………!」
奈々穂「ぐっ………!」
琴葉「つまり……だだ漏れだ……!生徒会メンバーは個人情報が……………だだ漏れ……!」
奈々穂「ううっ……!」
琴葉「ククク……」
個人情報だだ漏れ……!それは死より恐ろしい…………刑………宣告……!
奈々穂「うううっ……!りの……!りの………!りの………!りの………!がんばれっ……!」
れいん「がんばれっ!ファイトっ!負けるなっ!」
小百合「がんばれっ………!」
奈々穂(勝てっ……!勝って抜けようこの地獄を……!一緒に………!)
小百合「がんばれっ……!がんばれっ……!がんばれっ……!」
れいん「りのっ………!いけっそこだっ…!ゴーゴーっ…!」
奈々穂「いけぇ〜〜〜っ………!」
れいん「いけぇ〜〜〜〜っ……………!」
小百合「いけぇ〜〜〜〜〜っ……………!」
(奏)会長「ぐふっ……ぐふっ……ぐふっ……ぐふっ……
ククククク………醜く喚いているわね………奴隷どもが………!ねえ……!」
シンディ「Yes……!」
(奏)会長「見苦しい見苦しい、まったくなんて姿なの…ククク……
わかる……?あなたたちに………!なぜ私が許したか…?あの連中にカード勝負を…!」
シンディ「Oh……?………S……Sorry,Boss……!」
(奏)会長「ククク…………無力…無力であることを知って欲しかった……!あなたたちに…!」
シンディ「What………?」
(奏)会長「祈りや応援……そんなものの無力…………効力の無力を知って欲しかった………!
あんなものは…クズどもの気休め……浅墓な迷信よ…………!
逆に言うなら…………祈るようになったら人間も終わりって話よ………!」
シンディ「Oh…………」
シンディ「ククク………勝てないでしょう…………!あのカードは勝てないっ……!
あれはクズどものヒーローが勝てるゲームじゃないっ………!
無理な話よ…………!あれは功成り名遂げた物だけが勝てる…………極上札……!
誰でもというわけにはいかない……!
つまり………虚仮か真か……?その人間の持つ運、才能………性能、器量……そういうあらゆるすべてを……量るカードよ……!
ククク……残念だけど…まだ力不足でしょう………りのでは……!ククク………!」
小百合「いけっ……!いけっいけっ……!」
れいん「りのぉ〜〜っ!」
奈々穂「りのぉ〜〜〜〜〜〜っ!」
小百合「りのっ……!」
れいん「りのっ……!」
奈々穂「りのっ……!いけぇ〜〜〜っ………!いけっ…!いけっ…!いけぇ〜〜〜〜〜っ……!」
奏「注目っ……! まゆらさんは今日が初のパソコンによる決算書作りです
苦しい特訓の末の初パソコン使用……みんなも覚えがある通りこれは大変嬉しいことです……!」
拍手っ……!」
パチ… パチ… パチ… パチ…
まゆら(ヤメロヨッ! ヨケイナコトスンナヨ……! ナニ考エテンダッ……!)
奏「はいっ……!ご苦労さんっ……!」
まゆら(そうだっ……!さっさと受け取ればいいのよっ……!受け取ればっ……!
どうせ赤字のくせに……勿体つけやがって……!)
ちえり「ククク……助かったわ……!出来ることなら……酷い死に方は避けたかった…キライなんだ…痛かったり……血が出たりするのは…!ククク……」
奏「ちえっ……!やっぱり…さらっちゃえばよかったかしら…」
ちえり「ハハハッ…!かもしれないわね……!」
奏「ちっ…!しかしま…謝りきれませんものね…!
もし下手を踏んで…万が一にも……あなたに死なれでもしたら…後に控えてるりのとプッチャンさんに…!
一生恨み言を言われる…」
ちえり「ククク…」
奏「……それに…仮に拉致が出来たとしても本人に生きる気がなければ…同じ事っ…!
ともかく…死ぬこと自体は簡単…!
つまり…あくまであなたが死にたいって言うのなら…もともと甲斐の無い拉致…!」
ちえり「フフ…」
奏「………だけど…それにしても…とやはり私は思う…!」
ちえり「?………」
奏「ヤボな念押しで…気が引けますが………ちえりさん本当に…かけらも……ただの1%も……生きる気な
いんですか………?」
ちえり「ククク…」
奏「ゼロですか…!本当に心から…」
ちえり「いや…「1」どころか…「3」はあるでしょうよ…!」
奏「え…?」
ちえり「3%は生きたい……未練がないわけじゃないわ…!」
奏「おいおいっ…!だったら…」
ちえり「奏さん……仕方のない…「3」なのよ…!
生きてる以上…生きたいという気持ちは完全には消せない…!「3」ぐらいは混ざる、混ざらざるを得ない…!まるっきりスッキリっていうわけにはいかない…どう頑張っても……混ざるものは混ざる…!」
奏(……………)
ちえり「なら…これはもう…甘んじて受けるしかない…!そう楽に死ねないと……!
諦めるしかない……これが死の味と…観念するしかない………!そう…これが死の味……!」
ざわ…
ちえり「フフ…混じっちゃうのよ……機械ならONとOFFに…100%切り替えることも出来るだろうけど…人間はちっと面倒よ…!
死のうと決めても……3%くらい生きたい気持ちがどうしても混ざる…!
逆に言うなら…通常…生きてる時も何%か死にたい気持ちが混ざっている…!」
奏「死にたい………?」
ちえり「そうよ…スリルって快感じゃないの…!
破滅や死を…誰も望んでない…嫌なこった…と言いながら……一方で少し覗いてみたかったりする…!
そんなに嫌な物ならただ避けてればいいことなのに一方で望むのよ………!
破滅や死を呼ぶ…ギャンブルや……スピードや……血なまぐさい決闘を…!」
奏(……………)
ちえり「ククク…まぁ…学者の能書きじゃそれは「生」を求める心の変形で…
そうやって「生」の対極にある…破滅や死を覗くことによって浮かび上がらせているってことらしい…!
現在の「生」をっ…!つまり…死にたいのではなく死にそうになった後に助かりたいのだ…!
求めているのはこの助かった…生き延びた…という快感であって
別に死や破滅を求めているわけではないって話だけど…ククク…どうかしら……?
まあ否定はしないわ…!スリルってヤツの正体はおおむねそんなところ
が…果たしてそれで全てかしら…?籠の鳥が嫌で家から逃げ出す時…スパイとして敵地に入学する時…
微かによぎる…破滅…それ自体を望む心…!死んでしまうこと自体への希求…!
そんな説明不能な危ない気持ちが……まるでゼロと言い切れるかしら…?」
奏(……………)
ちえり「とりあえず……私にはあった……!そんな気分…感性が……!
だから…ここぞという場面で助かるより……むしろ死ぬだろう…それで結構という選択がしばしば…!
混ざった…!大事な場面で死に向かう選択が…!ククク…」
奏「………なるほど……なるほどね…フフ…これは……かないませんよ…!
かなわないはずですっ…!生きようとする人間の行動は読めても死のうって人間…
死に向かう選択なんて分かる訳がないっ…!読めませんよ……!半ば死人の行動なんて…!」
ちえり「フフ…ククク………まぁ…確かに分かりにくいでしょうね…
しかし私からすればそれがただ…自然だった…!いつも……いつも……私には「死」が混ざっていた……
だから…もうすぐ死ぬと言っても言うなら濃度の問題でね…」
奏「?………濃度…?」
ちえり「生死は……コインの表と裏みたいな…そういう正反対の変化じゃない……!
私からすると本質的に同じことっていうか…同じ泥中の濃いところと薄いところっていうか…
水割りの濃度の問題と大して変わらない………!」
奏(……………)
ちえり「ただ…いつもは割ってたのに…今回は原酒っていうのにちょっと…面食らっているっていうか…
嫌な気分になっているだけよ…!3%ほど…!ククク…フフ…」
奏「ぐっ…!…………ちえっ…!何言ってるんですか…分かりませんよ……
濃いだ薄いだ…3%がどうしたこうした…そんなもの分かりませんっ……!
半ば死人の言うことなんて分かりません……!いいじゃありませんか…!
たとえわずかでも……生きたければ生きればっ……!
くどくど繰り返したくありませんが……誰が考えたってそうなんですよ…!」
ちえり「ハハハ…ククク………まぁ…分かんないでしょうね…あなたは積む人間だからわからない……!」
奏「…………はぁ…?」
ちえり「フフ…入ってきた時…すぐ分かった……!ああ…この子は誤解してるなって…!」
奏「?」
ちえり「たぶんあなたはこう考えていた……不治の病になんかなってしまって………
なんて蘭堂ちえりはツイてない……かわいそうだと…!でしょ…?」
奏(……………)
ちえり「ククク…ところが………実はそうでもない…!そうかわいそうって訳でもない…!
上から下を見下ろすようにあっさりとそう決めつけられちゃちょっと不愉快よ…
私からすれば…奏さん…あなたの方がかわいそうよ………!」
奏「はぁ…?かわいそう……?」
ちえり「そうよ…!」
奏「どうして……?」
ちえり「簡単よ。あなたも気付いているでしょう…薄々は……!ろくに生きてないっ…!あなたは今ろくに生きてないっ…!」
奏「え…?」
ちえり「ククク…苦しむわ…それじゃあ…死の際……死の淵で……!」
奏「どういう事です…?あ〜?かわいそうとか…苦しむとか…ろくに生きてないとか…何言ってるんです…?まるで分からないっ…!」
ちえり「ククク…だから…積みすぎたってことよ……!」
奏「?積む…?」
ちえり「あなたは成功を積みすぎた…!」
奏「はぁ〜?ちょっとちょっと…!何を言い出すんです…?悪いっていうんですか…?成功が…?
「失敗してろ」とでも言うんですか…?「勝つな」とでも…!」
ちえり「ククク…そうは言わない。勝つこと…成功は必要よ…!
生きてく以上…どうしたって「成功(それ)」を目指さざるを得ないっ…!
それはいい加減に生きてきた…私だって同様…!
何しろ死んじゃうのよ……勝ってかないと…だから目指す…!目指すわ……!それは仕方ない…
ただ…私は「成功(それ)」を積んだらすぐ崩すことにしてきた…!」
奏「え…?」
ちえり「意図的に平らに戻すようにしてきた…
フフ…「成功(あれ)」は実はなかなか曲者でね……一筋縄ではいかない代物…!
最初の一つ二つはまぁいいんだけど……10・20となるともう余計…余分よ…!
体を重くする贅肉のようなもの…それを…あなたはいいやいいやで無用心に積み過ぎた……!」
奏「積み過ぎた……?」
ちえり「動けないでしょ…?あなたは今…動けないでしょ…?満足に…!」
奏(……………)
ちえり「本当は……あえてここは失敗する…そんな選択だって人にはあるはずなのに…積み上げた成功がそれを許さない…!
縛られている……まるで自由じゃない……それは何でも出来そうに見える名家の跡取り娘…
それも半端な家じゃない、日本で1・2を争う巨大グループの頂点…神宮司奏でも変わらないっ………!」
奏「ぐっ…!」
ちえり「奏さん…正直に言ってみなさい……!あなた窮々としてるでしょ…?」
奏(…………くっ……!)
ちえり「ククク…どんなに金や権力を手に入れたところで……実は窮々としている…!
「成功」ってヤツは…人を自由にはしないのよ…ハダカを許さない…装うことを要求してくる……!
つまり…成功者…大物らしくすることを要求してくる……!
となれば…当然いちいちメソメソなんかしていられない
ましてあなたは宮神学園極上生徒会の生徒会長…さぞや窮屈でしょうね…!」
奏(……………)
ちえり「悲しい時も泣けず…おかしくても笑えず…怒りが込み上げても…安々と爆発なんて出来やしない…!
いちいち拳を振り上げてたら命がいくつあっても足りない稼業、我慢してるはずよ…相当…!
そんなストレスのかたまりみたいな日々をあなたは営々とこなしている。スケジュール通り…!」
奏(……………)
ちえり「何よそれ…?まるで分からない…!ありのままの自分がどこにもないじゃないの…
金や取り巻きをいくら持ってようと…そんなもん私は毛ほども羨ましくない…
みずぼらしい人生よ…!生きていると言えるの…?あなた…それで…!」
奏(……………)
ちえり(棺よ…!あなたは「成功」と言う名の棺の中にいる…!動けない…もう満足に…あなたは動けない…!死に体みたいな人生よ…!)
奏「……………ちぇっ!何言ってるんですかっ……!
……しかし…確かにその通りだわ……!ろくでもないっ…!
感情は押し殺してる…スケジュールは半年先までビッシリ……!
やらなきゃならない義理や付き合いで埋まってる……!
私はただそれを…営々とこなす係、番人みたいなものよ…!「成功」を維持、管理する番人…管理者…
………くそっ…締め付けてくるっ……!
私が築き勝ち取った「成功」が…成し遂げた成功が…どういうわけか私を殺しに来る…!
狭めてくる私の「生」を…その枠がもう間近…!棺っ…!そう…まるで棺の中にいるよう……!
ククク…そうか……なるほどね…………
死んでたかしら……!?生きながら私は…半ば死んでいた…少なくとも十全に生きていない………!
ククク…気付かなかったわ……!
うかうか暮らしているとつい分からない…見失ってしまう…気が付けない…自分では…!
フフ…大した目利き…直感ですよ……!その通りかもしれませんよ……ちえりさん…」
す・・・すご・・・
歩(先にっ……!先…………先に行きたかった……!
まだまだ続く…この無意味な時間つぶしがまだまだ……
勘弁してよっ…!離してっ………!私をもう離してっ………!
放たれたい……!体を包むこの緩慢な空気……「くのいち」から離れたいっ……!
なまくらな会話や……仲間から離れたい………充分よ……………
もう充分…………もう切り上げたいっ………!この「仮」からっ………!)
有楽人「何を言っているっ…!お前だって桜梅忍軍の一員じゃないかっ…!」
歩(ある日この事で言い争いになり…私は立ち尽くした……!
そうだ…その通り…!文句こそ垂れないものの…………私も桜梅忍軍の庇護の下にあって………
天に唾するとはまさにこの事……!私もみんなと同類だった……!
あのダサい忍者服と……!許せないっ……!それが許せないっ……!放たれたいっ…………!
そしてあの日……
私は桜梅忍軍に帰らず……さ迷った……!5日街をっ……!
手持ち四千二百円。里ではアルバイトを禁止していたため、これは正月のお年玉など……
わずかに渡される現金の貯え…というか残り………この時の私の全財産………!
その金を手に歩いた……無理と思いつつも……何件か当たった……!当たりまくった…………!)
「ダメッダメッ……!13歳なんて話にならないよ……!」
「17……?本当……?身分証明出来るものある……?」
「連絡先は……?なに……?連絡先も言えないの……?」
「いいじゃないあんた……多分中学生で親に内緒のアルバイトなんだよ、皿洗いぐらい……!」
「ダメダメ……!よく見てみろ奴の顔……ガキのくせに変にドスがきいてやがる…………あれは何やらかすかわかんねえ顔だぜ……キレたらよ……!」
歩(すべて徒労だった………私は4、5日足を棒にしてただ……歩いただけだ
お腹が減れば貧しい食事を…公園の水でお腹に流し込んで…
夜は人のいない……廃屋のようなアパートに忍び込み寝た……!
4日目……お金は…ほぼ尽きかけた………
限界っ………!この放浪も…………あと……できて1日か2日………
どうして………?どうして届かない………?私は私に依って生きて行きたいだけなのに………!
私はもう……忍者でいたくないだけなのに………!)
歩(そう……それはお金も尽きかけた4日目……桜梅忍軍を出て4日目の夜………深夜――!)
ユラ…
奏「…………なあに……?あなた……なんでここにいる……?」
歩(……………)
奏「ここは私の………」
歩「すいませんっ……!」
サッ… ササッ サッ スッ…
奏(……………)
歩「無断で休ませてもらいました、すみません。失礼します……!」
奏「待って………!」
歩(?………)
奏「見たところ………まだ中学生……そんな子供が……何してるの……?こんな夜中に……
フフ……住みたいのかしら……?」
歩「え………?」
奏「ククク………」
歩(それが……宮神学園に極上生徒会を作って生徒会長兼理事長をやってる神宮司奏さんとの出会いだった
奏さんはこの生徒会に役立つ人間を探していて
私はまさに奏さんにとって好都合……もってこいの人間だった
私は学費と生活費免除の契約でこの極上生徒会の隠密になる事を受け入れた
傍から見ればそれは……私がこの奏会長に利用されただけと見えるだろうけど
八方ふさがりの私にとって…………この「利用」が救いであったこともまた確かだった
ともかく……私はこれでやっと桜梅忍軍の庇護を離れ………放たれた……新生活が始まったっ………!)
215 :
メロン名無しさん:2006/03/06(月) 19:54:16 ID:QKvK0XAk0
歩(一日二日目は興奮状態、なんというか………特に何も感じなかった………
しかしそれも束の間、落ち着くとすぐ……押し寄せて来たっ……!
孤独……貧窮……不便、不都合、不合理……
そんなありとあらゆる煩わしさと心細さが次々に押し寄せてきた……!
だけど……同時に今までずーっと……私の体にまとわりつくようにあった空気……
空気(それ)が動き出したっ………!この体を通り過ぎていく清新な気配……感覚……
そうだっ……!こんな風を感じたかった…!私は…私に依って立っている……!
自由…………そう…これが自由だ……!自由は……何でも出来ることじゃないっ………!
自由とは自分に依ることだ……となれば当然限られるっ………!非力な私なら尚更だ
限られるっ……!やれない事だらけだ………!
友達とのお喋りも世界一周旅行も……かわいい服も……美味しいケーキもない……!
そんな物とは無縁だった……圧倒的に限られていたっ……!
だけど………その限られた中で…やっぱり無限だったんだ……!無限を感じていたっ………!
………とはいえ……楽しいってわけでもない……!
任務は生きるか死ぬかのギリギリ……最低限の暮らしだ…楽しいわけがない……!
だけど……それは私の身の丈によって命がけなのだから…………文句を言うのは筋違い……
甘んじるべきだと思った……!それがどうしてもイヤだというのなら……自分の力を伸ばせばいいのだ
それを成せない以上……不遇は当然……そう納得した……!
そう納得した時……また空気が変わった………っ!
そうよ……!なんでこんな簡単な事に今まで気がつかなかったのか……
自分によって生活の全てが変わるから現実(リアル)なんだっ……!
現実(リアル)はこうして生まれるんだ………!
早い話……生活をまるごと他人まかせの連中に現実(リアル)を感じられる理由がないんだ……
当たり前……至極当然の話ではないか………!
1の1だっ……!私は私に依るってことが……生きてる物というか………存在する物の………
基本も基本、大原則で……そこを誤魔化してちゃ……前に行けないっ……!
この貧窮は………流儀……私の流儀……だから………さわらないでっ………!)
りの「うう……アユちゃん、なんて健気な……」
歩「ってわけなの……!暮らしは概ね良好……というか……納得している……!
そうそうそっちの見立て通り煮詰まったりなんかしないのよ……残念ながらね……!」
216 :
メロン名無しさん:2006/03/16(木) 23:08:47 ID:vVxmkU6C0
がんばるなぁw
217 :
メロン名無しさん:2006/03/19(日) 01:15:27 ID:vvU52ir50
,.. -───‐- 、
/ , ', -─‐- 、.._ _,.-.\
|二l二 / i l ‐#- 、゙ヽ. ̄ ,r`ゝ-
-─- 、 |二|二 バ ( | L_ u v \`ー-‐''/ ヽ
_,ノ ハヽヽ亅 ヽ | r‐、} ヽ ̄`ヽヽ,, ,//´7;| なんだっ・・!
┌┴─ > | |ト、|l u ` ー゚イ u vl.゚ー' | このスレはっ・・・・・・・・!
o | 土土l カ / | ヽ_|! u'_,ノ { u' }じ v |
ノ 上 匕 ( /| /! r'',ニニ=`==='=ニヽ! 全くカイジと
o l \__/ |. / :| | |ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー'ー' l‖ 関係ねぇじゃねえかっ・・・・!
ニ|二 ,ゝ |/ :| l lーiーiーiーiーiーiーi‐rl ||
o ヽ_ノ / | iヽ. ヽヽニニニニニニニンノ
/ ! | ヽ ` ー-- ニ二二~-‐'\ 通るかっ・・・・!
o | ヽ | | ゙i ::::::::::::/ :|\. \ こんなもん・・!
| \| ! ! // | \
r:、 / > /\ !ヽ..__,//\ |
|/ /-、 /! / oヽ |::::::::::::::/ __ \. |
o / し' ( " |:::::::::::/ `
218 :
メロン名無しさん:2006/03/19(日) 19:41:12 ID:vUfm2aXpO
奏「お…」
りの「あ…ひ…人が窓に…!」
奏「ふーん」
りの「?」
奏「表へまわりなさいっ!」
りの「?…!え?」
スッ…
りの「?…あの…いったいあの人達…」
奏「奴らは病人なのよ…私はいわば…医者ってわけよ」
ガチャッ
香「奏会長……このたびはありがとうございます…!かさねがさねありがとうございます…!」
りの(なんなの…これは………この女の人…いったい……?奏会長……!?)
奏「じゃあ始めましょうか…りの…すまないけど別室にいる連中を一人ずつ…こっちに連れてきて」
りの(何が始まるの…?あの後さらに人が押し寄せて総勢11人、そして10億という大金――!)
CASE1 和泉香の場合
香「なにとぞ家族への援助金、よろしくお願い致します……!
こちらに印鑑に印鑑証明、住民票、担保の土地登記済み権利書。お確かめ下さい…」
奏「……………」
りの(生徒会長……行きづまった生徒会メンバー相手の資金援助……道理で極上そうな生徒ばっかり集まってきたはずだ……)
香「で……その…金利の方は…?」
スッ…
奏「契約証書よ……これに好きな金利を書きなさい……!」
りの(え…?)
香(……………)
…8%…!
奏「……………帰りなさい…!」
香「…………は……?」
奏「は…じゃない!新入りっ!三番抵当まで入っているバカな登記証(かみきれ)持って来てアホなの?あなたは!」
香「まだ余剰価値が…………」
奏「ないっ!ないからこそこんなところまで落ちて来たんでしょう!
そのうえ…銀行金利並みの8%ですって…?ぬかさないでっ!18%!それ以上1%もまからないっ!」
香「そ………そんな金利では……」
奏「スケベもいい加減になさいっ!首絞まってるくせに掛け引き打つんじゃないわっ!」
CASE2 桜梅歩の場合
奏「金利が6%……」
歩「はっ……それがギリギリでして……」
りの(バカなの…!……とてもムリだよ……8%でも足げにしてたんだよ………
6%なんて銀行金利以下じゃないっ……!メチャクチャいってるっ……!)
奏「桜梅さん……6でもきついんでしょう」
歩「は…?」
奏「…5でどう?」
歩「えっ!ほ……本当ですか……」
りの(…………はあ……?)
奏「隠密はやっぱり王様よ。ここしばらく過ぎればまたあなた達の時代よ……先行投資しようじゃないの?」
歩「ありがとうございます!」
奏「機がきたら……また任務を頼むわ…!」
歩「は…はい!それはもう……!ありがとうございます……!」
りの「……どうしてですか……?さっきの金利と全然違う……助けにまわるなんて…?」
奏「ハハハ……冗談言わないで……私がそんなタマかしら………
裏金つまもうなんて連中の運命は三つしかないのよ。しぼられるか奪われるか殺される!
さっきの新入りは器用貧乏、しぼりとるしかなかったけど……
今みたいな本来特殊能力がありながら生活に苦しんでいる連中には奪いにかかる…」
りの「奪う…?」
奏「契約書に仕掛けがあるのよ……確かに貸付けの金利は5%と低利だけど………
契約書にある遅延損害金というものが……日歩40銭という暴利なのよ
ものの半年で………借入金は倍近くにふくれあがる…!
それが返せなければ彼女の身柄は全て………私へと流れる……!」
奏「次…!」
りの(この人達は――羊だ……処刑場に連れて行かれる羊……!)
久遠「お願いします……百万でも二百万でも……」
りの(そして罪人のように頭を下げる
その理由はただお金を持っていないということなんだ………
どんなに真面目に働いてもお金を持っていなければ罪人!)
久遠「ありがとうございます、ありがとうございます」
りの(……………)
奏「………久遠さん………逃げる気でしょう……!
あなたの実家の商売はもうとっくにおわっている…今たかだか二百万の金ひっぱってどうするの……?
そんなはした金握って逃げても……その後がないでしょう…………?
ナフレス諜報機関に気付かれないためには……住民票も出さずに……
ひっそり隠れて暮らすしかないのよ……」
バサッ…
奏「もう二百万出す………一年もぐってなさい!家族三人、四百あれば一年はもぐれる……」
久遠「会長」
奏「私が必ず浮かぶチャンスをあげる…………!待ちなさいっ……!」
久遠「…………会長……ありがとうございます…ありがとう………」
奏「いいから顔をあげて久遠さん………安心しなさい……あなたは私が守る…!
だから……引っ越したら私にだけ連絡先を教えるのよ…………!」
久遠「はい………」
ぞっ…
りの「……………」
りの(裏金をつまもうなんて人達の運命は三つ……!しぼられる…奪われる………殺される……!)
天、アカギ、銀と金、黒沢、涯……
もうメジャーなところは出尽くしたな……
香「あのさ……さっきの『もうすぐ』の話だけど……どういうこと……?」
歩「ああ……それは……事務所のやっている…例のデビューライブ……それ自体の予定の話よ……
あれは結局……生徒会の協力、あるいは目こぼしによって支えられている……
極上生徒会もそんな甘いこといつまでも許すわけない……
男の子のアイドル紹介が目的でチョボチョボやっているのならともかく……
レッスンや仕事で学業生活に支障をきたしちゃ…………いつまでも黙ってはいないよ……
遅かれ早かれ制限を食らう……
いわばあれはもともとうたかたの夢…… 長く続く話じゃないっ……!」
香「…………はあ……(けどもうかれこれ数週間以上……)なによ……ニヤニヤして……」
歩「フフ……」
香「それによしなさいよ。こんな教室の中で居眠りして……」
歩「いいでしょう……芸能プロダクションの風を受けてるんだ…
う〜〜〜〜ん実にいい風だ!
しかしね、私はこんな宮神学園の生徒数ぽっちの人気でうかれるような女じゃない」
香(あんたはうかれとる!)
歩「まぁ……アイドルの理想を実現するには、国民的人気は必要だからね! フフフ……」
香「こいつ……やっぱりろくな女じゃないわね……」
age
ホラーっしょい
sage
カカカ
ざんすざんす