満「ねえ、薫…」
薫「なに?」
満「同級生に健太っているでしょ?」
薫「…健太…確か転校初日にやかんでお茶持ってきた子の事?」
満「そう!お茶持ってきても湯呑み持ってこないって
バカじゃないの?私達にやかんから直接飲めって言うつもり?」
薫「バカだけど優しい子じゃない」
満「薫、あんなバカ庇う事無いわよ!」
薫「だから何があったの?」
満「あいつ、将来お笑い芸人になりたいんだって!」
薫「本当のバカね…」
満「そうでしょ?」
薫「でも、本人の問題で私達が口を出す筋合いのもんじゃないわ」
満「それがほっとけないのよ」
薫「どうして?」
満「あのね、あいつのネタをこの間見たのよ
それがね、―余計だにゃ〜―だって…」
薫「寒っ!」
満「そうでしょ?―余計だにゃ〜―それで終わり!何が面白いの?
それだけじゃないの、そのネタが教室中でドッカンドッカン、ウケてるのよ!?」
薫「本当に!?」
満「本当よ!仁美ちゃんも大笑いしてたわよ!」
薫「仁美って、弁当を忘れた私達にオニギリくれた優しい子でしょ?
愛想笑いでもしたんじゃないの」
満「舞も咲も笑ってたわよ!」
薫「咲は…本当のアホの子だから仕方ないけど、
舞も笑ってたの…
アノ娘はお笑いの判る娘だと睨んでたんだけどなァ…」
満「ココの子らの笑いのツボが判らないわ」
この間こんな事もあったの、仁美ちゃんがやって来て、
―ソフトボール部に入らない?―って誘ってきたのよ」
薫「優しい子ね」
満「それで私は言ってやったの―ソレって命令?―って!」
薫「満ちゃんお得意のシュールボケね、仁美も大笑いでしょ?」
満「泣いてた…」
薫「なんで?―ソフト部入らない?それって命令?―大笑いじゃない?」
満「泣いてた…」
薫「本当…ココの子の笑いのツボは…」
薫・満「判らんにゃ〜」
おしまい
「あ、今日発売日なんだー!」
咲と一緒の帰り道、本屋さんの店頭に並ぶ"なかよし"最新号。
付録で分厚く膨らんだカラフルな雑誌を咲が手に取った
「――!――咲もソレ読んでるの!?」
レジへと向かう咲に舞が声をかけた
舞も"なかよし"が大スキ!
特に"ふたりはプリキュア"というふたりの女の子の百合百合で萌え萌えな
連載漫画を毎号楽しみにしている
「えええ?私が?違うわよ!みのりよ!
幼稚園の頃は私も読んでいたけれど、さすがに中学二年にもなるとねぇ…」
「幼稚園……の頃…」
ちょっぴり咲との距離を感じた舞であった。
「薫、ちょっとアレ見て…」
満と一緒の帰り道、本屋の店頭に並ぶ"なかよし"と書かれた本
「――!――プリキュア!?」
カラフルな表紙に小さく書かれた憎き敵!プリキュアの文字!を
薫は目ざとく見つけ妖しく蒼い眼が光った
「これは人間達が知識を得る為に読む"本"というものね
そしてコノ本にはプリキュアの事が書かれているらしいわ」
「コレを読めばプリキュアの力の秘密が解る…というわけね…!」
「ふふふ…馬鹿な人間達、よりによって私達の目に触れる場所に
こんな大事な情報を不用意に置いておくなんて!」
――ふふふ…
――ククク…
「あれ?満!薫!二人も本屋さんに来てたの?」
レジに並ぶ満と薫の背後からプリキュア!咲と舞のふたりが!
「あ…二人もソレ…"なかよし"を買うの?」
おずおずと舞が問いかけてきた
「満と薫って妹いたっけ?」
「いもうと?…ふふふ…コレは私達が読むのよ!」
「…え?満と薫が?」
「ふふふ…もう遅いわ、隅々まで読んでやるんだからね」
――ふふふ…
――ククク…
「ふたりともニヤニヤしちゃってよっぽど"なかよし"読むのが
愉しみなのね…」
冷たい印象の満と薫だがちょっぴり二人との距離が縮まった気がした舞であった
おしまい