「プリキュア…面白くなってきたわね」
「プリキュア…面白くなってきたわ」
夕凪中学からの帰り道、
舞と咲、ふたりの後姿を見つめるふたり―みちると薫―である
紅い夕日が映える海からの波風が冷たい
「みちる、帰ろう」
「薫、帰りましょう」
そう言うとふたりは歩き出した
薫は坂を上り、みちるは坂を下り…
「みちる、何処に行くのよ?」
「薫、何処に行くのよ?」
「何処って…?」
「何処って…?」
――私達、何処へ帰ればいいの?――
泉の見張り役なんて言う退屈な仕事から逃げ出したくてアレコレ言い訳つけて
やって来たのは良いものの、何処を棲家とするかまでは考えていなかった
「薫がこういう事はちゃんと考えておいてくれなくちゃ!」
「みちるこそ何にも考えていなかったくせに!」
「何よ!」
「何よ!」
――ぐぐぅぅぅ〜…
――きゅぅぅぅ〜…
「お腹空いたわ…」
「お腹空いたわね…」
「何か食べ物持ってない?」
「持っているわけないでしょう」
――ぐぐぅぅぅ〜…
――きゅぅぅぅ〜…
ふたりそろってペコペコのお腹をさすりながら
出てくるのはため息ばかり
「お昼のオニギリ美味しかったわね…」
「お昼のオニギリ美味しかったわ…」
――ぐぐぅぅぅ〜…
――きゅぅぅぅ〜…
美味しい美味しいオニギリの事を思い出した分余計に
お腹が空いて辛い…
――タッコ焼き〜!美味しくって熱熱のタコ焼きはいかがですかァ―
途方に暮れるみちると薫のふたりの目の前で
移動タコ焼き屋台が美味しそうな香りをふりまいていた
「タコ焼き…?食べ物かしら?」
「タコ焼き…?食べ物みたい…」
熱く焼けた鉄板の前で赤いバンダナを巻いた女性がクルクルと忙しく
いい香りのするモノを焼いていた
「いらっしゃーい!よかったら食べてかない?」
ジッとタコ焼きを見詰める、みちると薫に気が付いた店主が声をかけた
「頂くわ」
「頂きましょう」
鰹節が熱気でひらひらと踊り、香ばしいソースがたっぷりかかった丸いモノ
「オニギリと違うわね?」
「オニギリは冷たかったわね」
ふたりそろって口に頬張ると…
冷たい波風に凍えたふたりの身体に熱いタコ焼きが堪らなく…
「美味しい…!」
「美味しい…!」
夢中でタコ焼きを頬張るふたりをニコニコにながら見つめる店主
「美味しい?良かった、実はこの辺で商売するの初めてでサー
お口に合うかどうか心配だったんだよネー」
たちまち一皿平らげたふたりはようやくお腹も落ち着き身体も温まった
「ごちそうさま」
「ごちそうさま」
ふたりは身を翻し立ち去ろうとすると…
「ちょ…ちょっと!お二人サン!何か忘れてない?」
「忘れ物?」
「忘れ物?」
「そうそう忘れ物!」赤いバンダナの女性は苦笑いを浮かべながら
ふたりの前に片手を拡げ「タコ焼き二皿で1000円!」
「何を言ってるの?」
「何を言ってるのかしら?」
「判らないわ」
「判らないわね」
「私達から用は無いわね」
「私達から用は無いわ」
「帰りましょう」
「帰りましょう」
「ちょ〜っと待った!アンタ等ふたりもしかして食い逃げ?」
赤いバンダナの女性が立ち去ろうとするみちると薫の前に立ち塞がり押し止めた
「食い逃げ?何を言ってるのか判らないわ?」
「何を言ってるのか判らないけど…かなりヤバイ雰囲気ね?」
タコ焼き屋台の車内に押し込められたふたりの前に怖い顔して
「お金が無いなら…体で返して貰おうか!」
「ピンチね?」
「ピンチだわ」
「でも、ピンチの後にはチャンス在り」
「どうするのよ?」
「コイツを洗脳してこのオンナの家に潜り込むのよ!」
「いい考えね!」
「ふふふ…」
「ふふふ…」
ふたりの目が妖しく光り睨み付けると
赤いバンダナの女性は先程までの勢いが無くなりたちまち瞳がとろ〜ん…と
「アカネさ〜ん!配達終わりました!ただいま戻りました〜!」
元気な明るい声でやってきたのは金髪をおさげに結んだオンナノコ
「お・か・え・り…ひ・か・り…」
ひかりと呼ばれた少女を迎えるアカネの曇った声
「アカネ…さん?どうかしたんですか?コチラのふたりは?」
見知らぬふたり組に訝しい目を向ける
「このふたりは…私の…従姉妹で…名前は…」
――薫
――みちる
「薫にみちる!今日から家で世話する事になるからよろしくね!」
「ふふふ…よろしく」
「ふふふ…よろしく」
「コラァ!薫!みちる!サボってたら承知しないよ!
ひかりを見習ってテキパキ働いた働いた!」
「え…?」
「え…?」
おしまい