618 :
1/3:
百合スレに書こうとしたネタなのですが、長くなってしまったのでこちらに。
修学旅行deなぎほの。
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就寝前のちょっとした空き時間。旅館の、なぎほの班に割り当てられた部屋にて。
「なんだか…ちょっと寒いかも…」
呟きを聞いて心配そうになぎさを見るほのか。
「シャツだけじゃ寒いわよ、トレーナーに着替えたら?」
「あ…持って来なかった」
「この時期の京都は冷えるから、トレーナーも持ってきなさいってよし美先生言ってたのに…」
ほのかが言い終わるとほぼ同時、横から飛んできた白い塊がなぎさの頭を直撃した。
なぎさは夏子と京子がトランプをしている間に倒れこむも、自分を薙ぎ倒した物体を掴むと
即座に飛んできた方向へ投げ返した。――枕合戦だ!
「ちょっと動けばすぐ温まるし、へーきへーき♪」
いいながら周囲を見渡すと…敵を確認。志穂と莉奈だ。なぎさの口元がにんまり緩む。
「ちょっ…なぎさ!」
ほのかの制止の声も虚しく、会戦の火蓋は切って落とされた。
* * *
619 :
2/3:2005/10/16(日) 04:17:36 ID:???0
「いたたた…しびれて、歩け、ない」
廊下で正座させられこってり絞られること小一時間。
三人がよたよたと部屋に戻ってきたのは就寝直前の時間だった。
「もう、寝よう寝よう寝よう」
「やっぱり悪ふざけはするもんじゃないね…おやすみー」
部屋の明かりが落とされて、しばらく後。
静まり返った部屋に寝息だけが聞こえている。……はずが。
ごそごそごそ。ごそごそごそ。と明らかに眠っていない様子の者が一名。
しきりに寝返りを繰り返しているそれへ、ほのかは小さく話し掛けた。
「……なぎさ、眠れないの?」
頭まで被っていた掛け布団から、顔半分をちょこんと出して、ばつが悪そうになぎさが答える。
「うん、その…寒くて」
苦笑いのなぎさに、ため息のほのか。正座させられた廊下も冷え込んでいたのだろうと推測する。
「やっぱり。体が冷えてると、寝付けないものなのよ」
ごそごそ。と今度はほのかが身じろぎする音。
なぎさが顔を向けると、ぼんやりとだけ見える暗い部屋で、
布団を片側だけ剥いでこちらを見るほのかが目に入った。
その意図を読み取って、なぎさは冷たい自分の布団を後にする。
「もう、こんなに冷えちゃうまで何も言わないなんて…」
ほのかは苦笑しながら、転がり込んできたなぎさにふとんをかけてやる。
だって、と口答えしかけたのを遮るように、なぎさの背中に腕を回した。
「…風邪をひかないように、ね」
まるで壊れ物を扱うかのように、大事そうに包み込まれて、ぬくもりが、
冷え切った体にじんわりと染みていく。
たったそれだけのことなのに、こんなにも幸せな気分になれるのは何故だろう。
「…ありがと、ほのか」
今の気持ちを表現するのに、まどろみはじめたなぎさが口にできたのは、たったそれだけだった。
「…ほんとにあったかい」
なぎさの一人ごちな呟きに、ほのかにも幸せな気分が伝わって、自然と笑みがこぼれてくる。
「こんなふうに…」
言いながらなぎさは身じろぎし、自分がされてるのと同じようにほのかの背に腕を回した。
「こんなふうに、いつもほのかを抱いて寝たら、きっと寝冷えなんかしない…ね…」
より密着することでもっと暖かくなるのはいいんだけど…これって、抱き合ってるのよね?
なぎさと自分、二人の今の状態を想像してほのかはどきまぎしてしまう。
(いつもほのかを抱いて寝たら)
先ほどのなぎさの言葉が、意味も無く脳裏で何度も再生される。
……なぎさとなら、わたしは、かまわないわ。
むしろ、わたしは、なぎさと……
「…な、ぎさ…」
620 :
3/3:2005/10/16(日) 04:19:56 ID:???0
なぎさの呟きに答えようとして、どきどきしながらなぎさの顔を覗き見ると、そこには。
「……ぐー…」
寝入ってしまったなぎさの顔があった。ほのかは本日何度目かの苦笑いを浮かべる。
半分はなぎさに。半分は、残念なようなほっとしたような、複雑な心情の自分に向けて。
「…おやすみ、なぎさ」
ほのかは少し首を伸ばし、俯き加減になったなぎさの露わになったおでこに唇で触れると、
間もなくやってきたまどろみに身をゆだねた。
カーテンごしの朝日の中で、ひそやかな声が交わされる。
『志穂、志穂! カメラカメラ! カメラどこ?』
『なになになに? ぶっ! 何してるのこの二人っ』
『これ撮らない手はないでしょ!』
『特ダネ、いただきいただきいただき!』
修学旅行から帰ってきて数日後。逃げる志穂と莉奈を追いかけるなぎさの姿があった。
「志穂、莉奈〜〜!」
なぎさのその手には、しわくしゃになったベローネタイムズが握られている。
DTP印刷により写真も鮮やかなカラーで描かれる校内新聞。そこには…
『トップニュース! ベロ女中のスーパースター同士がついに!』
『スクープ! ドキドキ同衾!』
「まってまってまってなぎさ! ネガで学食Aランチのチケット100枚だよぉ!」
「なぎさと雪城さんにももちろん分ける分あるからっ」
「ゆ・る・さ・ん〜!」
おはり。