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1/2:
「ロミオとジュリエットってしあわせだったのかな?」
大成功に終わったベローネ祭での二年櫻組の演劇ロミオとジュリエット
無事?終了を祝って櫻組でのささやかな打ち上げパーティーを終え
帰宅の途につくなぎさとほのか。
まっすぐ駅に向かわず川沿いの道を歩いている。
「二人の愛って何だったんだろう?死を決意する程の愛って何だろう?
禁じられたから二人は意地になっちゃった…なァんて」
「禁じられたから愛し合ったんじゃないと思うよ。
きっとお互いを運命の人って感じたからじゃないかな」
ほのかが答える。
「運命の人…私にもそんな人現れるのカナ…」
ふと横で夕闇に沈む水面を眺める
ほのかの横顔を見つめる。「私の…運命の人…」
「なぁに?なぎさ」
視線に気づいたほのかがなぎさと向き合う。
「なんでもない!あ〜ぁ!みんなに迷惑かけちゃったな…
あいつ等の所為で劇が目茶苦茶になって…」
夜を運ぶ風に吹かれながら土手の芝生にしゃがみこむなぎさ。
「なぎさのアドリブ、カッコ良かったよ!結果オーライ!でしょ!?」
なぎさを励ますほのかの声。
「…せっかくあんなに練習したのに…何時まで続くんだろう…あんな事…
普通の中学生活を送りたいだけなのに…」
176 :
2/2:04/10/27 20:38:36 ID:???
「愛しのロミオ様!苦痛に満ちたで現世で二人の愛が遂げられないのなら
来世へと旅立たん!」
毒入りのワインを飲み干すしぐさ、空をつかむ手。静かに芝生に横たわるほのか。
「ほ、ほのか…どうしちゃったの?」一瞬の困惑の後、
ほのかが今日の舞台で演じられなかったシーンを演じているのだと気づきなぎさも、
「ジュリエット!なぜだ?なぜ僕を残し一人、死出の旅路に飛び立つのか?
待っていろジュリエット!今すぐに君の後を追うぞ!」
ほのかの熱演に答えるなぎさの名演技に思わずほのかが、くすり…と笑う。
ほのかの肩と腰を引き寄せ抱き起こす。
「ジュリエット!僕の愛しいジュリエット!今生の別れに二人の永遠の…愛を
…ふた…ふたりの…永遠の愛をちかう…」先のセリフを思い出し口ごもるなぎさ。
「二人の永遠の愛を誓うくちづけを交わそう…でしょ」
囁きながらなぎさの首に腕をまわし抱きしめ瞳を閉じる。
・・・・プァァァアアアァァァンンン・・・・・
鉄橋を渡る列車。
車窓からこぼれる光。
重なる二人のちいさな影。
・・・がたんごとがたごとんかたんかたんかたんたたんたん・・・・
遠ざかる列車の音。
再び訪れる暗闇。
「もうすっかり日が落ちちゃったね…」髪を直しながらほのかが呟く。
「帰ろうか」
ほのかの手を握りゆっくりと歩き出す。
ほのかがわき道へと誘う。
「もう少しだけ…遠回りして帰ろうか」
おしまい