PM 21:00 河原にて
河原に着いたはづき。そこでは既にはづきを待ち構えていた先客がいた。
「まさるくん……」
「藤原……こんな時間にこんなところに呼び出して」
「うん……まさるくんに渡したいものがあって」
そう言うと、はづきは後ろに隠しておいた包みをそっと矢田に見せた。
「あ……」
「こ、これ、まさるくんに……」
はづきから矢田に、その慎ましやかな包みが手渡された瞬間、二人の顔は見る見るうちに紅に染まってゆく。
「…………さ、さんきゅー藤原」
「…………どうしたしまして」
………………
しばらくの沈黙……少しして、矢田のほうの口が開いた。
「藤原……俺も渡したいものが……」
「……って」
「え?」
「……待ってまさるくん、その前に」
ふと矢田の言葉を止めたはづき。一呼吸置いて、再びはづきから言葉が告げられた。
「そ、その…………今まさるくんに渡したチョコを、その……、私に食べさせて欲しいの!」
「!!!な、ななな藤原おおおまえ……」
はづきから衝撃の告白を受けて、柄にもなく慌てまくっている矢田。そこへさらにはづきの一言
「ダメ…………ですか?」
懇願するはづきの表情に逆らえるわけもなく、
こくん
無言で頷く。そのまましどろもどろの手で包みを解いてチョコレートを取り出そうとする矢田。
ふとはづきの方へ目をやると……
「…………ぁ」
目をつむって真っ赤になりながら、それでも口を開けてチョコを懇願するはづきの姿があった。
「………………」
…………それを見た瞬間、矢田の中で何かが吹っ切れた気がした。
「藤原……」
矢田は小さく分けられたチョコを取り出すと、それを…………
「!!!」
次の瞬間、二人の影が重なるのであった。
Happy Birthday, Hazuki...