【あずまんが大王】よみ&とも【Best Friends】
>>932 ほのぼのでないかもしれないけど、どうぞ
あずまんがcollege番外編(高校時代の布団SS)
宿題の最後の問題を解きおわった少女は、勉強机の上にある、風船を持った少女が
描かれている置時計をちらりと見た。既に午後11時を回っている。軽くあくびを
して、彼女は常用の眼鏡を外した。
急に眠気を覚えて、部屋の電気を消すために立ち上がろうとした時、机の隣にある
窓から、叩きつけるような音が数度響いた。
思わず視線を窓に向けると、毎日見慣れている顔が窓越しに映っている。
慌てて駆け寄り、窓を開けてやると、靴を片手にもった少女がはいあがってくる。
「どうしたんだ、こんな夜中に…」
智と呼ばれるショートヘアの少女は、最初は怒ったような表情をみせていたが、
すぐに自嘲するかのような笑みを浮かべた。
「いや〜親とケンカしちゃってね〜」
意外なほどあっけらかんとした口調で話す。
「おい、だいじょうぶか?」
「ま…そういうことで、悪いけど泊めさしてくれ」
言い終わると智は、部屋の中央に敷いてある布団に潜り込んだ。
「いや〜やっぱり布団はいいねえ〜羽毛かな」
智の家ではベッドを使用しており、彼女は布団特有の柔らかい感触が珍しいようだ。
「そんなに布団がいいか?」
ちょっとあきれた暦は呟き、細い紐を引いて電気を消した。そして智に占領されて
いる布団に潜り込む。
「なんでいきなり消すんだよ〜」
いきなり周囲が真っ暗になった智は頬を膨らませる。
「なんでって?、今から寝るんだよ」
少し冷淡な口調で突き離した暦は、大きな枕を智から奪い取って横になった。
「じゃあ私も一緒に寝る〜」
「ばっばか」暦は顔を真っ赤にしている。
「なんで、そんなに興奮する? …もしかして」
智は人の悪い笑顔を浮かべる。
「よみさんはえっちですな〜」
「う…うるさい!」
勘違いを容赦なく指摘された暦は、智の視線から逃げるように背中を向けた。
それっきり一言も喋らない。時計の針の音だけが、無機質に時を刻んでいる。
どれくらい、時間がすぎたのだろうか…。
「ごめん…」
後悔した智は小さな声で謝る。
その声に、愛おしさを覚えた暦は体の向きを変えて、智の瞳を正面からみつめる。
「仕方がないな」
暦はくすっと笑い、いつも悪戯を考えていそうな、くりくりとした瞳をのぞきこむ。
(こいつ、こんな表情している時はかわいいんだけどな)
「よみ…」
智は甘えた声を出す。
「なんだ?」暦は優しく問い返す。
「私たち卒業しても、ずっと一緒だよね…」
少し寂しそうな表情を見せて、確認を求める。
「ああ…一緒だよ、ずっと」
暦は軽くうなずいた。例え二人の進路が異なったとしても、いつも心の奥では
つながっている。会いたい時には心の中であえるのだ。
すごく楽しい気分になった暦は、智の顔をもう一度覗き込むと、いつの間にか
可愛らしい寝顔をみせて眠りの世界に陥っている。
静かな寝息をたてている少女にゆっくりと近づいた暦は、彼女の柔らかい頬に唇を
のせた。
今夜はきっといい夢を見ることができるに違いない。
「おやすみ」
暦は一言だけ呟いて、瞼を閉じた。