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>>843-845 あずまんがcollege2−13
7月17日午後0時30分
近江舞子
「よみちゃ〜ん」
少し間延びした声が鼓膜を揺らす。
心地よい眠りの世界から追い出された暦が瞳を開くと、ピンクのワンピースの
水着姿が映った。輪郭がにじみ出し、ぼやけて見えている。
2、3回瞬きをした後、ゆっくりと半身を起こしながら、傍らに置かれた眼鏡を
かける。
明快になった視界には、彼女の目線にあわせてしゃがんでいる少女の姿が
はっきりと映った。湖水に濡れた黒髪から生み出された水滴が、夏の陽光を
乱反射させながら、次々と地面に落ちている。
「あ〜大阪か」
まだ少し眠気が残っているようだ。
「はい、ジュースやねん」
少し危なっかしそうな手つきで山吹色の液体が入った紙コップを手渡す。
「ああ、ありがと」
渡されたオレンジジュースを一気に半分ほど飲み干すと、頭が幾分かは
鮮明になってくる。それとともに、元気すぎる少女の姿が見えないことが
気にかかってきた。