【あずまんが大王】よみ&とも【Best Friends】

695メロン名無しさん
12.訪問(2)

私は今、紅茶を煎れている。安物のティーパックではなく、来客用のちょっと高いやつだ。
手紙とメモリースティックは、印鑑とか保険証とかがしまってある棚に入れておいた。
キッチンに向かい合いながら、正面にぶら下がるステンレスのナベの底に反射してちよちゃんの姿が見えた。
大体は大阪の言うとおりだった。髪がストレートになっていた。それも結構長い。あれから12年が経ってるから、ちよちゃんは今、24,5歳だろうか。十分に、高校生に見えた。
白衣の下は、着慣れてなさそうなタイトスカートのスーツ姿だった。
ティーセットを乗せたおぼんを握り締める。だいぶ落ち着いてきた。よし、いくぞ!
「久しぶりだねー、ちよちゃん。いつ帰ってきたの?」
「最近はよく日本によるんですけど、忙しくってなかなか皆さん会う機会がなくて・・・あ、どうも」
紅茶を注ぎながら、
「今なんの仕事してるの?」
「大学を卒業してからは核物理学の雇われ学者をしてましたけど、今は何でも屋さんみたいな感じです」
「何でも屋?」
「はい。今は、ヨーロッパの企業で浸透分子顕微鏡の研究チームに参加しています」
「なに、浸透分子顕微鏡って」
「要はモノを透かして見ることのできるカメラのことです。これができれば様々の分野で大活躍するはずです」
昔のように無邪気な笑顔で、母親から買ってもらったおもちゃを自慢する子供のようにちよちゃんは言った。
ちよちゃんは、やっぱりすごいと思った。本当の天才だ。
全く次元の違うレベルの研究で、世界に貢献しようとしている。

・・・なんや、ともちゃんのこと訊かれたわ

大阪の一言が思い出された。
ちよちゃんは連絡をとっていた。少なくとも大阪の前に現れた1年以上前から。今、聞いてしまおう。聞いてスッキリしよう。全部、自分の勘違いだ。
「あの───」
「よみさん」
ちよちゃんに制された。一瞬、目の前に座っているのが誰だか分からなかった。
「ともちゃんって、昔はどうでした?」