【あずまんが大王】よみ&とも【Best Friends】

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407メロン名無しさん
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あずまんがcollege2−11
7月17日午前8時32分
京都市内


純青の夏空からは、既に強烈な夏の陽光が差し込んでおり、光と影の強烈な
コントラストを形作っている。
「ふわ〜」
心地よい夢の世界から追い出された智は、半身を起こすと大きなあくびをした。
しばらく頭がぼや〜としていたが、軽く首を左右に振ると意識が
はっきりしてきた。同時に今日の未明の甘酸っぱい記憶も蘇ってくる。
「よみ…」
軽く呟いてみる。暦の真剣な表情、真摯な想い、蕩けるような熱いキス、
そして…
一瞬の間に様々なシーンが脳裏を駆け巡った。
「どうしよう…」
どうやら暦は私のことが好きらしい。では私はよみの事をどう思っている
のだろう、大切な親友だけなのかな、それともそれ以上?
智は視線を暦のほうに移した。自分を感情の迷路に追い込んだ、暦に
少しだけ憎たらしさを覚え、眠りにおちている彼女に近づくと両手で
かるくほっぺたをつねった。
408メロン名無しさん:02/09/29 12:37 ID:???
「う…」
頬に違和感を感じた暦は、小さく声をあげ、そして目を開いた。
至近に自分の愛する少女の顔が、悪戯そうな顔をしているのが見えた。
「なんだよ〜」
それでも照れという感情が邪魔をするのか、素直でない表現で悪態をつく。
「起きろ〜」
「あっもう朝か〜」
暦は未だぼんやりとした意識で呟いた。
その時、二人は背後から忍び寄る気配に気がつき、思わず振り向いた。

部屋の入り口に、一人の少女が佇んでいる。半そで半ズボンのパジャマを
着た、流れるような黒髪を持つその少女は、非常に眠たそうな視線で
二人を見下ろしている。
そして彼女の右手は

刃渡り30センチは確実に超えているであろう出刃包丁を
握り締めていた。
409メロン名無しさん:02/09/29 12:38 ID:???
包丁の刃先を向けられた、智と暦は絶句した。凶器という言葉を
鮮烈なまでに具現化した鋭い刃先は、夏の強烈な陽光を浴びて妖しいまでの
輝きを放っている。
「な…に…?」
辛うじて智は声を絞り出す。
何故大阪がこんなことを…
智は彼女がしていることの意味が分からず、ただ唖然としている。
すぐそばに佇む暦も、大阪の右手に持つものを凝視したまま、
全く動けないでいる。眼前に展開された光景が信じられないとでも
いうように。

(どうして…どうして大阪がこんなことを)
混乱した智の頭は一つのとんでもない結論を導き出して、そして戦慄した。
(ま…まさか、未明のことを見られた…)
もし大阪が、自分と暦の濃厚なキスシーンを見ていたとしたら、
自分の淫らな喘ぎ声を聞いていたとしたら、そして大阪が私のことを愛して
いたとしたら、絶望のあまり、三角関係のもつれを一気に清算しようと
したのなら…
そこまで思考が及んだとき、未明の自分の軽率なふるまいが、
いかに大阪を苦しめたか、激情のあまりに犯してしまうであろう惨劇が、
彼女や周囲にいる人々の今後の運命を、いかに狂わしてしまうのか。
智は今になって、自分の犯した過ちをはっきりと認識した。激しい後悔と
いう感情が心の底からわきあがる。
彼女が大阪に対して、謝罪の言葉を口にしようとしたとき…

「あ 起きてもたー」
普段と変わらぬのんびりした口調でつぶやいた大阪は、くるりと背を向けた。
「しっぱいやー」
そして、呆然としている智と暦の二人を後に残し、包丁をもったまま
ゆっくりとした足取りで、部屋から去っていった。