【あずまんが大王】よみ&とも【Best Friends】
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あずまんがcollege2−10
7月17日午前8時30分
京都市内
「ん〜」
大阪と呼ばれる少女は眼を覚ました。
普段から、ぼ〜としているといわれている彼女であったが、寝起きの時の
表情は更にぼんやりとしており、愛らしい大きな黒い瞳は今はまだ半分
閉じたままである。
暫くしてから、ゆっくりとした動作で大阪は半身を起こした。つややかな
セミロングの一房が彼女の頬を優しくなでる。数回首を振りあたりを
見渡すが、普段は大阪より早起きな智も、そして生活が規則正しそうな暦も
未だぐっすりと眠りについている。
「へへ〜早起きさんやな、私って」
半分意識を水面下に置いたまま、大阪はちょっと得意げにつぶやいた。
「そや、早起きは三文の得ってゆーけど、おねぼうしたらどうなるんやろ…
早起きが得なら、おねぼうさんは三文の損なんやろか?
そもそも三文ってなんなん?
そやっ昔のお金の単位や!社会の先生が言ってたのおもいだしたで、
私ってもしかしたら天才かもしれへん。
そーゆーたら今やったら早起きは3円の得っていうんやろな〜
ほんでも3円って安いな〜3ドルくらいやったらどうやろ…」
「歩ちゃ〜ん、ご飯できたで〜」
ぼんやりと思考の迷路にはまりこんだ大阪であったが、台所から叔母の声が
するのを聞くと、おもむろに立ち上がり、ゆっくりと台所に歩いていった。
「叔母さん、おはよ〜さん」
「おはよう、歩ちゃん」
大阪の母の妹にあたるエプロン姿の女性は、微笑みを浮かべて挨拶した。
どことなく面影が似ているが、彼女と違って動作が快活そうである。
「歩ちゃん、お友達を起こしておいで」
叔母にいわれた大阪は、ふとあることを思い出した。
(そやっ合宿の時、失敗したあれをやってみるチャンスやで)
自分の思いつきに夢中になった彼女は、台所の下にもぐりこみ、しばらく
がさがさと音をたてていたが、やがてあるものを取りだし、ゆっくりと
立ち上がった。
そして、ふらふら〜とした足取りで、智と暦の寝室に向かっていった。
その時、大阪の叔母は食器を探していて、大阪から背を向けている
格好になっており、彼女が何時の間にか台所から去っていたことに、
全く気がつかなかった。