「おいで、ヴァニラ…」
タクトはそう言って、ヴニラ優しく引き寄せた。ヴァニラは「あっ」と小さく驚きの声をあげたが、
抵うことなくそのままタクトに身体を預ける。
暫時の沈黙。
先に言葉を発したのはヴァニラだった。
「タクトさん…タクトさんの胸、温かいです…ずっと…こうしていたい…」
「ヴァニラ…」
こみ上げる愛おしさ。タクトは軽く前屈みになり、両手でヴァニラの頬包み、ゆっくりと
引き寄せた。普段は無表情でいる事の多いの彼女だが、今は違った。
まだ幼さを残す、はにかんだ表情。何かを訴えかけるような潤んだ瞳。鼻腔をくすぐる甘い香り…
それらはタクトに、ヴァニラの中の「女性」を意識されるのには十分だった。
そして2人は、自然に、本当に自然に、唇を重ねた。
柔らかく。暖かく。そして小さく震えるヴァニラの唇。やがてヴァニラの目から、
一筋の真珠が零れ落ち、弾けた。
際限なく吹き上がる感情。それはやがて、タクトの中に眠る「男性」としての本能を呼び覚ます。
何の前触れも無く、タクトは僅かに開いたヴァニラの唇に、自分の舌を入れた。
驚きのあまり、一瞬目を見開くヴァニラ。何かを言おうとするが、タクトはそれを許さず、
ヴァニラの唇を求め続ける。やがてヴァニラも自分からタクトの舌に自分の舌を絡め始めた。
静寂が支配するクロノドライブ中の艦内に、2人のディープキスの淫靡な音だけが響く。
その音は、やがて「男女」の発する熱い吐息へと変わっていった…