あずまんが大王 よみ様を語る2

このエントリーをはてなブックマークに追加
611メロン名無しさん
(中略)

 そういう意味で、6人のなかで1人異質なのが水原暦である。
彼女はその登場シーンのほとんどが、斜め後ろからの視点である。
(これは彼女の相方の滝野智が、ほとんど正面から描かれているの
と対をなしている)。 彼女はこの「あずまんが大王」という異世
界の中で唯一読者側の視点を持たされているキャラクターなのだ。
彼女の特徴であるツッコミは、それだけで芸になるほどひねりがあ
るわけではない。これは前述の「あずまんが大王はボケの世界」に
も関連するが、通常の感性を持つ読者にとって、この世界の独特の
ボケに接して出てくるリアクションは、ある程度突き放したものに
ならざるを得ない。彼女のシンプルなツッコミは、読者の代理発言
とも言える。
 しかしながら、時に彼女は自らの持ちネタであるダイエットを武
器に、「あずまんが世界」に入り込むことも出来るのだ。出演者と
観客、2つの立場を行き来できる能力。これこそが彼女のキャラク
ターの真の特徴ではないだろうか。

(中略)

 物語中で明示的に示されている<榊―かおりん>よりも、<暦―
智>のペアが広く認知されているのは、読者が水原暦の中に自分自
身を投影させやすいから、とも考えられる。また彼女につきまとう
報われないイメージも、「あずまんが世界」に入ることを許されな
い、読者の感じるせつなさが投影されているのではないか。
612メロン名無しさん:02/09/08 01:30 ID:???
>>611
引用元はどこ?
613メロン名無しさん:02/09/08 04:25 ID:???
(中略)

 作者は当初からこの作品を3年間で終わらせる予定だった。結末
が何気ないハッピーエンドということも、そして設定が日本の高校
生である以上、ハッピーエンド=受験合格であることも、連載当初
からの構想であったろう。
 大学受験について、天才である美浜ちよ、秀才である榊、運動能
力のある神楽の3人については、作品中でも割とすんなり描かれて
いる。滝野智、大阪の2名については、ボンクラという設定のため
若干の追加説明が成されているが、こちらも特に何事もなく合格し
ている。ここでも扱いが異質なのは水原暦だ。彼女の受験だけ、卒
業式の後に話が持ち越され、最終回の主役にまでなっている。
 これは作者が意識的に彼女を「あずまんが大王の世界」に引き戻
した結果であろう。作品中で受験ネタが出始めるのと同時に、彼女
の斜め後ろ姿の頻度が少なくなっている。作品をすっきり終わらせ
るためには、もはや読者を代行するキャラクターは邪魔なのだ。彼
女中心のエピソードが終盤に多いのも、今までの観客としての描写
で不足した、出演者としての描写を補填するためと思われる。
 そして予定通り、6人は同じ立ち位置で、作品世界と共にあっさ
りと旅立つ。これは非常によく出来たラストシーンで、物語が終わ
ることについての納得感を、すんなり読者に与えることに成功して
いる。単独では内容の薄い説明を、ひとつひとつ繰り返し塗り重ね
ながら作品世界を構築してきた手法のおかげとも言えるだろう。
614メロン名無しさん:02/09/08 05:10 ID:???
 水原暦がまだ観客として描かれることが多かった時期に、熱を出
して参加できなかった遊園地に、最終回では行くことが出来た。こ
れは、もう彼女が完全に読者と切り離されたことを暗示している。
こうして唯一の接点を失った読者は、ある意味では後腐れなく作品
世界から卒業できるのだ。作品を終わらせるということは、作品世
界内の物語に決着をつけるだけではない。作品と読者との関係を精
算することでもある。水原暦はそうした作者の意図を体現する上で
も「あずまんが大王」に欠かせないキャラクターと言えよう。