ゲゲゲの鬼太郎の第5部を予想するスレ

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362334:02/12/18 19:57 ID:???
「これって、大切なものじゃないの?」
「鬼太郎さんにもらってほしいんです。私…本当に好きになった人に、
それをあげようと思っていたの…」
「え…」
僕は思わず言葉を失った。こんな体験は生まれてはじめてだった。
…胸がどきどきした。
「あ、ありがとう…僕も決してユキさんの事が嫌いなわけじゃないよ。だけど…」
「ううん、いいの。そういってもらっただけで十分。でも私の事忘れて欲しくないと思って…。
だから、その指輪だけは、ずっと…ずっと持っててね」
「うん、わかった。大切にするよ」
「きっとよ…約束してね」
「ええ、約束します」
『…そしてユキさんを困らせる要因も全て解決していくよ!!』
僕は心から強くそう思った。
2人とも、もうそれ以上は何も言えなかった。
どちらからともなく「おやすみ」を告げ、そのまま静かに眠りについていった。
さすがに2晩続けて徹夜は出来ず、ついウトウトして朝を迎えてしまった。
ふと目を覚ますと、目の前に真っ白なユキさんの顔があってビックリした。
「ご、ごめんなさい…びっくりした?」
…ビックリした
ユキさんは慌てたかのように身を引いて立ち上がり、ほほを赤らめながらこっちを見つめていた。
すぐ目の前にユキさんの顔があったせいか、僕はどぎまぎしていた。
「い、いえ…ちょっと」
「鬼太郎さんの寝顔がかわいっくって…つい」
「そ、そうですか?」
少し気まずい。
そ、そういえば…あのすごい吹雪の音が聞こえない。
入口まで確認に行くと、雪はまだシンシンと降ってはいるものの、吹雪というほどではない。
これなら村に帰れる。僕は、奥にいるユキさんに声をかけた。
「ユキさん、ようやく吹雪がおさまりましたよ、これでやっと村にもどれる…」
奥から、ゆっくりと現れたユキさんは、また悲しみに沈んでいた。
363334:02/12/18 20:00 ID:???
「ユキさん、そんなに悲しまないで下さい。さみしくなったら、ゲゲゲの森に
手紙を出せばいいじゃないですか!そうしたら、僕はすぐにとんでくるから。
ほら、元気出して下さい!」
僕はユキさんの肩に手を置いて励ました。ユキさんは小さくうなずいた。
と、そのときだった。
「…――――い」
「きたろう――――…」
「どこにいる――――…?」
聞き覚えのある、カン高い声が聞こえてきた。
「おーーい!鬼太郎、そこにおるのかーー?!」
「おーーい、父ーさーん…それに、みんなも!!」
声のしたほうから、ねこ娘が肩に父さんをのせてこちらのほうへやってくるのが見えた。
ヌリカベは、2人を雪から守るように付きそっていた…。
「おーい、ねこ娘にヌリカベ!君たちも来てくれたのか!」
「うん、砂かけのお婆や子泣き爺たちと一緒に来たの」
聞けば、村で留守番をしていた父さんが、なかなかもどってこない僕たちのことを
心配して、みんなをこの村に呼んでくれたのだ。
「心配かけてすみません、父さん。吹雪が激しかったので、ここに足止めされていたんです。
今朝になってようやく吹雪きも止んだので、今、村にもどろうとしていたのですよ。
村のほうは大丈夫でしたか?」
「うむ。今のところ、たいした事件は起きとらん。だが村のもんで、
猿造という男がおるんじゃが…」
「…!」
ユキさんが驚いたような声を上げた。
「?どうしたんです…?」
ユキさんの様子がおかしい…。どうしたんだろう。
そう聞き返そうとした時、父さんが会話を続けた。
「ぜひとも、ワシらに話したい事があるそうなんじゃ」
「僕たちにですか?」
「うむ。何か事件の手がかりにでも、なればいいのじゃがな…」
「わかりました。さっそく村に戻って話しを聞きにいきましょう。
さ、ユキさん行きましょう!」
364334:02/12/18 20:02 ID:???
と、僕は何気なくユキさんの手をとった。
そのとき、するどい視線を感じた。
ねこ娘だった。
どうしたんだろうと、僕がねこ娘のほうを見ると、ねこ娘はなぜか、少し怒ったような
顔つきで、プイッとそっぽを向いた。
「とにかく、こんなところに長居は無用じゃ。またいつ吹雪いてくるのかもわからんからのう」
と言いながら、父さんが僕の肩によじのぼってきた。
外を見ると、日はすっかり昇りきっていた…
さいわいにも村へ戻る途中で、再び吹雪く事はなかった。
僕たちは、ひとかたまりになって山を降りていった。
心なしか、まだユキさんの元気が無い。
新雪の山道はすべりやすく、緊張を強いられ、皆疲れていた。
「ユキさん、足元に気を付けて」
と、僕のほうは相変わらずユキさんの手を引いていたが、ねこ娘が後ろから来て、
僕たちの手を引き離した。
「こんな雪道で手なんかつないでたら、よけいに危ないわよ」
といって、僕とユキさんの間に割って入ってきた。
ねこ娘の奴、なんだってさっきからこう素っ気ない態度なんだ?
ねこ娘は、たった今引き離した僕の手の指にはめられた指輪を見て言った。
「何よそれ、見かけない指輪ねぇ」
「あ、うん、ちょっと…」
僕はてれくさくてごまかしてしまった。
「なによ!隠すことないじゃない!!ユキさんにもらったんでしょ!?」
ねこ娘は怒り出してしまった。
やはり、ごまかすんじゃなかったな。
「モテる男はつらいのう」
父さんがとぼけた口調でそう言った。
「父さん、からかわないで下さい!」
「ホッホッ…まあ今はそんな場合ではないわな。さ、急ぐぞ、鬼太郎」
「…はい、父さん」
それから村に着くまでは、誰も口を開かなかった。
365メロン名無しさん:02/12/19 01:17 ID:yZpMLMpw
神!
サンクス!
366333:02/12/19 08:10 ID:???
>>334
ありがと〜ぅ!
いいね・・・いいね!!
3部のごちゃごちゃ多角形の奴じゃなくて
こんな艶っぽい話を是非5部では期待したい!

367メロン名無しさん:02/12/19 09:24 ID:???
原作の最終シリーズアニメ化きぼんぬ。
目玉おやじがマムコの中に入ったり、
鬼太郎がヤリまくりのやつ。
368334:02/12/19 18:17 ID:???
読んでくれてる人は少ないと思いますが
まだまだ貼ります。
369334:02/12/19 18:19 ID:???
僕たちは、ユキさんの家の近くまで帰ってきた。
ここまで戻れば、村はもうすぐだ。
「…あの」
ユキさんが遠慮がちに手を挙げた。
「私は遠慮しておきます…」
「うむ。その子は、ゆっくり休ませるためにも、帰した方がよいじゃろう」
父さんが言った。
たしかに心配とはいえ、病み上がりにユキさんを一緒に引っ張り回すのは、
ユキさんの体のためにもよくないだろう。
「そうですね。ユキさん、また後で行きますから家で待っていてもらえますか?」
「ええ、私は大丈夫ですから」
「とはいっても、誰かがついていた方がよいじゃろうな…」
その時だった。
「いやぁ参ったぜ、何なんだ、この寒さは!」
体中をぶるぶる震わせながら歩いてきたのは、ねずみ男だった。
「ねずみ男。お前、来ていたのか」
「だってよぉ、みんなでぞろぞろ出かけるってのに、俺1人ゲゲゲの森に残るなんて
シャクにさわるじゃねえか」
「ばかもん!!ワシらは、あそびに来とる訳じゃないぞ!」
「確かに、あそびに来る所じゃねぇや。こんな吹雪以外に何もねぇ所、
二度と来たくねえ…」
ねずみ男はふと、僕の隣のユキさんに気づいた。
「やっぱ、来てよかったなぁ!デヘへ」
ユキさんはおびえたように、僕の腕をつかんできた。
「そうじゃ、ちょうどいい。ねずみ男、この娘に付いていてくれんか。
体が弱い子で見ていてやらんと不安なんじゃ。ワシらはこれから、
やらねばならん事があるんでのう…」
「おぅ、お安いご用だぜ!」
ねずみ男は、うれしそうに答えた。
「ねずみ男!失礼な事をするんじゃないぞ!!」
僕がそう言っても、ねずみ男は返事もせずに、ユキさんをぐいぐい引っ張って
歩き出した。
370334:02/12/19 18:20 ID:???
ユキさんが、不安そうな眼差しを僕に向けた。
「そ、それじゃあ、鬼太郎さん、また後で。
あの…猿造にはくれぐれも気をつけて下さいね…」
そして、家の中に入っていってしまった。
気をつける?…猿造との間になにがあったのだろうか…?
「…さあ、ワシらは猿造の家へ向かうとするか」
父さんにうながされ、僕は考えるのを止めて村に向かって歩き出した。
さすがに「やまずの吹雪」というだけあって、再び雲行きが怪しくなり、
雪が強く降り始めた。
僕たちは、風と雪に足下をとられながらも、ようやく猿造の家にたどりついた。
戸を叩くと、マスクをして首をうなだれた男が出てきた。
「…猿造さんですか?」
男は何も答えずに一度うなずくと、外の様子を何度もうかがい、僕らをまねき入れると
すぐに戸を閉めてしまった。
僕たちは、猿造さんのあとに続いて奥へ進んだ。
昼間だというのに家の中は明かりもなく薄暗い。
猿造さんは僕たちと向き合って座ると、顔も上げずつぶやくように口を開いた。
「ここへ来る途中、村のもんには見られなかっただろうな?」
「ええ…村の人には誰にも会いませんでした」
と、僕は答えた。とりあえずユキさんの事は黙っておいたほうがよさそうだ。
「…なら、いい」
「そのマスクはいったい…どうかしたんですか?」
僕のセリフに猿造さんは一瞬身じろぎしたように見えた。
「気を悪くせんでもらいたいのじゃが、お前が妖怪ではない事を、
確かめさせてもらいたいのでな」
やっぱり父さんも猿造さんの異常な振舞いに気が付いていたようだ。
「……わかった」
猿造はゆっくりとマスクを外し顔を上げた。
僕は、その顔を見て思わず息をのんだ。
猿造の顔には、目も、鼻も、口もなかったのだ。
…話しに聞いた死体と同じか…
ついに生きている者まで、巻き込み始めたらしい。
371334:02/12/19 18:21 ID:???
「ほう、こりゃ見事なのっぺら顔じゃ」
父さんも驚いている様子だ。
「いつ、そんな顔になってしまったんですか!」
「じつは…5日ほど前、俺は山にのぼったんだ。
あそこには、ちょっと不気味な、穴ぐらがあるんだが…」
「ええ、知ってます。僕もずっと、そこにいましたから」
「何だと…!?お前、それで何ともなかったのか!?」
父さんも、ねこ娘も、僕の方を見た。
「さあ…とくに変わった事はなかったけど」
「ところで猿造。お前はあんな山奥まで何しにいったんじゃ?」
父さんが口をはさんだ。
「それは…ちょっとした用事だ」
「一人で行ったのか?」
「それは…そ、そうに決まってるじゃねぇか」
猿造は、ちょっと慌てたような口ぶりでそう言った。
「とにかく、俺はこの顔を元通りにしてほしいだけなんだ。こんな事、
村の連中にはいえねぇから、こうしてお前らに頼んでるんだ!」
「…他に何か、気づいた事はありますか?」
ユキさんがおびえるのも、もっともな気がする。
変な奴だが、そうもいっていられない。
すると猿造は
「強いていやあ、顔に白いサラサラしたものがついていたくらいだが…」
それから父さんが、いくつか問いかけてみたが、猿造は具体的な事は
もう何も答えようとせず、とにかく顔を返してくれ、の一点張りだった。
このままではラチがあかない。
僕たちは、猿造の家を出る事にした。
「どう思います、父さん?」
猿造の家をあとにしながら、僕は皆に聞いてみた。
「どう思うも何も、妖怪のしわざに決まってるじゃない」
と、ねこ娘が代わりに答えた。
「しかし、顔を奪う妖怪といえばのっぺらぼうがおるが、
奴はとっくの昔に改心して、おとなしく暮らしとるはずじゃしのう」
372334:02/12/19 18:24 ID:???
「けどあの人、何かを隠してるみたいだったね」
と、ねこ娘が首をかしげた。
「たしかに、ワシが何を聞こうとしても、あいまいな返事しかせんかったな」
父さんも猿造に疑問を抱いている。
たしかに猿造との会話には、何か釈然としない気持ちが残ったのは事実だ。
「でも、何とかしてやらないわけにはいきませんね…」
…そういえば、ユキさんの薬が置いてある穴に、どうして猿造入っていったんだろう…
とにかく、その現場に行ってみるしかないだろう。
…ユキさんに一声かけてから行こうか、とも考えたが…
「また、いつ吹雪が激しくなるとも限らん。穴ぐらへ行くなら、急いだほうがよいぞ」
という父さんの言葉にうながされて、僕たちはその足で、山へ向かう事にした。
山をのぼり始めてしばらくすると、ねこ娘が息をハァハァさせて言った。
「あーあ。どうせなら、一反木綿を呼んできて、乗せてもらえばよかったね」
それもそうだったな、と僕も思った。
けど、できるだけ早く事件を解決して、ユキさんを安心させたかった。
「少し、急ごう」
そう言って足を速めた時、突然、足元の雪が崩れる音がした。
と思ったのもつかの間、僕の体はみるみる落下した。
「鬼太郎ーっ!」
ねこ娘の叫び声が、急速に遠ざかっていった…
と同時に、ドサッという音と衝撃を体に感じた。
「鬼太郎ーっ、大丈夫なの!?返事してー!」
ねこ娘の呼んでいる声が聞こえる。
僕は穴のような所に、落ちてしまったみたいだ。
その声の具合からしても、かなりの高さから落下したようだ。
だが雪のおかげか、どこも痛くもないし、体は傷の一つもない。
「あたたたた…鬼太郎、無事か!」
後ろの方の雪から、はい出てきた父さんが体についた雪を払っていた。
「ええ、何ともないようです。父さんのほうこそ大丈夫ですか?」
「うむ、ワシも何ともない。こういう時は雪というのは
ありがたいもんじゃな」
「そうですね」
373334:02/12/19 18:26 ID:???
「ねこ娘ー!僕たちは、大丈夫だー!僕も父さんもケガひとつないよ!」
と、大声で返事した。
「ふぅー、よかった」
という、ねこ娘の安堵の声が聞こえた。
その時、別の声がした。
「何じゃお前らも落ちてしまったのか」
聞き覚えのある声…
砂かけ婆だった。隣には子泣き爺もいた。
「慣れない雪道を歩いたりすると、すぐにこれじゃ。
やっぱり冬というのは怖いのう」
「しかし砂かけに子泣き。どうしてお前らが、こんな山の中に入る
必要があったんじゃ?」
「ワシらは、どうもこの吹雪自体が怪しいような気がしてのう。
何かあるんじゃないかと、調べようとしておったんじゃ」
と、砂かけ婆が答えた。
「ほう、そうじゃったのか。それで何か見つけたか?」
「…これを見てみい」
「こ、これは…!!」
…驚いた。
顔のない死体が、いくつもゴロゴロしているのだ。
行方不明になった死体たちは、ここに集められていたのか…
「父さん、死体の行方はここだったんですね」
「うむ」
そういうと、父さんはヒョイと死体に飛び乗り、その顔をシゲシゲとながめた。
「鬼太郎、これを見ろ」
小さな手の先に付いた物は…何か白い粉のような物だ。
「白粉じゃよ」
「オシロイ…ですか?」
その時僕はハッとした。
「…ユキさん」
彼女の体も白かった。
いや、でもそれは薬のはずだ…
374334:02/12/19 18:27 ID:???
つい恐ろしい考えになってしまうのを僕は慌てて打ち消した。
今はとにかくここを出て、早く彼女に確認したかった。
「そ、それよりも早くここから出る方法を考えましょう!」
「そんな事は簡単じゃ」
こともなげに父さんが言った。
「お前の髪の毛をのばして、上のねこ娘につかんでもらえばいいんじゃよ」
…なるほど、その手があったか。
「分かりました、父さん!!」
僕は見上げて、声を張り上げた。
「おうい、ねこ娘ー!」
すると、ねこ娘の声がかえってきた。
「なあにー!?」
「今から髪の毛をのばすから、つかんでくれないか?」
「わかった」
僕は気持ちを頭に集中させてふんばった。
ぐぐーっと髪の毛が上へのびていった。
と、やがてねこ娘が、僕の髪をつかんだ感触を感じた。
「よし、みんな僕につかまって」
砂かけ婆と子泣き爺をつかまらせると、僕はもう一度ふんばって、髪の毛を縮ませた。
すると、僕の体はぐんぐん引き上げられていった。
上にあがって、僕たちは再び歩き出した。
砂かけ婆と子泣き爺も、山越えをすると言って一緒についてきた。
だが…何時間歩き続けても、穴ぐらは見つからなかった。
それどころか、今歩いているのが山の中腹なのか、それとも山頂近くまで、のぼりつめて
いるのかさえ、判らなかった。
「どこまで歩いても、景色が変わらんのう」
くたびれ果てた様子で砂かけ婆が言った。
「まるで〜、同じ所を〜どうどうめぐりしとるようじゃの〜」
息をきらせながら、子泣き爺が言った。
「あるいは、そうかもしれん。あの穴ぐらには、決してたどりつけんかも…」
「どういうことですか、父さん?」
375334:02/12/19 18:29 ID:???
「いや、この山はどうも妙じゃ。さっき落ちた穴も、ひょっとしたらワシらを
穴ぐらに行かせないために、何者かがこしらえた落とし穴…いや、結界かもしれんぞ」
「結界ー!?」
まさか、そこまで強力な妖怪とは…
でもそうだとすると、何者かが、自分の邪魔になる存在を消すために結界を張っているのはわかる。
やっぱり、猿造の顔を奪ったのは妖怪なのか!?
「でも、あの穴ぐらはユキさんの薬がある所なんですよ。ユキさんに聞けば、
きっと行き方を教えてくれますよ」
「…とにかく、ひとまず村に戻った方がいいんじゃない?このまま夜になったら、
にっちもさっちも行かなくなっちゃうよ」
ねこ娘が言った。
ユキさんに会って、穴ぐらの詳しい場所を聞いて、もう一度出直そう。
穴ぐらに行けば、さっきの不安も消えるさ…
僕たちは村へ引き返す事にした。
「なによ、ユキさん、ユキさんって」
と再びねこ娘の機嫌が悪くなった。
だが、今はそんなことには構っていられない。
一刻も早くユキさんの家へと、僕たちは急いだ。
お父さんから教えてもらった「結界破り」の歩行により、何とか僕たちは、
日が暮れる前に、村にたどりつく事ができた。
この歩行法は体力を使うので、たどり着いた頃は、皆つかれきっていた。
それでも、かなり早足で歩いたつもりだったが、僕たちが村に帰り着いた頃には、
もう日も暮れかけてた。
やっとユキさんの家が見えてくると、
「ふう、これでやっと一休みができるわい」
と砂かけ婆がいった。
みんなの顔には、疲労のあとがありありとうかがえた。
僕は何よりもまず、ユキさんの顔を見たいという気持ちになっていた。
そんな気持ちになっている自分がとても不思議だったが、
足も自然と速くなっていった。
「鬼太郎、どうしたのよ、急に早足になって?」
ねこ娘が小走りに追いついてきた。
376メロン名無しさん:02/12/20 15:14 ID:???
うわぁー更新されている!
嬉しいです〜(TT)
続き、凄く楽しみにしていました!
334さんお疲れさまです!
377334:02/12/20 23:40 ID:???
>>376
読んでくれてありがとー
いよいよラストスパートです
378334:02/12/20 23:42 ID:???
ユキさんの家の煙突からは、煙がたっていた。
ねずみ男の奴、ちゃんとユキさんの面倒を見てあげているんだろうか、
そんな風に思いながら、ユキさんの家の戸を開けた。
「ユキさーん、鬼太郎です!」
だが…ねずみ男はそこにいなかった。
ユキさんの姿も見えない。
ふと見ると、開けっ放しになった裏口から、吹雪が吹き込んでいた。
僕は裏口にまわった。
足跡が闇の中へ向かって消えていた。
ふつうよりも、2倍も深く沈んだ足跡が…
僕はユキさんを背負って、穴ぐらへ向かった時のことを思い出した。
そうだ、これは誰かが人間を背負っていったものだ。
まさか、ユキさんがまた発作を起こしたのか?
それをねずみ男のやつが!?
「父さん、後を追いましょう!」
僕は足跡を追って、吹雪の舞い乱れる闇の中へ飛びこんでいった。
僕が再び、雪山へのぼり始めたせいか、みんなが慌てて迫ってくる音が聞こえた。
だけど僕は、ユキさんが心配で気が気でなく、声もかけずにのぼっていった。
その足跡―おそらく、ユキさんを背負ったねずみ男の足跡―は、
どうやら山の中まで続いているようだった。
どうして、僕たちとすれ違わなかったんだろう…
少し不思議な感じがした。
と、その時。
「き、鬼太郎ぅ―!助けてくれぇ!」
闇の彼方から、ねずみ男の叫び声が聞こえてきた。
やがて、その姿が見えた。
ねずみ男は全速力で走ってくると、ゼェゼェ言いながら、前かがみになって
ヒザに手をついた。
「ねずみ男、どうしたんだ!」
「とんでもねぇ事になっちまったよぉぅ…」
と言って、ねずみ男が顔を上げた。
僕は思わず息をのんだ。
379334:02/12/20 23:43 ID:???
ねずみ男の顔が、なくなっている!
目も、鼻も、口も…
「やだ、猿造さんと同じ…」
あとから追いついてきた、ねこ娘が声をあげた。
そうだ、さっきの猿造と同じだ。
ということは、ねずみ男も猿造を襲った同じヤツに襲われたということか!?
まさか、ユキさんも…!?
「そ、それで、ねずみ男。ユキさんは、ユキさんはどうしたんだ!?
一緒じゃなかったのか?」
僕は、ねずみ男の肩を、つかんで揺さぶった。
「それが…急に薬が欲しいって言い出したんで、俺ぁユキちゃんを背負って山の中へ連れてったんだ。
ユキちゃんと、穴ぐらに入っていって…」
「それからどうしたんだ?」
「あんまり長い間出てこないもんだから、俺は心配になって、穴ぐらに入ってみたんだよ。
まぁ、ユキちゃんはすっかり元気にになってたんだけどさ。
で、元気になったユキちゃんと、何かいい感じになっちゃってよう…俺ぁ、
いつの間にかウトウトしちまったんだ」
…似ている!
僕の時と、状況がよく似ている。
「それがふと目が覚めた時にゃあよ…ユキちゃんはいなくなっちまってたんだ!
それと…この俺の顔もよぉぅ!」
…なんて事だ。
きっと妖怪があらわれたに違いない。
そしてねずみ男の顔を奪い、ユキさんまでも奪って逃げ去ったんだ。
…無理矢理にでも、僕が一緒に行動していれば、絶対ユキさんを守ってあげられたのに…
ねずみ男の間抜けな顔をにらんでいると、ふと気づいた事があった。
…あの白い粉だ。
「とにかく、穴ぐらへ行ってみるほかないのう」
父さんがそう言うより先に、僕は走り出していた…
ねずみ男の足跡が残っていたおかげで、穴ぐらを見つけだすのは大して難しい事ではなかった。
しかし、あんなに探して見つからなかったのに…
本当にここだったか不安になってくる。
380334:02/12/20 23:44 ID:???
とにかく僕は穴ぐらの中にかけこんだ。
僕は、くすぶって消えかけていた、たき火にマキをくべて、中を明るくした。
確かに…あの、穴ぐらだ…
ユキさんの姿は…もちろんなかった。
「うむ?あれはなんじゃ?」
父さんが指さした方を見てみた。積み上げられたマキの陰に、奇妙な形のツボがあった。
僕がユキさんと来た時に、奥の方にあったものだ…
薬のツボが何でこんな所に…。
ツボのフタを開けてみると、中には白い粉のようなものが入っていた。
死体についていたのは白粉。
ユキさんが使っていたのは薬…
本当に薬なんだろうか…?
「さわっちゃいかん!」
砂かけ婆が横から僕の腕を押さえた。
「これは…白粉婆が妖術をあやつるときに使う脂粉仙じゃ!」
「オシロイババア…!?シフンセン…!?」
砂かけ婆がギョロリとした目を細くして白粉を見つめる。
「白粉婆という妖怪は、この脂粉仙をぬりたくった手で、顔から目や鼻を奪いよるんじゃ」
「じゃあ、猿造やねずみ男の顔を奪ったのは、白粉婆なのね」
ねこ娘がいった。
「うむ、さっきの死体を見てハッキリした。恐らく、死体からとった村人になりすましておったのを、
周りが騒ぎ始めたので生きた村人…猿造の顔をとって何食わぬ顔で歩いておったのじゃろう…」
そして父さんは、信じられないことを言った。
「ひょっとすると…あのユキという娘が白粉婆かもしれんのう」
「な、何ですって!?」
「脂粉仙をぬれば、若い娘にバケるのたやすい事じゃしな」
砂かけ婆も、父さんに同意した。
「奴はそうやって男を引き寄せては、顔を奪っていたんじゃろう」
「猿造が隠しておったのは、おそらくその事じゃな。あの狭い姥捨村では、若い娘に手を出したり
すれば、たちまちウワサが広まるに決まっとる。猿造はそれをイヤがって、ワシらにユキと一緒にいた事を話そうとしなかったんじゃ」
「そういや、今考えてみると、あのユキちゃんって娘はおかしなところがあったしなぁ」
と、ねずみ男まで相づちを打ちだした。
381334:02/12/20 23:45 ID:???
「ねずみ男!お前までが何を言うんだ。どうせ、お前はユキさん相手に鼻の下を
のばしまくってたんだろう。そんなことだから、妖怪に目や鼻を奪われるんだ!」
と、僕はねずみ男に食ってかかった。
「でも、おかしいと思わない、鬼太郎?普通の女の子が、ねずみ男なんかに寄ってきたりするかしら?」
と、いつになく、ねこ娘が冷静に口をはさんできた。
「そんなのは、いつものねずみ男のデタラメだよ。ねずみ男のほうからユキさんのほうへ…」
と、反論する僕の言葉をさえぎって、
「鬼太郎は昨夜、何もされなかったの?」
ねこ娘が聞いてきた。
「されなかったから、ここにこうしているんじゃないか。僕は2晩もここにいて、
その間に眠ったことだってあるのに、平気なんだから。それに…」
僕は、昨日の夜までのユキさんを思い出した。
たしかに、この穴ぐらの中で僕とユキさんは寄り添うような近さで話していたこともある。
しかし、ねずみ男のようにウトウトするようなことは…
そういえば、3日目の朝、確かにウトウトしかけた時、気が付くと目の前にいた事があったけど…
でも、僕に向かってあんな笑顔を見せていたユキさんが白粉婆だとは思えない。
…だけど、そんな勝手なことを言っても、信じてはもらえないだろう。
僕は、言葉を飲み込んでしまった。
「それに…何だって言うのよ、鬼太郎」
「とにかく、僕にはユキさんが白粉婆だなんて思えないんだ!」
ねこ娘に追及されて、結局はこう答えてしまった。
自分でも、支離滅裂になってきている事はわかっている。
「鬼太郎、冷静になりなさいよ」
ねこ娘がさとすような口調で僕に語りかけてきた。
…違う…きっと誤解なんだ。
だけど、どう伝えたらわかってもらえるのか、わからなかった。
しかし、とどめをさすような事を父さんが言った。
「鬼太郎。ユキは白粉婆にさらわれたのではない…ユキこそが白粉婆じゃ。
奴はワシやお前が猿造の所へ行った時に、正体がばれるのも時間の問題じゃと
思ったんじゃろう。それで姿をくらましたんじゃ」
「そんな…」
無実という事を証明するしかない
382334:02/12/20 23:46 ID:???
「とにかく、白粉婆を見つけだすしかない。そうすれば、何もかもはっきりするんだ。
どうすればいいのかは、わからないけど…」
「奴のもとへたどりつく方法は、一つだけある」
砂かけ婆が言った。
「この脂粉仙を体中にぬりたくるんじゃ。そうすれば、お前の体はここから消えて、
瞬時に白粉婆の前に行けるはずじゃ」
僕はツボの中の脂粉仙を見やった。
「じゃが、それは危険な賭けじゃ。白粉婆が今おる場所は、この世ではにかもしれんからな。
その時には、白粉婆を打ち倒す事ができないかぎり、二度とこの世に戻ってこれなくなる」
「どうする鬼太郎?」
父さんが聞いた。
でも僕には少しのまよいもなかった。
「…行きます。必ず戻ってきます」
「鬼太郎…」
ねこ娘は先程の事が嘘かのように、心配そうにこちらを見ている。
僕は脂粉仙を手の平にすくい取った。
…ユキさんが、白粉婆なわけがあるわけないじゃないか…
きっと、白粉婆に会えば全てがハッキリする。
そして、どこかにさらわれているユキさんを探してあげなきゃ…
僕は肩に乗っている父さんを見た。
「お前が行くなら、無論ワシもいくわい」
「…わかりました」
「父さん、ありがとう…」
と、僕は父さんに脂粉仙をぬった。
そして自分の顔にも、体にも、脂粉仙をぬった。
脂粉仙が、皮膚にしみこんでいくのを感じた。
同時に、視界がだんだんぼやけはじめた。
「鬼太郎と目玉の親父が消えていく…」
ねこ娘が言った。
「無事を祈っておるぞー」
子泣き爺が言った。
やがて、僕の視界は完全に閉ざされてしまった…
383334:02/12/20 23:47 ID:???
…ものすごい吹雪が吹きつけてきた。
どこだろう、ここは。
暗くて、よくわからない。
「砂かけ婆の言った通りじゃ。おそらくここは、あの世とこの世との境目じゃろう」
父さんが言った。
僕と父さんは、体をパタパタ叩いて脂粉仙を落とした。
と、そのときだった。
吹雪に混じって、どこからか薄気味悪い笑い声が聞こえてきた。
妖怪アンテナを使ってみる。
同時にすさまじい強さで頭の一点が引っ張られるのを感じた。
しかもこれは、並大抵の妖気じゃないぞ。
どこから来てるんだ、この妖気は?
僕は気持ちを集中させた。
妖怪アンテナが指し示したのは…真後ろだ!
そいつは向こうを向いて立っていた。
そして身にまとった白い衣から、雪のように真っ白な手足が見えている……
「やはり白粉婆、お前じゃったか」
父さんが言った。
白粉婆は、首を振り向けて横顔を見せた。
僕は目を疑いたかった。
それは…まぎれもなく、ユキさんだった。
「ユキさん…!?」
「ウフフフ…」
冷たく笑うと、首を振って頭に積もった雪を払い落とした。
顔のもう半分が見えた。それは見るからにむごたらしい顔だった。
ぬりたくった脂粉仙がはげかかって、老いさらばえた顔をさらけ出していた。
白粉婆は、顔をヒクヒクと引きつらせた。
「うう…脂粉仙のノリが悪くなってきたわい」
そう言いながらポリポリと目元をかいた。
父さんが、白粉婆に向かって言った。
「いかにも意地汚そうなその目玉は、ねずみ男から奪ったものじゃな!」
384334:02/12/20 23:48 ID:???
「そうじゃ…どうもワシのはだに合わんようじゃ。やはり鬼太郎、
ワシにうってつけなのは、お前の顔じゃ!」
白粉婆が手をのばして向かってきた。
僕は反射的にその手をよけた。
だが、反撃することはできなかった。
このまま何もしなければやられてしまう。
そうわかっていても、踏ん切りがつかない。
「どうしたんじゃ、鬼太郎!?まだ、ためらっているのか?」
「父さん、あれはユキさんの体に乗り移っているんじゃ…」
「白粉婆にそんな能力はない。あれはまぎれもなく白粉婆じゃ!
ヤツを倒さん限り顔を奪われた者は、元にはもどらんのだぞ」
やはり、そうなのか。
しかし、そうだとしたら、なぜ2晩も一緒にいながら、僕の顔を狙ってこなかっ
たんだ。あの笑顔もみんな嘘だった、お芝居だったんだろうか?
「さあ、鬼太郎、その顔をおよこし!」
まよっている僕に、再び白粉婆が襲いかかってくる。
間一髪で再びそれを避ける。
「やめるんだ、白粉婆!!ユキさんをどこにやったんだ!?」
クルッと、こっちを振り返った白粉婆はニヤァと笑った。
「ユキ?ワシがユキじゃよ…フッフフフ」
「いい加減なことを!!」
「鬼太郎!」
父さんが叫ぶ。
「よけいなことを考えるでない!今、お前の前にいる妖怪は、
明らかにお前の顔を狙ってきておるんだぞ!」
そうだ、今はすべてを忘れて、目の前の敵を倒すことだけを考えよう。
「わかりました、父さん!行くぞ!」
僕は、すぐに髪の毛針で攻撃態勢に入ろうとした…
髪の毛針で攻撃だ!
…おかしい!?
髪の毛針を放つ事ができない!?
「鬼太郎、何をもたついておる?」
385334:02/12/20 23:49 ID:???
「父さん、ダメなんです。なぜか体が言うことをきかない!」
「何じゃと!?」
「覚悟せい、鬼太郎!」
白粉婆がツエでつついて僕を押し倒した。
あっという間に、白粉婆は僕の体に乗ってきた。
そして真っ白な両手を、顔に向けてのばしてきた。
「さぁ、おとなしく顔をよこすんじゃ。そしてワシの妖力を高めさせとくれ!」
「やめるんだ、白粉婆!どうしてそんな事を!」
「そうすれば日本中に出向いて人間どもの顔を奪うことができるからじゃ。
そしてその顔をつけかえていけば、ワシは永久に若い顔を保っておられる…
不老不死の身となる事ができるんじゃ!」
白粉婆の白い手が、僕の顔に迫ってきた。僕は身をよじってそれをよけた。
その間にも、必死に僕は反撃しようとしたけれど、どうしたわけか、
髪の毛針を放つこともゲタで蹴り上げる事もできない。
体中が金しばりにあったように、身動きがとれないのだ。
「抵抗しようとしても無駄じゃよ、フッフフフ」
駄目だ…
本当に、どうにもならない。
きっと白粉婆が、妖術でもかけたのにちがいない。
でも、いつ、どうやって…
そのとき、父さんが叫んだ。
「鬼太郎、何か奴から受け取ったものがあるのではないか!?」
……!!
そうか、この指輪が…!?
「鬼太郎、指輪を外すんじゃ!」
父さんが言った。
「その指輪が、お前の妖力を封じこめとるにちがいない!」
「だ、黙らんか!」
白粉婆は父さんを突き飛ばした。
「うわー」
「と、とうさん!」
コロコロと、父さんが転がって行く。
386334:02/12/20 23:53 ID:???
すいません。暇な時にやってるので、まだ終わってません…
続きは明日になります。
明日で最後だと思います。
387メロン名無しさん:02/12/21 00:45 ID:???
いえいえ、そんな。
334さんにご無理なく続けていただければ!
ホント、大変ありがたいことです〜(^^*)
388メロン名無しさん:02/12/21 09:26 ID:???
凄い!!お疲れ様です(>▽<)ノ
いよいよクライマックスですね。

最後なんて・・・最終回みたいだなぁ
389334:02/12/22 00:18 ID:???
いやはや続きを楽しみにされてる方もおるので…
いよいよクライマックスです
390334:02/12/22 00:19 ID:???
そうだったのか。僕は、はっきりとわかった。
こいつは初めから、僕を狙っていたんだ。
だから、あの時、僕を油断させておいて、この妖力を封じ込める指輪を
はめたんだ。より確実に顔を奪うために……。
僕が指輪をはずそうとして手を動かそうとしたが、体が動かない。
どうしよう!?
…なんだ?
ふと、白粉婆を見ると苦しんでいる。
「ぐ…ぐぐぐ…」
どうしたんだ?
すると突然、白粉婆は首をかたむけ、まだ、脂粉仙のはがれてない方の
顔を見せた。
ユキさん…そのユキさんはかなしげな表情になって言った。
「鬼太郎さん!」
その声は、年老いた白粉婆の声ではなく、まぎれもなくユキさんのものだった。
今、目の前にいるのは…やっぱりユキさんなのか…!?
「お願い、指輪を外して…」
ま、まさか、白粉婆に体を乗っ取られているのか…?
という事は、ユキさん本人はすでに死……いや!
…そんな事あるはずない!!
白粉婆の顔半分だけ残った、ユキさんの顔の目から、ひとしずくの
涙が流れ落ちた。
「ユ…ユキさん…」
僕は思わず口にした。
その時、父さんが気がついたらしく、向こうの方から姿を現した。
どうやら、うなだれているようだ…
「…体の弱ったユキさんの全身に脂粉仙をかぶせ、体ごと乗っ取ったのか…むごい事をするものじゃ!」
なんだって!?それじゃあユキさんは…
「む、むうぅぅ!こ、小娘め」
急に声が白粉婆に戻った…
どうしたんだ?ユキさんは…
見ると、白粉婆は苦しみながらこちらに近づいてきた。
391334:02/12/22 00:21 ID:???
そして…2人の声が聞こえる…
「鬼太郎…その顔を、よこせぇ…」
「鬼太郎さん…指輪を…」
白粉婆に取り込まれたユキさんが、必死に白粉婆の動きを、封じているかのようだった。
ユキさんが…ユキさんが、僕のために…
「父さん!彼女を助ける方法は何か無いんですか?!」
「…鬼太郎…」
父さんは…ためらいながら言った。
「白粉婆が、本体そのものを取り込んだという例は聞いたことがない。
顔を食べまくった結果、妖力が高まったからじゃろうが…じゃが、鬼太郎!
つらい事じゃろうが、このままでも彼女の為にならん、白粉婆を倒すのじゃ!!」
僕は…ぼうぜんとした手で指輪に力を込めた。
「鬼太郎さん、お願い…そうして…私の…心を踏みにじる妖怪…を倒して…!!」
そう話している間でも、白粉婆の手が、今にも僕の顔に触れようとした。
「鬼太郎、早く指輪を抜いてしまうんじゃ!」
父さんが叫んだ。
力いっぱい、指輪を引き抜いた。指輪はバラバラに散って、雪の上に落ちた。
すると、体中が熱くなるのを感じた。
封じこめられた妖気が元に戻ったんだ…
僕は反射的に白粉婆を突き飛ばした。
白粉婆は尻もちをついてうなだれたまま、ブルブルと震えだした。
そして、ツエをつきヨボヨボと立ち上がった。
「うう…うう…か、顔を…顔をよこさんかぁ!」
叫びながら、飛び掛ってきた。
「鬼太郎――――!」
父さんが叫ぶ。
……白粉婆!?
反射的に僕は髪の毛針を放ってしまった。
ピシュン!ピシュン――――!
吹雪を弾き飛ばす勢いで飛んでいった髪の毛針は、白粉婆の胸元に命中する。
「あああーーーーーっ!!」
最期の断末魔を上げながら、白粉婆は雪の中へ倒れこんだ。
392334:02/12/22 00:22 ID:???
僕は、近づいて顔を見た…
雪の中から…ユキさんの顔が見えた…
ユキさんの目からは、涙が流れていた…
「き…鬼太郎さん…ありが…とう…私、本当に……あなた…の…事が…」
「ユ、ユキさん…」
そこまでしか聞き取れなかった。口の部分がボロッと落ちてしまったからだ。
もう彼女の声を聞く事は出来なくなってしまった…
倒れこんだまま動かない白粉婆…ユキさんを僕はただ、呆然と見つめていた。
最後に残ったその目は、何かを訴えかけているように思えた…
「ユキさん…僕は…」
と、その時、吹雪の勢いが強まって、たちまち前が見えなくなった。
「鬼太郎ー!」
父さんが僕の足元にしがみついてきた。
僕ははかがみこんで、父さんを吹雪から守った。
吹雪はまるで、永久に強まりつづけていくかのような勢いだった。
「うん?吹雪がよわまってきたようじゃぞ?」
父さんが言ったので、僕は閉じかけていた目を開けた。
吹雪はだんだんとおさまりかけていた。すると目の前で白い影がうごめいていた。
まさか…白粉婆!
だがよく見ると、それは砂かけ婆だった。
「終わったの、鬼太郎…」
その周りには、ねこ娘や子泣き爺もいた。
「…白粉婆はどうしたの?」
ねこ娘が聞いた。
「…」
「ねえ、どうなったの?」
「…どうなったんでしょう、父さん」
「お前の顔を奪えぬまま。攻撃を受けた白粉婆はあのままボロボロくずれてしまったのじゃよ。
そして、さっきの突風のような吹雪で吹き飛ばされてしまったのじゃろうて」
父さんが言った。
「鬼太郎。倒れていたユキさんの目を覚えておるか?」
もちろん覚えている…
393334:02/12/22 00:22 ID:???
あの時、ユキさんは僕になんて言おうとしたんだろう。
「…あの目は、お前にホレとる目じゃったぞ」
「…父さん…」
「心ではそう思っていても、体が言う事をきかんかったんじゃろう。
…本当に、いまわしい事件じゃった…」
やっぱり、あの夜の僕たちの気持ちは嘘じゃなかった…
ふっと、僕は、雪の上に砕け散った指輪が無いか見渡した。
でも、どこにも見あたらなかった。
背後で騒がしい声がした。
一反木綿が、ねずみ男と猿造を乗せてきたのだった。
彼らの顔は元通りになっていた。猿造は何も言わなかった。
僕も今更かける言葉も無い。
「うほほほーい、もどった、もどった。おれさまの、ハンサムな顔がもどったーい!」
ねずみ男はノ―天気に大騒ぎしている。
近づいてきたねこ娘がつらそうに、でも意を決したかのように、明るく言った。
「さっ、鬼太郎!ゲゲゲの森に帰ろうよ!!」
…ねこ娘の気づかいがうれしい。
「…うん、帰ろう!」
と返事して、帰路につこうとした…
その時、
『鬼太郎さん…』
不意に、誰かに呼び止められたような気がした。
ふりむくと、さっきと風向きの違う強い風がサ――ッと吹き、粉雪を舞わせた。
それはまるで、ユキさんが『さよなら』と、手を振っている姿に見えたような気がした…
「鬼太郎、何してんのよー、早くいらっしゃいよー」
先に歩き始めたねこ娘が呼んだ。
『さよなら、ユキさん。僕は仲間の所へ帰るよ』
僕は心の中でユキさんに別れを告げた。
そして、
「うん、今行くよー!」
と、仲間の元へと駆け出したのだった…
394334:02/12/22 00:29 ID:???
これで白粉婆編は完結です。
このゲームには全部で3本のストーリーがあって
他には「死神編」と「ニセ鬼太郎編」があります。
この死神編がメインストーリーで、ものすごく長いです。
ただストーリーは良いんですが…システムが最悪です。
ゲームオーバーになると、また最初からだし…
メッセージスキップ機能もありません。

最後まで読んでくれた方々ありがとうございました。
395メロン名無しさん:02/12/22 13:42 ID:???
〜〜〜悲しい話です…。
や、よく描けているというか、オリジナルなのにとても良い出来ですね〜。
鬼太郎の恋というあやういテーマを描けたのはTVに比べて
自由度の高い、ゲームならではなのかもしれませんね。
セガサターンのゲームなんてお目にかかる機会はありえない
はずだったので、334さんのご尽力のおかげで
こうして読むことが出来て本当にありがたかったです。
改めて御礼申し上げます。お疲れ様でした!
396メロン名無しさん:02/12/22 14:30 ID:???
幻冬の脚本は、4部も書いている田村竜だよね。
397メロン名無しさん:02/12/23 00:09 ID:???
>334
ありがと!あるがとーう!!
何故悲恋なのか、最後でやっと理解できました。
こんないいお話を最後まで解説くださり有難うございます!!

本当に5部でもこんなストーリー期待したいです!
398メロン名無しさん:02/12/26 01:01 ID:???
鬼太郎アニメでは妖怪が人間を恨む話しが多いが
そういう話はいい加減飽きたので、純粋に人を襲う妖怪を
いっぱい出してほしい。
399メロン名無しさん:02/12/28 02:18 ID:7R6HVUa8
伊藤正美の紙芝居が激しく見たい。見たいよおおおおおおおおっ!
不気味な奇太郎ハアハア
400メロン名無しさん:02/12/28 02:20 ID:7R6HVUa8
飴屋幽霊ってのも見たい・・・
401メロン名無しさん:02/12/28 11:10 ID:???
一回でいいから俺は金魚の幽霊ってのに鬼太郎と戦ってほしい
402メロン名無しさん:02/12/31 10:04 ID:???
足洗い屋敷
403メロン名無しさん:02/12/31 14:21 ID:???
>>402
対戦済み
404メロン名無しさん:03/01/05 22:44 ID:5MQ0Bx3a
第5部では鬼太郎の性格が最初から鬼畜を求む!
第3部のだるま事務所の話では青いだるまを噛むとき
ものすごい顔をしてたからな…
405メロン名無しさん:03/01/05 22:56 ID:1Jr3KLBU
今日の放送見た?
406メロン名無しさん:03/01/05 22:59 ID:???
武上かよ。
407メロン名無しさん:03/01/06 11:37 ID:luSQsu6R
アニメで肉人形編が見たい
408メロン名無しさん:03/01/06 18:36 ID:ZU1YQk2w
脚本・京極夏彦
409メロン名無しさん:03/01/09 12:24 ID:???
せめてオンモラキ出してからにしてくれ・・・<京極脚本
410メロン名無しさん:03/01/09 14:05 ID:???
そういえばPSか何かで鬼太郎のノベルが出てたのを思い出した
まあまあ売れたと記憶してるが、鬼太郎のゲームが次に出るのはいつだろう
411メロン名無しさん
・・・さあね・・・