庵野 安彦さんの富野さんの世界観をまるっきり否定してしまうような絵がですね、
なんか最初の『ガンダム』の私にとって魅力だったんですけどね。
幾原 最初の頃はね、まだ安彦さんと富野さんの接点ってあったんですよね。
富野さんもまだ、それほど観念的には自分が何を表現したいかって考えてなかったんだと思うよ。
そういう意味ではドラマ主義ですよね。ドラマとして『ガンダム』を考えていたというのがあるんだけど、
観念としてはそれほど『ガンダム』のことを考えてなかったわけ。
多分、「観念描写だけでドラマを作っていいんだ」ということを再確認したのは『イデオン』だろうなと思うわけ。
『イデオン』によって、「観念だけでも話しになるじゃないか」と自信を持ったんじゃないかと思うんだけど。
庵野 多分ね、僕も気付いたのは『イデオン』だったね。途中から走っちゃったからね。
でも、『イデオン』の湖川さんの絵はピッタリしすぎてつまんない。
幾原 ああ、そう。僕は湖川さんの絵、好きですよ。でも、そういうことあるかもしれない。解り易すぎるんですよね。
非常に表情にしても、バイオレンス描写にしても、非常にそのままなんです。解り易いんです。
例えば、子供の首が吹っ飛んだりする描写がいっぱいあったりするんだけど、
ああいうものって、昔、永井豪が「バイオレンスジャック」でやったような確信犯的な描写ですよね。
「ここまでやるんだぞ」っていう確信犯的な描写なんだけど、それがいかにも「確信犯としてやっています」っていうメッセージが解り易すぎる。
庵野 そう。なんかね、それに対する否定的な部分というのが画面から見えてこないんですよ。
安彦さんがやると「こんなのはやりたくない」というようなのが端々に出ていて、それがいい味だしてる。