このように、呼びこみに成功したねーちゃんは、蛍光色のジャンパーを脱いで、
このまま続いて画廊内で解説(売りこみ)をしてくるシステムのようです。
秋葉原の画廊は4階建て以上になっており、1階〜3階が客が入れる画廊になっています。
4階はどうやらオフィススペースとなっているようです。
エレベーターはなく、狭い螺旋階段があるだけです。
まずは2階に連れていかれ、版画らしい絵の解説を聞かされます。
色を多数使っているから、版画を作るのは大変であるということを、
ひっきりなしに言っているのですが、そんなの見ればわかります。
単色版画ではないのですから、版が何枚も必要だなんて常識です。
いくらなんでも、素人だと思ってばかにしすぎです。
「これ1枚にどのくらい製作期間がかかると思います?」
などと聞いてくるわけですけど、そんな感じでトークをはずませようとするのです。
私は6ヶ月程度はかかると思い、「これは6ヶ月程度だね」と答えると、
ねーちゃんも「鋭いですねぇ」とばかりに解説を続けます。
作業工程のことを考えれば、完成までにかかる時間くらい計算できるでしょう。
そんな感じで他の画家の作品を続いてみることになります。
まぁ、私みたいな素人にとって聞いたこともない画家の作品がいろいろと並んでいるわけなんですけど、
良く見るとルイスCラッセンにそっくりな画風の絵もあったりして、だまされる可能性も予想できます。
どうやら、マンツーマンで解説(というか売りこみ)をしているようで、
他にも何人か、イスに座らされてケバイねーちゃんの話しを聞かされているお客さんがいました。
続いて3階につれていかれ、暗い印象の絵や、キモイ感じの絵を見せられます。
全ての作品をひととおり見たところで、
「お客様がお好きな絵ってどんなのですか?」
と、言葉巧みに聞いてきます。
解説の次は本格的に売りこみをしてくるつもりだな、と悟った私は、
ここの画廊にない作風の画家の名前を挙げてみました。
「そうですねぇ、横山大観なんていいですよね〜。」
一瞬、ねーちゃんも困った表情を見せかけましたが、また作り笑顔を取り戻し、
「渋いですねー。じゃぁ、こんな感じの絵なんてどうでしょうか?」
といって、落ちついた画風の絵の額縁を2枚ほど見せてきます。
「まぁ、いいんじゃないですかねー。でも、そんなに好きでもないなーこれは。」
と適当に答えておきます。