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名無し三等兵:
第十駆逐隊司令阿部大佐へ
昭和17年6月6日 0510
阿部大佐、この戦争はあと2,3年は非常な激戦の形で続くと私は思う。
その間君も私や加来艦長と同じ立場になるかも知れない。
その時、一艦、一戦隊の沈没や敗辱の責は一将にとって死にまさるもので
あることが分かるだろう。
敗勢が己の不徳によることなく、たとえ渾身の善戦をなして悔いることがなくてもだ。
古来海将にとって艦とはそのようなものではないか。
君たちが駆逐艦へ退去後、魚雷をこの「飛龍」へ射ち込んでほしい。
わたしがこの世に求める最後の無心、介錯である。