ヨーロッパの剣は…

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 緒戦は小競り合いから始まった
 戦場の北端ではフランス騎兵が皇帝軍騎兵を撃破して皇帝軍の歩兵隊列に襲いかかり、南端では皇帝軍の歩兵がフランス歩兵の攻撃を跳ね返していた
 中央部の戦いは戦史の記録に残る凄惨な様相を呈していた
 フランス軍は、「敵の指揮官を真っ先に殺す」ため、アルケブス兵を前面に集中配置
し、アルケブス兵が発砲するまで安全を確保するために槍兵の第一列と第二列の間に
並ばせた
 槍兵第一列は伝統的に隊長や古参兵が配置される場所だった
 事前の計画では、槍兵第一列が攻撃を受けるまで射撃を控えることになっていた
 フランス軍は、皇帝軍のドイツ傭兵に対して槍一本の長さ、約5メートル以内での
発砲を計画したのだ
 しかし、皇帝軍もまた同じことを計画していた
 結果、至近距離からの斉射の応酬はアルケブス兵と槍兵にとって皆殺しを意味した
 フランス軍がパニックに陥らなかったのは第二列が持ちこたえたからだった
 第一列は文字通り全滅していた
 そのような殺戮にも関わらず、両軍はお互いに動かず槍一本の距離を隔てて
殴り合いを展開していたが、ついにフランス騎兵が皇帝軍の横列に側面から
殴りかかり、皇帝軍歩兵を総崩れにさせ、更に追撃により殺戮を繰り返した

 中央部から直接視認できない北の部分では、皇帝軍の歩兵がフランスの歩兵を駆逐し、
フランス騎兵の3度にわたる突撃を跳ね返し、フランス騎兵に少なからぬ損害を
与えていた
 その時、中央部で皇帝軍が大敗したとの知らせが届き、同時期に同様の報告を受けた
皇帝軍歩兵も後退を始めた
 フランス騎兵は集結して再編成を行い、増援部隊も加えて退却する皇帝軍を追撃し、
大きな損害を与えた

 この戦闘で、フランス騎兵は勝負を決する働きをし、依然として何とか役に立つことを
証明したが、ドイツ傭兵の槍も大勢のフランス騎兵を殺傷した
 しかし、戦闘は小火器戦術を中心に展開され、その恐るべき威力が改めて認識された
が、その後チェレゾーレの槍と銃の運用をもう一度試みようと考える勇敢な者は一人も
出なかった


そんだけ