ヨーロッパの剣は…

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594弾避けのお守り
ついでに防御力ついて

 中世ヨーロッパにおいて、投射兵科を中核とすることが防御を編成する上で
最も標準的なスタイルとなった
 そして、間断の無い射撃を保証するため、陣地と槍兵、必要とあらば下馬騎兵が
射撃部隊を守った
 古代ギリシアやローマの装甲歩兵の標準装備であった楯は次第に姿を消すことになった
 その過程で楯のみを装備した楯兵という兵科が発生したが、これも定着することなく
消滅する
 中世後期において、楯が標準装備として生き残った数少ない例外の一つとして
円楯と片手剣を装備したスペインの戦列歩兵が挙げられる
 マキャベリは彼らを古代ローマ軍団の精神の継承として絶賛したが、
時代遅れとするのが当時の軍事関係者の共通の評価だった

 射撃武器の脅威に楯で対抗しようとする兵士がほとんどいなかったことは
常識的に考えれば当然のことだった
 銃も槍も両手で扱わなければならなかったし、矢や銃弾から身を守れるような
大きくて強度の高い楯は重く、とても全ての歩兵に持たせる訳にはいかなかった

 大砲の脅威も歩兵が楯を持つ動機にはならなかった
 大砲は実体弾や焼夷弾が一般的で、砲手がそれ程覚悟することなく
炸薬を充填した砲弾を発射出来るまでに砲と信管が品質と信頼性を高めるのは
18世紀を待たねばならなかった
 散弾も都合よく広い範囲に弾丸を撒き散らすことは出来なかった
円形に拡大する散弾は、必ずある程度の弾丸を上空と地面に無駄に撃ち込むことになるし、
貫通力に劣る散弾は前列のごく少数の不幸な兵士が弾丸を浴びるだけで、
砲手が予想した程多くの兵士を殺傷できる訳ではなかった
 中世ヨーロッパの野戦において最も現実的な砲撃は、放物線を描く砲弾を遠くに飛ばす
ことではなく、敵兵の密集陣の隊列の中を砲弾が転がり回ることによって
可能な限り広い殺傷ゾーンを築き上げることが出来るよう
近距離から低い弾道で隊列を斜めから砲撃することだった

 陣地への依存と歩兵の防御への性向が強まるにつれ、歩兵は手持ちの楯などより
よほど堅固な地形や遮蔽物の後ろで身を守ることが出来た
 一般に、中世ヨーロッパの歩兵は楯を持つくらいならばより重要なものを担ぐことを
選択した


そんだけ