ヨーロッパの剣は…

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499お馬さんが逝く
 装甲槍騎兵に期待された任務は、敵軍の隊列を崩して混乱させることだった
 そのため、騎兵は緊密な隊形を組んだまま可能な限り速く機動することが要求された
 騎兵は、突撃前進の最後の50〜100メートルしか、
最大戦闘速度(厳密には全力疾走ではない)で突進しなかった
 それ以上の距離になると、敵の隊列を崩すために必要とされた
 緊密な隊形を維持できなくなる恐れがあったからだ
 騎兵として成功するためには、騎士文学が賞賛した個人的活躍や武勇を
否定する必要があった
騎兵に求められたことは、複雑な戦術機動においても常に僚友と隊形を
組み続けることだけだった
 そうして、騎兵は戦闘において、他の兵科では成し遂げられない
勝敗を決する決定的な役割を独占したのだった

 13世紀以降、決戦兵科として完成の域に達した装甲槍騎兵だったが、
他の兵科を圧倒する絶対的な存在であった訳ではなかった
単純な騎兵の突撃のみで勝負を決した戦闘は中世ヨーロッパでも例外だった
 他の兵科との緊密な協同と予備的な戦術行動が、「騎兵突撃」を
演出する上で必要であった
 突撃戦術に特化してしまった騎兵は、むしろ最も他兵科の支援を必要とした
兵科であった


そんだけ