リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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厚木基地第4航空群第6航空隊所属の対戦哨戒機P−3C、コールサイン「ポセイドン74」は
硫黄島北方海上で夜明けを迎えた。
厚木を離陸したのが深夜0時、オンステーションが0200時。それから約2時間で夏の
早い日の出を迎えたというわけだ。
海面状況は穏やかで、強烈な朝日がコックピットに差し込んで眩しい。
「軍艦旗や!」コパイが呟く。彼の好きな戦争映画のセリフだった。
夏のボリューム感のある雲から顔を出した太陽は、幾筋もの光条を千手観音のように広げている。
まさに「軍艦旗」はこの光景を図案化したものといえた。もっとも今では呼称を「自衛艦旗」に
変えてはいるが。
ブラインドを降ろそうとした機長は、止めて美しい朝日を眺めることにした。
「今日はいい天気だな」機長は凝った肩を回しながら言う。
「そうですねー」コパイが答える。ふたりの中央やや後方に座るFE(航空機関士)の2曹は
幹部の会話には加わらず、無言で燃料のチェックをしている。
「機長、コーヒーです」そこへ武器員が後部のギャレーからコーヒーポットを持ってきた。
この「ポセイドン74」の11名のクルーは夏の哨戒飛行でも、朝のコーヒーはホットと決めていた。
武器員は機長、コパイ、FEと順にコーヒーを配る。
オフステーションの1000時まであと約6時間。熱いコーヒーはいい目覚ましだ。
この日の「ポセイドン74」の任務は船団護衛だった。グアムを出港し、日本へ向かう
アメリカの軍事海上輸送コマンドの事前集積船3隻を護衛するのが目的だ。
もちろん護衛は「ポセイドン74」だけではない。海上自衛隊第1護衛隊群の8隻の
護衛艦が事前集積船3隻の周囲を固めている。
事前集積船には米軍の重装備師団が必要とする戦闘車両や重火器などの装備や弾薬が
満載されている。すでに日本入りしている軽装備師団と併せて、危機的状況にある
日本にとっては宝のような存在だ。
絶対に無傷で日本まで送り届けなくてはならない。
「ポセイドン74」は船団の側面と前方にソノブイバリアを展開し、活動中と見られる
ロシア原子力潜水艦に備えていた。後方にはソノブイバリアを展開する必要は無かった。
船団が前方のバリアを通過すれば、そのバリアは後方のバリアへと変わるからだ。
「ポセイドン74」はすべてのブイからの信号が受信できるように、比較的高い高度を
とっていた。
敵潜水艦が近在することは分かっていたが、現在のところ探知は無い。「ポセイドン74」は
一定のパターンで船団の周囲を飛行している。こうした退屈かつ忍耐と緊張を強いられる
哨戒飛行においてはP−3Cの4基のターボプロップエンジンを全て使用する必要は無い。
1番エンジンを停止して「ロイター飛行」と呼ばれる減力飛行で間に合う。
朝日に染まっていた空は、いつの間にか普通の昼の空に変わっていた。
暑くなりそうな早朝の青空を、3発機となった「ポセイドン74」はゆっくりと旋回していった。
747398:2001/07/15(日) 04:21
「機長、食事用意よろしい!」
0600時、武器員がギャレーで温めた朝食の弁当を持ってきた。任務の時間によっては
弁当を2食分搭載する場合があるが、この日は昼前に厚木に帰投する予定なので、朝食分しか
搭載していない。
「じゃ機長、お先にいただきます。ユーハブ」コパイが操縦交替を宣言する。
「どうぞ。アイハブ」機長が操縦をもらったことを宣言する。
コパイが弁当を開く。今日のメニューは握りメシとイナリ寿司、それに吸い物と漬物だった。
各クルーも交代で食事を始めていた。
哨戒機のクルーは全員一緒には食べない。機長も、コパイが食事をしてから30分後でないと
食べられない。これは食中毒対策だった。
コパイが食べ終わった。機長はころあいを見て弁当を開く。その時だった―。
『オールクルー、センサー2!』食事をセンサー1に交替して、任務に復帰していた次席センサーマンの
声が機内マイクに響いた。
『LOFAR(ローファー)コンタクト。潜水艦らしい!』センサーマンは報告する。
続いてどのバリアにコンタクトがあったかを報告する。クルーはいっせいに食事を止め、戦闘配置につく。
P−3Cは広い範囲に伝播する低周波音響をキャッチするために、LOFARブイを
使用したゼジベル戦術を基本としている。北上する船団の西側に展開した数本のバリアに
潜水艦らしい音響が探知されたのだ。「ポセイドン74」は現在東側を飛行している。
『TACO、コックピット。現場にやってください』戦術航空士(TACO)が指示する。
機長は「コックピット、TACO。了解」と答える。
機体の運航責任者はパイロットである機長だが、作戦の指揮はTACOが執る。クルーの
先任順によってはTACOが機長を務める場合もある。
FEがロイター飛行の為に停止していた1番エンジンを起動する。コパイが窓から1番エンジンを
目視確認する。フェザリング状態にあったプロペラがピッチを戻して回転を始める。
「いくよー」機長は軽く言う。操縦桿を回して機体を旋回させる。
『機長、水上部隊に通報します。レーダー、スタンバイ』TACOの声が響く。潜望鏡などを探知
する為にはレーダーが有効だが、TACOは敵側の逆探知を考慮して待機状態とした。
『「ポセイドン74」こちら水上部隊。通報了解。SAU(捜索攻撃隊)に「むらさめ」「はるさめ」を
予定。指揮官第1護衛隊司令』
水上部隊旗艦「きりしま」に座乗する第1護衛隊群司令の決定が通報されてくる。対潜ヘリ2機も
スタンバイしているらしい。
(できれば我々だけで仕留めたい・・・)と機長は思う。「ポセイドン74」の全クルー
も同じ気持ちに違いない。
4900馬力のターボプロップエンジンによって600キロ以上の速力に達した「ポセイドン74」は
3隻の事前集積船とそれを護衛する8隻の護衛艦の上空を通過し、現場へ向かった。
748398:2001/07/15(日) 04:25
>「4900馬力のターボプロップエンジンによって〜」は
 「4基の4900馬力のターボプロップエンジンによって〜」に訂正。
749398:2001/07/15(日) 05:39
「ポセイドン74」は現場上空に到着した。
海面は穏やかだ。しかし敵潜水艦は船団を狙って、このどこかに潜航しているに違いない。
複数のソノブイが潜水艦らしい航走音を探知していた。かなり遠くのブイも探知している。
コンピューターの解析の結果によればノイズはすべて同一の物らしい。同じ音紋を持つ潜水艦が
複数存在する事はありえない。
TACOはこれは「サウンド・チャンネル」と呼ばれる現象だ、と判断した。
これは海中の塩分濃度や水温の変化によって音響が海中を上下する現象で、上からみると
波紋のように広がっていく。かなり遠距離まで伝達すると言われているから、何度も上昇した
ノイズを遠方のブイも捉えているのだろう。
コンピューターには平時に海洋業務群の海洋観測艦などが調査した海中データが蓄積されているし、
「ポセイドン74」も任務開始時にBTブイを投下して水温や水質を確認している。
慎重に解析すれば潜水艦をトラッキングして、その位置を局限することは可能だ。
しかし敵潜水艦が変温層に潜り込んでロストしてはまずい。TACOは念の為にもう一度BTブイを
投下すべきか、と考えた。
解析の結果、潜水艦のおおよその位置が分かった。TACOは機長にその上空での低空飛行を
指示する。高度を下げた為、遠くのブイからの信号は入らない。その代わり、もっとも潜水艦に近いと
思われるブイの信号は確実に受信できる。
敵は約15ノットで船団に向かっている。制空権が無く中継誘導機の支援を得られないからか、
敵は不確実なUSMではなく、魚雷による攻撃を企図しているらしい。船団の積荷の重要性を
分かっているようだ。
ロストは絶対に許されない。「ポセイドン74」は慎重にトラッキングを続ける。そこへ厚木の
対潜センターから音紋解析の結果が来る。
「オールクルー、TACO。目標はシエラ級SSNらしい」TACOはクルー全員に通告する。
「やっぱりシエラだ」ベテランの先任センサーマンが言う。
「機長、特定に入ります」TACOが通告する。
「了解」機長はTACOに指示された戦術パターンを正確に飛行する。潜水艦の位置をさらに
特定するために、より細かいバリアを展開するのだ。
正確な解析を行なうには、TACOが指示する地点に確実にブイを投下しなくてはならない。
また、着水の際にブイが破損しないよう、投下緒元は絶対に厳守だ。これらに注意し、さらに
敵に察知されないように低高度でこの4発大型機を操縦するのはかなり神経を使う。
機長もコパイも、飛行服の中が汗で濡れるのを感じながら操縦する。
新たに投下されたブイから信号が入る。これまでの解析を裏付けるように、敵は航行している。
キャビテーションに変化は無い。上空に「ポセイドン74」が飛行していることに気づいていない
ようだ。尾部に突き出したMAD(磁気探知機)も探知を始める。
敵の潜水艦は完全に「ポセイドン74」の網にかかろうとしていた。
「オールクルー、TACO。攻撃用意!」TACOは宣言した。
750名無し三等兵:2001/07/15(日) 05:51
>>398
いいですね〜
雰囲気でてます
751398:2001/07/15(日) 06:26
敵潜水艦の前方に展開したバリアの信号が強くなってきた。敵はTACOが予想した進路を
進んでいた。
機長は機体を敵の後方から進入させる。高速で視界を過ぎ去っていく海面には何も見えない。
この下に潜水艦が潜んでいる事など、非現実的に感じられた。
『ターゲット、オントップ!』TACOが敵の上空に達した事を宣言する。
「ボムベイ、オープン!」機長は爆弾倉のドアを開く。抵抗が増し、耳障りな風圧音が聞こえてくる。
爆弾倉の中では対潜魚雷が出番を待っていた。
『投下10秒前』TACOが投下時機を確認する。
「ポセイドン74」は敵の前方に出た。
『5秒前、4、3、2、1、投下!』TACOが令する。
魚雷が機体から離れる。『レリース!』武器員が後部のキャノピーから投下を確認する。
パラシュートで減速しながら、魚雷は着水する。
『目標、変針する。45度』敵はようやく気づいたようだ。魚雷は捜索旋回をしながら
海中を潜っていく。すぐにセンサーが敵を探知する。
『魚雷、目標追尾中!』センサーマンが報告する。
機長は次回攻撃にそなえ、急旋回をして潜水艦の上空へ向かう。
『機長、攻撃失敗に備え、アクティブ戦に入ります』TACOが通告する。
敵は気づいた以上、コソコソやる必要は無い。「ポセイドン74」はアクティブ・ブイを
投下する。派手に探信音が海中に打たれる。
魚雷に追われ、アクティブ・ソナーの探信音に叩かれる。敵の乗員は恐怖の真っ只中だろう。
もちろん、攻撃に専念する「ポセイドン74」のクルーにそんなことを考える余裕のあるものは
一人として存在しなかったが。
絶好のタイミングで投下された魚雷に、デコイも通用しなかった。
『間もなくヒット』
『・・・3、2、1、ヒット!』
センサーマンからの報告が入る。
『目標、なおも航行中、再攻撃!』TACOが宣言する。
強固な船殻を持つ敵潜水艦を「ポセイドン74」が投下した魚雷は一撃では撃沈できなかった。
敵は損傷しながらも回避を続ける。
空のハンターは海中の獲物を執拗に追い立てる。再び攻撃針路に入った「ポセイドン74」は
2度目の魚雷投下を実施する。
損傷した敵潜水艦は、もうこれ以上逃げ切れなかった。2本目の魚雷は今度は確実な一撃を与えた。
『目標、沈没の模様!』センサーマンは報告する。
一人も生存を許さず、敵潜水艦は沈没していった。破壊音がかなり長い時間探知された。
それはまるで断末魔のようだった。
開戦以来、少ない戦力ながら一時はかなり日本側に損害を与えたロシア潜水艦部隊では
あったが、日本側などの反撃により次第に犠牲が多くなっていた。
初めて原子力潜水艦を撃沈した「ポセイドン74」のクルーは、素直に勝利を喜んだ。
待機していた水上部隊の2隻の護衛艦は元の陣形に復帰していった。
「ポセイドン74」も哨戒高度へ復帰した。次直機との交替まであと1時間だった。