リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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洋上給油を終えた第4護衛隊群は、石垣島南方海上に進出していた。
護衛艦「せとぎり」は捜索艦に指定され、艦尾から全長10キロにおよぶTASSを
曳航していた。
南洋を思わせる強烈な陽光が照りつける海上は静かだった。各艦はそれぞれ5〜6カイリの
間隔を開けていた。そのため「せとぎり」からは水平線で対空警戒に当たる
「あさかぜ」以外は見えなかった。
これは核攻撃などで部隊が一挙に壊滅するのを防ぐためと、TASSに他艦の
雑音が入るのを防ぐためであった。
「ふ〜、艦橋は暑いですな〜」
補給長が艦橋に上がってきた。食堂の自動販売機で買ってきたジュースを艦長に
渡す。艦橋右舷側の専用の椅子に座る艦長は「ありがとう」と行って受け取る。
「暑いですね」
「ああ、ここまで南下するとかなり気温も上がるね。いっそ1戦速か2戦速で
 飛ばせば、涼しいだろうがね」
「こんなにゆっくりじゃないと、TASSはダメですか」
「ああ、高速航行したら雑音だらけで、捜索はできない」
そこへ船務長が上がってくる。
「CICはジャンバーがないと居られないくらいですよ。真冬並みの寒さだ」
「人間のためじゃなくて、コンピューターを冷やすための冷房だからね」艦長が小さく笑う。
「捜索艦に指定されるのも大変ですね」と補給長。
「もうすぐ『さみだれ』に交替だ。と言っても部隊全体が低速航行だから、
 艦橋が暑いのは同じだけどね」艦長は答える。
「敵の潜水艦はいませんか?」補給長が訊く。
「いないね。少なくともこの海域には。いるのはバシー海峡以西だよ」
「まだそこへは行かないんですか?」
「一昨日のタンカー被弾以来、海運業界がこの海域の安全宣言を求めているんだよ。
 今は戦時なんだから、『安全宣言』なんて画餅なんだがね。船員組合が航行を
 拒否すれば資源輸送は不可能になる。そのためにここを哨戒しているんだ。
 もっとも、それが敵の狙いで、我々をこの海域に拘束すれば、バシー海峡以西で
 好きなだけ暴れることが出来る」
「それじゃ、ずっとここで無駄な時間を過ごすんですか?」
「いや、ここでの哨戒はあくまで海運業界へのアピールだから、群司令も間も無く
 西進を指示するだろう」
「実戦になりますね」
「ああ、こんどはやられないよ。絶対に勝つ」
そこへ「さみだれ」から通信が入る。
『われTASS展張完了。捜索艦、交替用意よろしい』
これを聞いた艦長は当直士官の航海長に命じる。
「よし、TASS揚収。対潜関係員別れ、艦内哨戒第2配備」
艦長の命令を、当直士官が復唱し、当直海曹が艦内マイクを令する。
「TASS揚収用意、対潜関係員別れ。艦内哨戒第2配備、第3直員交替用意!」
すると若い3尉の船務士が電報を持ってくる。艦長はそれを見て、航海長に言う。
「群司令は決断された。ここでの哨戒を打ち切り、西進する。航行計画を立ててくれ」
「わかりました」航海長は間髪を入れずに答え、海図台に向かう。
やがて、「せとぎり」を含む第4護衛隊群の諸艦は速力を上げ、バシー海峡を目指して
西進を開始した。
上空では次直機と交替した対潜哨戒機P−3Cが那覇に向けて帰投していった。