リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

このエントリーをはてなブックマークに追加
566493
 万代は地下にある防災センターに向かった。そこには警
備主任と機動隊の分隊長、そして自衛隊の二曹が小隊との
連絡係として待機していた。
 第35普通科連隊の一個小隊が警備に充当されていたが、
この工場の重要性を考えるとあまりにも人員が足りなかっ
た。製造しているのはH-II Aだけではなく、F-15J、F-2の
パーツ、小牧の誘導推進システム工場より移管されたペト
リオット基本構造、各種AAM,SAMの構造物など、多種多様の
物をこの工場で作っていた。所長は警備の自衛官に向かっ
て「ここは前の大戦中に零式艦上戦闘機を作っていた由緒
ある工場だ。国防の要だ。貴様ら死して祖国の盾となれ」
となどという発言を不遜な態度で言って顰蹙を買っていた
が、発言自体は事実だった。
 そして警備の手順は最近変更されたばかりであった。開
戦当初は、敵を当面不要な北ラインすなわちH-II Aライン
側に追い込む手はずだったが、ペトリオットよりもH-II A
を何が何でも死守しろと言う天の声により、敵を発見した
ら工場の南、旧三菱自動車の土地を使った部品工場に追い
込む作戦に変更された。
 陸自の一個小隊は作戦行動を開始していた。連絡係の二
曹は携帯電話を取り出すと、小隊長に報告した「侵入者は3
名、正面を突破しました。現状では他に侵入者はおりませ
ん。以上」無線機はほとんど前線に供出しており、後方の
部隊では大隊に一つあるかないかだった。民生品とはいえ
携帯電話による通信は無線区間ではデジタル化されており、
例え途中のNTT有線回線部分で傍受されても、その情報が必
要な工作員に届くにはタイムラグが生じる。このような任
務では十分役に立った。電話を切った後、二曹はつぶやい
た。「一個小隊じゃ警備もままならんが、奴らも3人の工作
員じゃ何もできんだろうに。どこも人手不足だな」
567493:2001/07/05(木) 16:28
 主任の中村は工場にいた。有事の際、技能職の管理職は
真っ先に脱出するようきつく通達されていた。カーキ色の
作業着を着た学徒の動員工と違い、その仕事を代わり出来
る人間がいないためである。しかし中村はそんなことを忘
れていた。思い出したのは別のことだ。NHKでH-IIの特集が
あった翌日、近所の子供がすごいすごいと言いながら駆け
寄ってきたこと、気分を良くし仕事を済ませ、飲み屋に行
ったら税金泥棒などと怒鳴られ、家に帰ると「税金の無駄
遣いを糾弾する」というビラが入っていたこと・・。自分
が日本の宇宙技術を支えているんだというプライドと、そ
れを世間は理解してくれないという悲しさ。国家事業に携
わり国の為にその人生を尽くす行為は、現在の国民に罵声
を浴びせられ、将来その恩恵を受ける国民には回顧だにさ
れないことに他ならなかった。そう考えていた中村の耳に
爆音が響いた。いや体全体が震え、見えざる力に押され
H-II A第一ロケット胴体にたたきつけられた。
「一名射殺!」
第二班班長が小隊長に報告する声が工場の壁にこだまする。
「連中、体中に爆薬をくくりつけている様です。奴の爆発
でシャッターが吹っ飛んでいます」「後の2名を追跡する。
第一班はこのまま追跡、第三班は作戦通り南から回り込め」
小隊長の指示が飛ぶ。
「監視カメラ、警察の警備ともさらなる不審者の発見はあ
りません」防災センターの二曹から連絡が入る。まったく
女子高生じゃあるまいに何で携帯電話で居場所の連絡なん
てせんといかんのだ、小隊長はそう感じたが、部下には別
のことを言った。「敵は爆発物を装備し神風攻撃をかけて
来ている、警察にも伝えてくれ」
 程なく、大きな爆発音が一つした。
568493:2001/07/05(木) 16:28
 その爆発はペトリオット機体ラインを破壊した。北朝鮮
の工作員はミサイル状の物体を見つけるとそのラインに駆
け寄り、自らの体にまとった爆薬に点火した。自爆する直
前の彼は任務を全うする自分に陶酔し、気分は高揚してい
た。自らの命と引き替えに日本の国力をそぐことを疑いも
しなかった。洗脳教育と薬物の影響だった。
 最後の一名は、AK74を乱射しながら工場内の道路を南へ
と進んでいった。本来彼がH-II Aラインで自爆するはずだ
ったが、自衛隊に阻まれ死に場を失っていた。
 突如、工作員の正面から銃撃音が聞こえてきた。挟まれ
た!危険を察知した彼は止めてあるバンの陰に隠れる。も
はや逃げ場を失い、任務を全うすることなく殺されること
が明らかだった。バンに弾が着弾しガラスが割れる。道路
のアスファルトで弾が跳ね、アスファルトの粉末が舞う。
前と後ろから自衛隊員がじりじりと距離を詰める。その時
だった。バンにエンジンがかかったかと思うとタイヤが軋
みを上げ、正面の自衛隊員につっこんでいく。放置された
バンにはキーがつきっぱなしであり、工作員はそれを発見
するや否や陰になってる助手席側から運転席に滑り込み、
バンで突撃した。「待避!待避!」バンに突撃された班の
隊員は、銃撃を続ける間もなく散開したが、AK74の掃射を
受け数名が負傷した。しかし、すぐに隊員たちによりバン
は後方から銃撃され、コントロールが効かなくなったまま
トレーラーに追突した。
 最後の爆発が起きた。
569493:2001/07/05(木) 16:29
 工場は4ヶ所から煙が上がっていたが、まもなく鎮火し
た。それと同時に被害者の救助も行われていた。一番被害
が大きかったのは正面門扉付近で、逃げ遅れた動員工のカー
キ色の作業着が、まだらにどす黒く染まり横たわっていた。
油と血にまみれたブルーの作業着を着た熟練工の体を揺す
った機動隊員がそっと首を横に振ると、別の隊員が上に毛
布を掛けた。
 被害状況が続々と防災センターに集約されていた。所長
が駆けつけ、状況報告を受ける。
「機動隊は3名死亡、2名重傷、いずれも正面の門です」
「自衛隊は、1名が意識不明、2名が重傷です」「社員はど
うか」「まだはっきりと集約されていませんが、動員工数
名が死亡、10人前後が重傷です。社員も10名前後が行方不
明です。あとペトリオットのラインがやられました」「H-II
はどうか」「入り口のシャッターが吹き飛びました、制作
中の機体に若干の損傷がでています。工期が遅れそうです」
所長は万代を向いて言った。
「あの、誰だったか、工程管理担当の彼に完成を急がせる
ように言ってくれ。彼のスケジュール管理がないと、ここ
の工場は誰も動けないようだからな」「ライン主任の中村
は、現在病院に収容されています」「何、それでは困る。
君が陣頭指揮を執ってでもH-II Aを増産しろ。とにかく上
からの厳命が来ているんだ。うちの工場の担当分は確実に
仕上げろ」 中村は翌日には職場に復帰した。左手、右足
をギプス固定した状態だったが、頭で考え指示を出す分に
は不足は無かった。自分がいないとH-II Aは製造できない、
その誇りが彼を支えていた。

 純国産ロケットH-II Aは、本来の計画より早く量産体制
に入った。テロでやられた工場もあったが、必要な部品は
他の工場で代替生産された。そして三菱重工の名古屋工場
や飛島工場で最終工程を完了した機体は厳重な警備の元、
種子島へ輸送された。