「さて、そろそろ本題にはいりましょうや。神保さん、なにもこのご時世に世間話にき
た訳でもないでしょう」
編成局長はざっくばらんに切り出した。
「そうですね、えっと今私はこういうことになりまして・・・」
神保はここで名刺を相手に渡した。名刺には「戦時広報統合局長」と肩書きが書い
てあった。
「また仰々しい名前ですなぁ・・・ついに天下の電通さんも戦時体制という訳ですか」
煙草に火をつけた編成局長は、口元に皮肉をうかべていた。
「まぁそんなところです。お上の手先という奴ですよ」
神保は皮肉に答えるでもなく自嘲気味に続ける。
「我々は国の依頼を受けて戦時中の広報計画の一端を担っている・・・というかその
ものですな、をやってる訳です。初めに前置きしておきますが私の依頼は国からの
依頼だと思ってください」
「そういうことね・・・で、我々への"依頼"とはなんでしょ」
編成局長はまだ2口しか吸っていないタバコを灰皿に押しつけて言った。依頼という
言葉をことさら強調していた。
「まず編成に関してですが、現在ほぼニュース一本になっている現在の番組編成を
序々に通常の編成に戻していただきたい。ああ、もちろん番組の内容については我
々がチェックいたしますが」
「情報統制を実施するちゅうことですか」
「平たく言うとそういうことです。もちろん一方的に統制する訳ではありません、いま
まで様々な事情により禁止されていた前線への取材を許可します。まぁ我々の仕
切つきですが」
「つまり全面的に協力しろっちゅーことですな」
「まぁ、そうとらえてもらって結構です」
「もし拒否したら?」
編成局長は再び煙草に火をつけた。
「もちろん、民主国家ですから拒否する権利はありますよ。ただある日ゲリラの乗っ
たダンプが突っ込んできてテレビ局を占拠したり、目の前で爆弾が爆発したりしても
自衛隊は動けない可能性が高いですね。なにしろ戦時中ですから」
「・・・」
その日から、ニュース一色だったテレビにバラエティ番組やドラマが戻ってきた。その
内容に違和感を感じるものも多かったが・・・
(続く)
という訳で245さん。
>>519-521のネタ使わせていただきました。多謝