リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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536宮大工


有楽町線に乗って"戦時広報統合局"局長神保は在京テレビ局の一つ日本テレビ
へ向かっていた。
車内は戦争の影響か閑散としていた。いや正確に言うと自衛隊の制服を着た軍人
達が多くのっていたが、国防省のある市ヶ谷で一気におりてしまった。
彼らを見て神保はつい何時間か前にあった国防省の広報課長との会話を思い出
していた。

「広報課長の清水です」
国防省の会議室でグレーのスーツを着こなし名刺を差し出した広報課長はとても
じゃないが国防省の人間には見えなかった。丸の内あたりの外資系金融機関の
ヤリ手サラリーマンで十分通用しそうだ。
自分も刷り上がったばかりの名刺を渡し、前置きもなしにいきなり本題に入った。
聞いた内容はどういう情報を重点的に伝えたいのか、反対に伝えたくない情報は
何か。その2点だ。
「ええ、それは・・・」
と広報課長は前置きし、A4サイズのペーパーを渡した。
「要は自衛隊が頑張っていて戦況は好転しつつあり、経済も本来の活動が近い内
に再開できるという雰囲気を醸成すること。伝えてほしくないことはその反対です、
つまり銃後の不安がおびやかされつつある。という雰囲気を作り出すことです。そ
の2点さえ守ってもらえれば基本的にはなにをしていただいてもかまいません」
「つまり勝ちはドンドン流し、負けが込んでいるときは国民には報せるな。そういう
解釈でいいわけですか?」
神保は冷たい声でいい放った。
「ああ、それは違いますよ。我々は大戦中の大本営とは違います。ある程度であ
れば負けも公表するし、勝ちであってもなんでも伝える訳ではありません、もち
ろん最終的な判断は我々がしますが、大抵のことであればそちらで仕切ってい
いてかまいません、なにせそういうことにかけてはそちらの方がプロフェッショナ
ルな訳ですから」
「なるほど。そう考えていただけるのですね。では我々の考えと相違はありません。
我々が戦略として考えているのは・・・」

『麹町、麹町です。本日傘の忘れ物が大変多くなっております、どなた様も・・・』
車内のアナウンスが響き思考が中断される、もう目的の駅だ。神保はあわてて席
を立った。
地下鉄の出口をでると相変わらず大降りの雨が降っていた。そういえば南太平洋
上で発生した台風が日本に向かっているというニュースを数日前に聞いた気がした、
その影響だろうか。
テレビ局は幸い出口の目の前にあり対して濡れずにすんだ。テレビ局のロビーでは
テロに備えてか警備員ではなく、戦闘服姿の自衛官が警備していた。受付で訪問先
の名前を告げるとプレートを渡され会議室に通された。会議室には既に訪問する相
手である日本テレビ編成局長が座っていた。互いに面識があるので名刺交換など
は特にせずに軽く世間話をした。もちろん明るい話題ではなかったが・・・
537宮大工:2001/07/05(木) 01:38
「さて、そろそろ本題にはいりましょうや。神保さん、なにもこのご時世に世間話にき
た訳でもないでしょう」
編成局長はざっくばらんに切り出した。
「そうですね、えっと今私はこういうことになりまして・・・」
神保はここで名刺を相手に渡した。名刺には「戦時広報統合局長」と肩書きが書い
てあった。
「また仰々しい名前ですなぁ・・・ついに天下の電通さんも戦時体制という訳ですか」
煙草に火をつけた編成局長は、口元に皮肉をうかべていた。
「まぁそんなところです。お上の手先という奴ですよ」
神保は皮肉に答えるでもなく自嘲気味に続ける。
「我々は国の依頼を受けて戦時中の広報計画の一端を担っている・・・というかその
ものですな、をやってる訳です。初めに前置きしておきますが私の依頼は国からの
依頼だと思ってください」
「そういうことね・・・で、我々への"依頼"とはなんでしょ」
編成局長はまだ2口しか吸っていないタバコを灰皿に押しつけて言った。依頼という
言葉をことさら強調していた。
「まず編成に関してですが、現在ほぼニュース一本になっている現在の番組編成を
序々に通常の編成に戻していただきたい。ああ、もちろん番組の内容については我
々がチェックいたしますが」
「情報統制を実施するちゅうことですか」
「平たく言うとそういうことです。もちろん一方的に統制する訳ではありません、いま
まで様々な事情により禁止されていた前線への取材を許可します。まぁ我々の仕
切つきですが」
「つまり全面的に協力しろっちゅーことですな」
「まぁ、そうとらえてもらって結構です」
「もし拒否したら?」
編成局長は再び煙草に火をつけた。
「もちろん、民主国家ですから拒否する権利はありますよ。ただある日ゲリラの乗っ
たダンプが突っ込んできてテレビ局を占拠したり、目の前で爆弾が爆発したりしても
自衛隊は動けない可能性が高いですね。なにしろ戦時中ですから」
「・・・」

その日から、ニュース一色だったテレビにバラエティ番組やドラマが戻ってきた。その
内容に違和感を感じるものも多かったが・・・
(続く)

という訳で245さん。>>519-521のネタ使わせていただきました。多謝