リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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490遠賀の死闘
敵は自衛隊側を囲むように前進していたが、それが射距離100メートルを切る乱戦ゆえに
ほぼ直線状になっていたことが混乱を生む要因となった。そこの真中に飛び込むような形で
突撃した小隊が全滅するのと引き換えに、左翼側は、真横から見れば分隊単位の厚さになる。
そこを偶然目前にした2中隊第2小隊が好機とばかりに銃剣突撃を敢行したことが、
勝敗を決する要因となった。

敵は左翼側に増援を送ろうとしても,すでに崩壊しかけている指揮体系では、
順次1個小隊ずつまわすという芸当はできなくなっていた。近い者がてんでばらばらに
左翼側の敵に反応しようとしていた。正規軍とは言え、本国では食料確保のための
作業のせいで軍事訓練などほとんどできなかった連中である。
もはや分隊単位での指揮掌握も不可能となりつつあった。

「第1小隊、目標、正面50メートルの敵、各個に撃て!」
「第4小隊、突撃の援護、敵左翼、総員着剣!」
崩れかけている敵に対して、混乱に乗じ最後の全力攻撃を実施しようと、あちこちの壕で
命令が飛び交う。
「第4小隊、目標、第2小隊右側の敵、総員、突撃に,かかれっ」
壕の中から、5・56ミリから84Rまでの火力が敵の左翼と中心部に降り注ぐ。
敵側のあちこちで死が量産される。だが、右翼側では小隊ごとに指揮を維持している
らしく、少しずつではあるが自衛隊側の突撃に押されている正面に増援が加わろうとしていた。

もはや19世紀以前の戦争であった。

双方とも距離に余裕があるときには、銃撃を加えようとする。しかし撃ち尽くしてしまえば、
弾倉を交換する暇などない。短槍と化した着剣済みの小銃での刺突と殴り合いがあちこちで
繰り返される。そこには一般に想像される戦争の残酷さよりも、さらに醜い風景があった。

国民の付託に答えるための行為は、国民の誰もが体験したがらない地獄を代わりに体験することであった。

敵を混乱に陥れる突撃を敢行した小隊長は、数カ所を同時に刺されながら絶命する瞬間、
わずかな後悔と共にくだらない事かもしれないと思いつつも考えた。
確かにくだらないことかもしれない。
地獄の中でその意味を考えていては、私生児たることの付託に答えられなくなるのではないか。