リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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『こちらパンサー。ススキノ、爆弾を積んできたぞ。敵の場所を指示してくれ』
『こちらススキノ。敵は林の向こう側にいる。敵は中隊規模、偵察装甲車を伴っている。
 さきほど空自のヘリが落としたマーカーが見えるはずだ。しかし林の中にはバンシーと
 空自の救難員がいる』
『こちらパンサー。それはまずいな、それだけ近いとバンシーや救難員も爆発に巻き込まれる』
『こちらススキノ。仕方が無い。要請したATHが来るのを待つか・・・』
ファントムと陸自の交信を聞いていた植松は無線を掴んだ。
「こちらカラス。冗談じゃない!バンシーは怪我をしている。敵も目の前だ。救出するには
 今すぐ、林の中の敵を吹っ飛ばす必要がある!」
『だめだよカラス。そんな精密爆撃はできない。対戦車ヘリを待つしかない』
ファントムのパイロットは応える。
(畜生・・・どうすればいいんだ・・・・・)
八方ふさがりの現状に植松は歯ぎしりした。
そこへバンシーが交信してきた。
『8飛行隊まで来たのか・・・貴重なファントムなのに、俺のために・・・みんな済まない・・・・
 カラス、ありがとう。もう結構だ。撤収してくれ。そしてパンサー、ここに爆弾を落としてくれ』
バンシーの言葉に、彼を救出するために出動してきた男たちの表情は凍りついた。
「何言ってるんだ!我々はあんたを助けるために危険を冒しているんだぞ!そんな弱音を吐くな。
 必ず助ける。必ず助けるから、そんな事を言うな!」
植松は叫んだ。ロシア兵はさらに撃って来る。
『カラス、君も分かってるはずだ。現状では俺は助ける方法は無い。このままではさらに君たちが
 危険にさらされる。それでは俺はみんなに済まない。死んでも死に切れん。それよりは
 ここの敵を早めに吹っ飛ばした方が日本のためだ。だから頼む・・・』
バンシーは懸命に訴えた。
「しかし・・・」
植松は言葉を失う。
『ありがとう。俺のためにみんなありがとう。無駄骨だったが済まない。感謝している。
 カラス、岩手に俺の女房と一人娘が疎開している。敵と戦って死んだと伝えてくれ。
 パンサー、早くやってくれ、頼む!』
バンシーはそう言うと、沈黙した。
『カラス、止むを得ない・・・撤収しろ』
機長が絶望的な口調で命じた。
「そんな・・・そんな・・・・」
植松は呆然となる。
「早く撤収しろ!」
機長は感情を切り捨てるように命じた。
「了解・・・」
植松はバンシーを目の前にして、撤収した。
敵弾を避けて、ヘリに戻るまでの間だけはバンシーの事を忘れた。
UH−60は穴だらけだった。機銃を撃ち続けた3曹も、腕に傷を負っていた。
陸自は撃ち合いを続けながら、UH−1へ後退していった。
そこへ2機のファントムが緩降下で進入してきた。林に爆弾を投下する。凄まじい爆発。
林どころか、周囲の植垣も吹き飛ばした。
植松は現場を離れる機内から、その光景を見続けた。激しく後悔した。もっとなにか方法が
なかったかと、自問自答した。
爆撃を終えたファントムがヘリを追い越していく。その翼は哀しそうだった。
(バンシーはどんな男だったんだろう・・・)
植松は初めて救出に失敗した男の事を考えた。涙が止まらなかった。