リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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林道の入り口にあった小さな窪みに植松は転がり込んだ。ロシア兵の銃弾は
杉林に次々に命中し、樹皮が飛び散る。火薬と生木の匂いが鼻を突く。
「はぁ・・はぁ・・・」
植松は全身埃だらけになりながら、息を弾ませる。
木々の向こうからも撃ってくる。ロシア兵は林の中にも潜んでいるようだった。
銃声とヘリの爆音が周囲を支配している。植松は口の中に入った砂を吐き出しながら、
無線で呼びかける。
「こちらカラス、バンシー聞こえるか?」
すぐに返事が来る。
『聞こえるよ、カラス。俺一人のために君だけじゃなく、陸さんも来たのか。
 大げさな事になったな。こんな事なら、機と運命を共にすべきだったよ』
バンシーは済まなそうに言う。
「馬鹿な事を言うな!こっちは命がけなんだ。死んでも助けるぞ」
植松は強い口調で言った。
『ありがとう・・・』とバンシーは消え入りそうな声で応える。
「礼は無事助けてからだ。それより、あんたの位置がわからない。大声で呼ぶから、
 聞こえたら返事してくれ」
そう告げると、植松は「おーい!」と絶叫した。するとすぐに返事が来た。
以外に近かった。植松は思わず、窪みから飛び出そうとする。
するとそこへ再び銃弾が飛んでくる。慌てて伏せる。闇雲に機関拳銃を連射する。
あっという間に弾倉がカラになる。すぐに交換し、低い姿勢で、ゆっくりと進む。
「ススキノ、こちらカラス。敵は林の中にもいる。早くこっちに来て支援してくれ」
進みながら無線で要請する。
『こちらススキノ。分かってる。だが敵は装甲車を伴っているようだ。こちらも苦戦してる』
ススキノは言った。辺りを支配する銃声は、敵側優勢のようだった。
上空のUH−60とUH−1も機銃を撃ちまくっているようだが、あまり効果はないようだった。
むしろ、撤収の事を考えれば、ヘリは戦闘に積極的に参加せず、無事でいてもらいたい。
そこへ無線交信が入った。
『こちらクーガー、コウノトリへ。敵の居場所にマーカーを落としてくれ』
F−15からだった。敵を掃射するつもりらしい。対地攻撃装備の無いF−15にとって、
掩護の手段はそれしかなかった。
無線にコウノトリの返事は入らなかった。しかし低い唸るような飛翔音が聞こえてくる。
林の中から機影は見えないが、千歳で毎日聞いているF−15の音だった。
巨大なジッパーを勢い良く引き降ろすような轟音が響く。バルカン砲の発射音だ。
無数の着弾音。どれだけ効果があるか分からない。
驚いたのかロシア軍の銃声は止んだ。少なくとも陸自と撃ち合っている敵は、そうだった。
しかし、ゆっくりと進む植松には、相変わらず弾が飛んでくる。
(これじゃ時間の無駄だ・・・)
植松は思った。最悪の事態が脳裏をよぎる。バンシーが敵に殺されたり、自分が殺されたり、
ヘリが撃墜されたり・・・。いずれにせよ、そのどれか一つでも現実になったら助からない。
彼は焦燥感に駆られた。
476398:2001/07/04(水) 00:38
植松は林の中を進んだ。20メートルほど進むのに、20分もかかった。
これでは、もしバンシーを救出してもヘリが燃料も厳しい。遮蔽物に懸命に利用しながら、
彼は敵弾を避ける。
(どこにいるんだ、バンシー・・・)
苛立ちながら、植松は無線で呼びかけた。
「さっきの声を頼りに進んだが、まだ見つからない。あんたもこちらが見えないか?」
植松は一応訊いた。すると意外な返事が帰って来た。
『こちらからは見えるよ』
(えっ?!)
植松は驚き、慌てて周囲を改めて見回す。すると50メートルほど離れた巨木の根元に
一人の男が横たわっていた。空自の濃緑色のパイロットスーツを着ている。
顔はよく見えないが間違いない。バンシーだった。
負傷しているようだ。ならばすぐに手当てしなくてはならない。メディックとしての職業意識に
駆られる。
植松は急ごうとする。しかしそこへまた忌々しい敵の銃撃だった。
今度は敵の姿が見えた。敵の姿に植松は絶望的になった。
バンシーのさらに100メートルほど向こうに、装甲車と複数の敵兵がいた。
「バンシー、君の向こうに敵がいる。わかるか」
『俺の向こうに?!いや知らなかった。別のところだと思った・・・顔は出さない方がいいな』
「怪我をしてるのか?」
『大したことはないんだがね・・・こんなとこに着地したから足を捻挫したらしい』
植松はますます絶望的になった。
陸自の連中は苦戦して釘付けになっている。機関拳銃しか持たない自分が、歩けないバンシーを担いで、
林の外まで行くのは不可能に近い。
敵も木の陰にいるバンシーには気づいていないようだった。植松にだけ、撃って来る。
『こちらコウノトリ。カラス、まだか?!こちらはあちこちに被弾している。燃料もヤバイ、
 早く救出してくれ』
機長も苛立っているのだろうが、植松にとってはどうしようもなかった。
(どうする・・・どうすればいい・・・・?!)
植松はさらに焦燥感に駆られた。
そこへ、F−15とは違う航空機の爆音が轟いた。今度は木々の隙間から特徴ある
シルエットが見えた。
ファントムだった。