リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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米機動部隊、米空軍、そして空自の反撃により、ロシア空軍の航空戦力は枯渇しつつあった。
海を越えて北海道北部に来襲するロシア軍機も減少し、北海道に侵攻したロシア軍はエアカバーを
失おうとしていた。
第2航空団は度重なる空襲にも関わらず千歳に踏みとどまり、制空任務に従事した。
また第3航空団は陸自を支援するために八雲に移動し、作戦していた。
同航空団に所属する第3飛行隊のF−2、第8飛行隊のF−4は連日爆装して北海道北部へ出撃していた。
千歳救難隊の救難員、植松1曹に出動命令が出たのは、そんなある日の事だった。
稚内のロシア軍物資集積所を爆撃した6機のF−2の内、1機が対空砲火にやられ、名寄近郊に墜落
した。僚機はパイロットの脱出を確認したという。
もう少し南で脱出すれば、第7師団の戦線に降下できた。しかし懸命に機体を立て直そうとするパイロットの
努力もかなわず、130億円の戦闘機は戦線が彼我混交する地域で飛ぶ事を止めたのだ。
植松1曹を乗せた救難捜索ヘリUH−60Jは巡航速力を上回る速力で現場に向かった。
現場到着まで約40分。植松は不安だった。
戦闘地域での捜索救難だ。当然、敵との遭遇もありうる。30代半ばのベテラン救難員の彼は、厳しい訓練と
経験で、あらゆる修羅場をくぐり抜けている。しかし、それはいずれも平時の経験だ。
もちろん最悪の天候や地形での救難捜索には自信がある。しかし空自の救難隊は戦闘地域における救難捜索活動、
つまりコンバット・レスキューは想定していない。彼は人命を助ける前に、敵と戦わなくてはならないかもしれないのだ。
そうした事態を想定して、米軍のような訓練を行なってこなかった自衛隊の現状を、彼は今さらながらに呪った。
機体にはにわか作りの銃架に12.7ミリ機関銃が装備され、現場の作業に当たる植松には9ミリ機関拳銃が与えられている。
しかし、12.7ミリを扱う後輩の3曹も、そして機関拳銃を持つ植松も、撃ち方は数日前に習ったばかりだ。
いざ、敵と撃ち合うことになったら、ほとんど役に立たないだろう。
眼下に広がる北海道の大地を虚ろな眼で見つめながら、植松は心の中で毒づいた。
(もう少し南に脱出してくれれば良かったのに・・・)
もちろん、こんな事を後輩の前で言えなかった。人命救助の重要性は誰よりも自覚しているのが、救難員だ。
何の準備も無く敵が近在する地域で仕事をしなくてはならない点は不安だが、彼は使命を優先し、気持ちを
引き締めた。
「間も無く現場に到着する。救難員、降下用意」
SH−60の機長が告げる。
「了解」
植松は落ち着いた口調で応える。装具を確認する。最後に機関拳銃の弾倉をチェックする。
ヘリは軽快に旋回し、救難信号が発信されてくる名寄郊外のゴルフ場に進入していった。
461398:2001/07/03(火) 21:17
名寄近郊の山々に囲まれた平地に、そのゴルフ場はあった。
陸自とロシア軍の砲撃戦によるものだろうか、あちこちにクレーターがある。
最高の季節だが、もちろん客はいなかった。
グリーンの外れに濃紺の戦闘機が不時着していた。脱出したパイロットの乗機だ。
自分を見捨てた主への抗議なのか、大地に滑り込むように降りている。
F−2は上空にもいた。脱出したパイロットの僚機だ。他の4機を先に帰還させ、
燃料を節約しながら、上空掩護のため旋回しつづけていたのだ。
『カットラス・リーダー、救難ヘリが見えたか?もう大丈夫だ。レスキューCAPの
F−15・2機も来てるから、帰還してくれ』
どこかの上空で、救難捜索を指揮しているE−2Cが、現場に最後まで残ったF−2に
告げる。F−2よりもさらに上空をゆっくり旋回する2機のF−15が見えてくる。
『そういうことだから、もう帰ってくれ。ありがとう』
無線に声が入る。声の主は脱出してゴルフ場のどこかに居るパイロットだ。
『この下の林の中に降りた。頼むよ』
カットラス・リーダーはそう言いながら、ゴルフ場の外れの林の上空で鋭くバンクし、
飛び去っていった。
「こちらコウノトリ。バンシー、これから救難員が降下する。林の上に向かうから、
マーカーを焚いてくれ」
SH−60の機長は脱出したF−2パイロット、コールサイン「バンシー」に告げた。
『こりらバンシー、コウノトリ。マーカーが発火しないんだ』
「バンシー」が応える。結構広い林だ。直接降下しても「バンシー」の場所が分からない。
「植松さん!林の外で降ろすから、捜索してくれ。いいか?!」
機長が振り向いて植松に訊く。
「ええ!それで結構です。やってください!」
植松は応える。直ちに機長は林道と思われる細道の入り口に機体を持っていく。
回転翼の風圧で、木々が叩かれ、砂埃が舞う。
開放されたドアでは3曹が12.7ミリを構え、周囲を警戒している。
「気をつけて!」
3曹は大声で言う。植松は黙ってうなずく。
(いくぞ!)
植松はリペリング降下を始める。彼のがっしりとした体躯が宙に舞った。