リレー小説!!北朝鮮vs日韓米連合軍

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418398、コテハンにします
消火作業を進める応急班によって、被害状況が明確になってきた。
中国駆逐艦の放った渾身の一発は、アスロック弾庫の装甲を貫通できなかった。
その代わり、ほぼ直下の士官居住区、電信室などに破片を飛び散らせた。
電信室は機器の一部が損傷し、電信員2名が負傷した。
士官居住区は高熱の破片によって火災となった。人的被害は無かったが、
ベッドや衣類、隔壁に塗られた塗料が燃え上がった。
燃えた塗料は有毒ガスを発生させ、閉ざされた空間でOBA(酸素呼吸器)を着けずに作業していた応急班員数名が
失神昏倒した。
また爆風によってウイングの見張員が吹き飛ばされ、割れたガラスを浴びた艦橋要員数名が負傷した。
「司令、大丈夫ですか?!」
艦長は右腕に傷を負った群司令を気づかった。そして「各科、被害状況知らせ!」と命じた。
『こちら砲雷科、機材、人員異常なし!』
『こちら船務科、負傷者数名、機材の一部損傷なるも戦闘継続可能!』
『こちら機関科、機材、人員異常なし。機械全力発揮可能!』
『士官室に第1戦時治療所を設置、軽傷者は科員食堂の第2戦時治療所へ!』
『応急班は火災を前後より攻撃中。白煙が出てきた。鎮火に向かう模様!』
各部からテレトークで知らせてくる。
「司令、被害は軽微。まだ闘えます」
艦長は手当てを受けている群司令に言った。
「よし、やろう!」
手当てももどかしそうに、群司令は双眼鏡を握りながら言った。
依然として砲撃を続けている中国駆逐艦との距離は数千メートルを切っていた。
6隻の護衛艦は反航戦で撃ち合っていた。補給物資を搭載したフリゲイトはますます遠ざかっていく。
このまま敵駆逐艦とすれ違えば、砲塔が前部にしか無い護衛艦は戦闘を打ち切らざるを得ない。
しかし、敵駆逐艦を無視してフリゲイトを追尾するのは難しい。
敵に「ネズミ輸送」を断念させるには、ここで完膚無きまでに撃滅しなくてはならない。
群司令は決断した。
「6護隊司令に命令、貴隊は本隊より分離、敵輸送部隊を追尾し、SSMをもって攻撃せよ。
 主力は敵駆逐艦を追撃する」
そう命じると、群司令は間を置いて艦長に命じた。
「艦長、任せたぞ」
「わかりました。面舵45度、4戦速黒10!」
艦長が命じる。操舵員が復命、舵輪を回す。
所要速力が速力通信器を通じて機関科運転指揮所へ達せられる。
機関科は間髪を置かず、了解ブザーを鳴らした。
「くらま」からの発光信号を了解した第6護衛隊の「ゆうだち」「きりさめ」が、
部隊から分離していく。
「あめ」型護衛艦特有の低いシルエットが、正面から側面へと変化していく。
面舵回頭する「くらま」に「こんごう」「さわかぜ」が続行する。
海戦は最終局面に移行しようとしていた。
日付が変わろうとしていた。
419398:2001/07/02(月) 18:04
「作業にかかっている者の他別れ。艦内閉鎖用具収め」
泊地に錨を降ろした「くらま」は、発電機を除く機関等を停止し、停泊状態となった。
夕刻。志布志湾。夜明け前に戦闘海域から離脱した6隻の護衛艦は、
ほぼ全速航行で九州西岸を南下、大隈海峡を経て志布志に入港した。
第2護衛隊群は10数隻の中国艦艇を撃沈または撃破した。
この戦争における海自最大の戦果だった。
隊員たちはテレビの映り始めた大隈海峡で、自分たちの活躍を報道するニュースを見た。
純粋に喜ぶ者。他人事のように無関心な者。男たちの反応はさまざまだった。
6隻以外に、静かな湾内に停泊する艦船はいなかった。
この同じ九州の北部で激戦が繰り広げられていることが、非現実的に感じるほど平和な湾内だった。
「なにより1名の戦死者も出さず、1隻も失わず、良かった」
群司令は静寂を取り戻した艦橋で言った。
この海戦で「くらま」と「」ゆうだち」が被弾し、8人が重傷を負った。
彼らは志布志に入港する前に、ヘリで鹿屋に運ばれた。
休む間も無く、燃料搭載や損傷修理をしている乗員もいる。
手空きの乗員は夕食や入浴を始めている。
束の間の休息だった。平時ならば、当直員を残して全員内火艇で上陸するところだが、
戦時となった現在では無理な話だった。
「今日の晩飯はステーキ。デザートはスイカですよ」艦橋に上がってきた補給長が言った。
「そりゃあ、いい」航海長が言った。
「ステーキはもたれるよ。でもよくスイカなんて手に入ったな」艦長が言う。
「青森経済連の会長が差し入れだって、あちこちの部隊に送ってるらしいですよ。
 こんな御時世じゃ、売れませんからね」補給長が答える。
「しかし大戦果でしたね」先に食事を済ませた飛行長が間を置いて言う。
「しかしアメリカの偵察衛星によれば、敵の輸送部隊がまた朝鮮半島西岸を南下中らしいですね」
船務長が思い出したように言う。
「敵も必死なんだよ」艦長は小さくつぶやく。
「今夜は第3護衛隊群と佐世保地方隊の生き残りが攻撃に行くそうだ。
 敵も馬鹿じゃないからな。我々よりもはるかにきつくなるだろう」群司令も小さく言った。
「しかし、歴史に残る戦いでしたよ。日本海海戦の現代版だ」
砲雷長が沈んだ場を盛り上げるように言う。
「日本海海戦は戦争の帰趨を決したが、今回の戦いはそうではない。
 もちろん、諸君は誇るべきだが、指揮官の私としては、そうも喜んでいられない。
 戦いはまだまだこれからだからね」
群司令が再び言う。
「しかしこれで味方の士気は上がりますよ。そうだZ旗でも掲げましょう」
戦史好きの補給長が元気そうに言う。
「そんなもの掲げたって、今の若い隊員には意味が分からんよ」
艦長がたしなめる。
「なぁ、ブラボー。日本海海戦やZ旗なんて意味分からんだろ」
傍らで雑務に専念していた今年幹部学校を出たばかりの3尉、砲術士B、
通称「ブラボー」に、艦長は聞いた。
「は、はぁ〜」3尉は本当に分からないようだった。
「江田島の参考館で何を見てきたんだ?これだから最近の若いモンは・・・」
補給長は嘆き、そして続けた。
「いいか。時は明治38年、我が大日本帝国は・・・」
「あ〜っ、また補給長の浪花節が始まった!やめてくれ!」
艦長は大げさに耳を押さえた。
「わははは!」場が盛り上がった。
「薄れた歴史なら、再び刻んでやりましょう」
トップから下りてきた砲撃戦の殊勲者、砲術長が言った。
「そうですよ」士官たちは口を揃えた。
「やりますか」最後に艦長が聞く。
「好きにしろ」群司令は肩をすくませてそう言うと、席を外した。
数分後、「くらま」のマストにZ旗一旒が掲げられた。
「こりゃ、いい絵面だ・・・」
部隊に同行したAP通信の記者は、夕日にへんぽんとはためくZ旗を見ながら言った。
彼は思わずカメラをマストに向けた。