>>328 「忠告ありがとう。さ、はやくいけよ」
はちまきは微笑していった。そろそろ、警察がえっちらおっちら
駆けつけてくる頃かもしれない。
「はい」
女性が母国語で皆に何かいい、全員が三々五々どこかへ歩き出した。
今は散っておき、あとで落ち合うつもりなのだろう。
最後のグループについた女性は、一度だけハチマキの方を振り向き、深くお辞儀した。
はちまきは左手を上げ、それにこたえた。
「さて、と・・・・・」
一人ごちたはちまきは、右手にいまだ握られたままの日本刀に目を落とした。
備前長船の逸品。おそらく、店ならセルシオが数台まとめてかえるだけの値打ちがある。
3代目菊一文字か、それもわるくないな。
はちまきは、腰のベルトに指した鞘に「菊一文字」を納め、歩き出した。