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>>245続き)
俺は、一応国民の意思を代弁するものとしてここにいるんだよな。
だから、ここでまず国家としての方針を策定するためにがんばらなくちゃいけないんだよな。
ふとわきあがってきた焦燥感に対し、彼はまずそう反駁してみた。
だが、それが自分でもうそ臭い理想に過ぎないことはわかっている。
俺は何をすべきなんだろうか。いや、何がしたいんだ?
彼の中で、十数年前の経験が一塊になって押し寄せてきた。
>>247続き
十数年前、彼は中東からアジアにかけて、仲間たちと常に戦場にあった。
そのとき、彼は間違いなく自分のために戦争を行っていた。
国家のためでもなく、虐げられた民族のためでもなく、ただ自分の欲するままに戦いつづけた。
その後、アフリカに渡り、流転を重ねて、今日本の国権を統括する機関の構成員となっている。
そして今、己の無力感をハイビジョンTVの前でかみ締めている。
そうだよな。やっぱり、俺はここにいたくないんだ。
彼は踵を返し、足早に出口へ向かった
「おい、どこへいくんだ?」
彼の同業者-野党の若手議員-が問い掛ける。
彼はそれにこたえず、携帯電話を取り出し、数年間放り出したままのナンバーにかけた。
「もしもし、はちまきか?俺だ、めがねだよ」
戦争、そう、戦争だ。