俺だ。挨拶は無用だ。用件を言え。
そうか。本来なら貴様にも関係のある話だ、いいだろう。
次の国会で、国連海外協力法が改正される。ただし、あくまで憲法の枠内でだ。
そうだ、大陸での状況に関与できるようにだ。
なに、憲法の規定で軍隊の海外派遣はできないはずだ?
お前は馬鹿か。判りきったことを言うな。
今回の法改正は、有志ボランティアによる国連平和維持活動の支援が要目だ。
そうだ、出すのは国防軍ではない、民間人のボランティアだ。
善意と良心に満ち溢れたそれしかない馬鹿どもは知らぬようだが、
ボランティアの語源は義勇兵だ。そういうことだ。
法案改正と同時に、国防軍とは別に日本外人部隊が創設される。
まさか。当然命令系統は統合幕僚会議の下に置かれる。当たり前のことを聞くな。
名前は外人部隊だが、幹部、曹幹部は全員現役の国防軍軍人だ。
身分は民間人だが、事実上の海外緊急展開軍だ。
編成か。国内にあるときは、近衛第五旅団、第一戦車団、第一空挺団として
国防軍の命令系統に属することになる。
有事には、第101機甲師団、第102機甲師団、第103空中機動師団として、
海外に派遣されることになる。
そして、海外に派遣されたら、日本外人部隊総司令部司令官の指揮下で、
国連平和維持活動に協力する。
そうだ、日本外人部隊総司令官は、統合幕僚会議議長の命令を受けることになる。
平時は、日本外人部隊総司令部は近衛第五旅団司令部となる。
そうだ、だからお前をあんなところに配属したのだ。
有事になって、はじめて日本外人部隊は実際の存在として現実に登場するのだ。
装備か。今師団改変中の富士教導団で貴様が指揮していた実験部隊で
試験していたものが配備される予定だ。そうだ、90式改II MBT,89式改II FV、99式SPH、
OH-1改II、AH-64Jとかだ。あと、例の先行者とやらに対抗するためのSH-X、装甲歩行戦闘車
だったか、そう、あれだHAIMACSか、それも独立中隊編成で配属される。
南朝、西朝の私兵か? 当然、奴等も民間人だからな。
あくまで民間人の兵器の所持は法律違反だ。
だが、連中が日本外人部隊の指揮系統下に存在するなら、まったく法的には問題はなくなる。
ふん、べつに友情からではない。
それ以外に、内戦を避ける方法がないだけのことだ。
さっさと連中を武装解除し解体しなかった政治家の尻ぬぐいだ。それだけだ。
納得したか。よろしい。では、適当に仕事をしろ。
どうでもいいが、こうやっていると俺は故人の写真みたいだな。