だが、あまりに絶望的なシナリオを聞かされ、目の前で演じさせられても、
少女の面からその不思議な微笑みは消えなかった。
「そしてっ、六九式にそれを回避する為にどうにかして欲しい、と仰るのですねーっ」
にこにこと、あくまでふんわりとした微笑みと口調で、少女はさらりと言葉を返す。
「……最終的な以来は、そうです、そう言うことです」
憮然として、大井大佐は少女をねめつけた。
多分この少女は、自分が面会を求めたその時点で、自分に何が依頼されるのか予測していたのであろう。
そうでなくては、これほど落ち着きを払って居られるはずもない。
「そでしたら簡単ですーっ 一番簡単なのはっ、ぷーちん大統領を暗殺することですねっ
結局は、これはR国の戦略でしょうからっ」
さらりと、血臭を漂わせるような事を口にする。
さらに憮然とする大井大佐に、少女は楽しそうに白衣を翻してステップを踏みながら言葉を続ける。
「結局、日本が地域覇権大国としてアメリカから独立する事を望んでいるのは、R国だけですーっ
そして、日本とアメリカの同盟関係は、強大な大陸の脅威だけがそれを支えてきましたーっ
けれども、R国はもはやただの地域覇権大国でっ、一国ではパクス・アメリカーナに対抗はできませんーっ
だから、アメリカに対抗できる経済力を持ち、その存在がアメリカから失われることが致命的な影響を
及ぼす国、日本に着目したのですーっ
今や、R国は、満州というバッファゾーンを隔てた日本からは遠い国ですーっ かつてのソ連のよな
軍事的脅威ではありませんーっ
そして、C国という、地域覇権大国を目指していた、間接的には自分達の柔らかい下腹に銃口を
突きつけていた国を事実上崩壊させましたーっ
もはや、R国としては、日本と友好関係を構築する障害はなくなった、とすら言えますーっ
これが、ぷーちん大統領の戦略ですーっ そして、あの方がいなくなれば、これだけの舞台劇の演出を
できる指導者は、R国にはもういないはずですーっ」
「しかし、一国の指導者を、単なる疑惑だけで暗殺するのは……」
「そですねーっ ですから、一番簡単な方法、とゆふに六九式は申し上げたのですよ?
では、次善の策ですねっ
アメリカを国連軍活動から手を引かせることですーっ つまり、できる限りPMFを弱体化させ、
C国に華々しい戦果をあげてもらうしかありませんーっ つまり、国内世論がどういってきても、
C国崩壊だけは避けるのですーっ」