〜起て! 萌えたる者よ〜 慶祝スレッド第七章

このエントリーをはてなブックマークに追加
102醍醐旅団長
旅団長の手記

 こんな事があった。
 ある戦災孤児の収容施設に御慰問に出られたときの事である。
 殿下は食料を始めとする物資と共に御自分で御作りになられた手製のぬいぐるみを、手ずから御配りになられた。施設の少女たちの多くは喜んでくれ、少年たちは「これって激レア?」、「ヤホークで売れるぜ」などと早くも萌える国民の片鱗を見せてくれ殿下ともども苦笑するしかなかった。
 そんな時の事である。
 少年の一人で頂いたぬいぐるみを殿下の顔に投げ返したのである。
「こんなものいらない!」
 少年の叫びは施設に響き渡り。
 周囲の時間が凍りついた。
「お前等がいつまでたっても助けにこないから……おとうちゃんもおかあちゃんも……!」
 激口する少年は、言葉に詰まってしまい、そのままベッドに潜り込んでしまった。
「それは……」
 と私が反論しようとすると殿下は私を目で制し(冷たいそして哀しい目だった)、殿下はぬいぐるみは拾い上げて少年の足許に置いた。
「ごめんなさい。私たちの力が足りないせいで……」
 と頭を足れて改めて少年の足許にぬいぐるみを置いたのであった。
 少年は毛布を被ったまま応えなかった。
「申し訳ありません、我々の力が足りなかったせいで、皆さんを途端の苦しみに陥らせてしまいました。そのせめてもの償いは、きっとさせていただきます。では、今日のところはこれで……。……また参ります」
 と涼やかに御挨拶をなされて、この場を治められ物資の手配をすると再びヘリ上の人となった。
「廣瀬」
「はい」
「……つらいな」
 いったい殿下が何に対して言ったのかはわからなかった。私は殿下の足許でただただ頷く事だけしか出来なかったのであった。この偽善がいつまで続くのかはわからない、そしてこのような事は何度も繰り返されるだろう。だが、殿下はきっとそれに耐えられるだろう。私にとって「つらい」のはそんな殿下の御強さであった……。