「サービスチーム」(その2/完)
やがてマッカーサー将軍が「約束を果たす」とマニラ近郊で
VT信管の説明会が開かれた。将軍は欧州での成功を聞いて、興味津津だった。
高湿度の船倉で長期間運ばれてきた信管に不発が多い事がこの頃に判明する。
1945年7月、ニミッツ提督は「カミカゼ」に対抗する為なら
新しい信管を空輸して全艦隊のVT信管を総入れ替えすると言った。
原因究明を始めて3〜4日後には犯人が判った。
電気雷管を発火させるコンデンサーが湿気でやられていたのだ。
不発の多いロットはSprague Electric社製のコンデンサーを使用。
同社はシーラント剤で作業者が手にかぶれるとしてAPLに内緒で
組成を変更していた。
大規模な交換作戦が終わった時、広島に原爆が投下されていた。
(次回「太平洋の戦い」をUPして完結です)
「太平洋の戦い」(その1)
ヘルキャット、対空輪形陣、レーダー、近接火力と共に
5インチ砲から撃ち出されるVT信管は艦隊防空の基礎を固める。
<巡洋艦ヘレナ、ガダルカナル沖>
1943年1月5日に僚艦と共にいた所を
日本の爆撃機4機に不意を突かれる。
幸いヘレナは被弾せず、一直線に逃げる敵機目掛けて
5インチ砲(Mark 32)を斉射。2回目で1機が撃墜された。
他の1機はワイルドキャットが仕留めた。
<艦名不明、マキン島沖>
敵機に4回斉射、後半2回はMark 32を使用。
3回目で命中、敵機は海上に墜落した。
<艦名不明、ツラギ沖>
5インチ砲を発射。3発目が敵機を完全に捕らえ撃墜。
<艦名不明、サンクリストバル沖>
夜間に敵十数機が輸送船団に雷撃を仕掛ける。
5インチ、40mm、20mm、機関銃で反撃、5機を撃墜した。
「太平洋の戦い」(その2)
VT信管の実戦効果はどの位なのか?
ミシガン大学のDr. Dennisonが率いる科学者が
VT信管と時限信管を統計比較した。
「1943年内に5インチ砲で撃ち出された対空砲弾の内、
75%が時限信管、残りの25%がVT信管だった。
そして同期間に撃ち落された敵機の内、
49%を時限信管が、残りの51%をVT信管が仕留めた。
両者の戦果を比較すると1対3になる。
よって大砲が3倍に増えたようなものだ」と報告された。
(集計期間がずれているがミシガン大学の報告と
私が59で紹介したデータを比較してみると、
59の「対特攻機」と「対通常攻撃機」を一緒に混ぜて
5インチ砲での戦果のみを比較する。
時限信管は計54,238発を使用して計52.5機を仕留める。
19機x1,162発/機=22,078発
33.5機x960発/機=32,160発
他方VT信管は計20,075発を使用して計44.5機を仕留める。
24.5機x310発/機=7,595発
20機x624発/機=12,480発
すると対空砲弾の内73%は時限信管、27%がVT信管を用い、
撃墜機のうち54%を時限信管、残りの46%をVT信管が
仕留めた事になる。
集計期間の違いを考慮すれば、ほぼ同じ生データを基に
統計比較されたと見て良いだろう。
だが得られたVT信管への評価は異なっていた。
「神話」はこんなところから生まれるのかな?)
「太平洋の戦い」(その3/完)
もちろんVT信管の真の姿がどうであれ、
多くの米国将兵がそれに期待して感謝して勇気づけられて
進軍できたに違いない。
硫黄島の戦いでは近接信管が地上砲火、航空爆弾にも採用される。
日本軍も浅田博士の努力により独自の光学式近接信管、
「有眼信管」を生み出すが既に遅かった。
ある米側の記録によると、
「1発の1700ポンド爆弾を積んだ攻撃機「銀河」がサイパンの
飛行場を空襲。爆弾は地上35フィートで起爆し、駐機してあった
複数のB-29が破壊された。
だが硫黄島の陥落により、その成功が繰返される事は二度と無かった」
おしまい。
「引用文献」
Section Tで対人用VT信管の考案したBaldwin氏の回想録です
“THE DEADLY FUZE. Secret Weapon of WW II”
Ralph B. Baldwin
Jane’s Publishing Company
ISBN 0-354-01243-6
私はAmazon.comから古本で入手しました。
皆様、長い間ご迷惑をお掛けしました。
これで完全にネタ切れです。
邪魔だったらレスを削除されても結構です。
明日からはゆっくり眠れそう。
155 :
海の人:01/09/21 01:21 ID:sZm92Vc2
おつかれさまでした。
このスレも永久保存版にしとこ・・・ゴソゴソ
これに懲りずに、また新ネタあったら「続」とか「新」とかで、また続けて下さい
よろしくお願いしますです:-)
どうもありがとうございました:-)
おまけで「ビデオの紹介」
VT信管のビデオテープが米国で販売されている様です。
ドキュメンタリーTV番組のコピーと思われるが、
私は未だ入手していません。
発売元:www.wgvu.org/store/deadlyfuze.html
タイトル:"The Deadly Fuze: The Secret Weapon of World War II
放映時間:60分
価格:22ドル95セント(US内送料、税込み)
海外通販に応じてくれるかは未調査
Yahoo!で検索した米国での紹介、感想記事を読むと
154に紹介した本とこのビデオがネタ元になっている様子。
太平洋戦争中「ベンハム」DD796で対空砲火要員として
同乗していたNicholas Camenares氏も
VT信管の「黒いプラスチック製ノーズコーン」が気になって
それが電波信管である事に気付いたそうですが、
その全体像を知ったのは、これらのソースに接してからとの事
(www.geocities.com/Pentagon/Quarters/7956/rumors.html)
誰かこれを購入してレポートをUPしてくれる人柱さん、
もとい「勇者様」が名乗りを上げてくれないかな?
おまけで「関連サイトの紹介」(その2)
榴弾と信管について3件をご紹介
1.Fuzes
榴弾の信管別破裂パターンがイラストで紹介
www.peakpeak.com/~darylpoe/tanks/artillery/fuzes.html
2. WWII Artillery Notes, Target Considerations
各種地上目標に対する信管の選択
www.jmkemp.demon.co.uk/artillery/targets.html
3.信管
陸上自衛隊の信管についても記載あり
www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/1550/fuse/fuze.htm
(短いが対イタリア戦線も追加)
「地中海での戦い」(その1/完)
北アフリカでの順調な作戦進行を受けて米軍上層部は
この方面であえてVT信管を投入する事は避けてきた。
しかしシシリー上陸作戦ではかなりの抵抗が予想された為、
ついに使用許可が下りた。
被弾して浸水したSwansonが何とか持ち応えた時、
一機のJu-88が来襲。VT信管による5インチ砲が
計15発で撃墜したのが初戦果だった。
この作戦では対空用VT信管が海上から陸地に向けて発射されたので、
不発弾はシシリーの地面に落下した。
上陸侵攻作戦の最中、専任部隊が浜辺で不発弾を探し廻り
彼らは実際に「原型を留めた信管」を回収してきた。
ここでも秘密は守られたのである。
「VT信管の月別生産量」
対空対人、米英両軍の合計
「*」1つが約10万発
総計2,200万発
<1942年>
10万発未満
<1943年>
01月:*
02月:*
03月:**
04月:***
05月:*
06月:
07月:**
08月:**
09月:**
10月:*
11月:**
12月:**
<1944年>
01月:***
02月:****
03月:****
04月:*****(月産50万発突破)
05月:*****
06月:***** *
07月:*****
08月:***** **
09月:***** ***
10月:***** **
11月:***** ****
12月:***** *****(月産100万発突破)
<1945年>
01月:***** ****
02月:***** ****
03月:***** ***** **
04月:***** ***** ****
05月:***** ***** ***** ***(月産150万発突破、ドイツ降伏)
06月:***** ***** ***** **
07月:***** ***** ****
08月:***** ****(日本降伏)
09月:***
10月:**
11月:*
12月:
貴重な資料をどうもです。
消費量はどうだったんでしょう?
>160 殿
消費量については現在のところ資料無しです。
どこかにあるはずと思うのですが...
見つけたら必ずUPします。
(新しい電波妨害実験のネタが入荷しました
真偽の程は皆様にご判断をお任せします)
「ECM」(その1)
ドイツ側がバルジの戦いの最中にVT信管を「廃品置場」から入手した可能性が有り、
彼らがコピーを作り出す前に対抗策を打つ必要が生じた。
Wright Fieldにある航空無線研究所でジャミング装置の開発が始まるが、
研究所の技師だったJack Bowers中尉は次のように回想する。
「近接信管の事は味方にさえ完全に秘密にされていた。
長い事ここでジャミング装置の開発に携わってきたが『そいつ』は初耳だった」
何故もっと早く対策検討をしておかなかったのか質問すると,
「開発部隊がジャミングは不可能と報告したから」との返事。
開発2週間後に出来たジャマーはVT信管の早期自爆に成功する。
「ECM」(その2)
砲弾自体をアンテナ代わりにする宿命から、VT信管の発信周波数は
180〜220MHzに制限されていた。波長にして1.7m〜1.4mとなる
「APT-4」と命名されたジャマーは、この周波数帯に対して
強力な妨害電波を放射する設計であった。
数台のAPT-4はB-17に実装され、本格的なジャミングテストが
エグリン基地で開始された。
このテストに参加したIngwald Haugen中尉の証言によると、
「陸軍が用意した90mm対空砲の上空を飛ぶ段取りになって、
我々は「VT信管+発煙弾」を装填するよう当然要求した。
だが返事はノーだった。」
対空砲担当者曰く「VT信管は時限式よりも1.5インチ長いので、
発煙弾には収まらない」と、
かくして高性能炸薬を用いた「恐怖のテスト」が始まる。
「ECM」(その3/完)
安全の為に照準はわざと30ミル(約1.7度)、後に12ミル(0.6度)だけ
ずらされたが、もしジャマーが作動しない場合は砲弾が240フィート
(約60m)脇で炸裂する事になった(飛行高度は2万フィート)。
3ヶ月間に1,600発のVT信管に狙われながらB-17はテスト飛行を続ける。
機内では2名のECMオペレーターがやって来る砲弾の電波を受信。
VT信管はCW(連続波)を発信するのだが、砲弾は飛翔途中で僅かに偏芯運動を
起こすので、実際には変調波が受信された。
操縦士や航海士は眼下で炸裂する対空砲火を眺めていたが、時には近くで炸裂した。
テスト後APT-4はVT信管による対空砲火を非常に無力化できるとの結論が出された。
おしまい
(またネタ探しの旅に出ます。
間が持たないので雑談でも何でもどうぞ)
165 :
名無し三等兵:01/09/26 22:32 ID:YDoC3xts
そんなに凄い迎撃力があればこの損害は防げたはずだ。
>165殿
>そんなに凄い迎撃力があればこの損害は防げたはずだ。
何の損害が、何%程度(推測、直感で可)かUPして下さい。
ROMしている方が、判断できないと思います。
私も当時現場に居た人では無いので、下方修正するのは一向構いませんが
正解をもらえなければ困ります。
VT信管の定量的なネタは中々見つかりません(泣
しかしSection T以外にも近接信管の開発に携わったチームの
存在に気付きました。
ベル研究所は標準局のスタッフと共同で“Section E”を設立、
・空対地用4.5インチ・ロケット弾の光電管式信管
・航空投下用機雷の磁気式信管
の開発に成功したそうです。
<光電管式>
信管は大まかに3つのブロック、トロイダル状レンズ、光電管そして増幅回路から
構成。レンズはロケットのノーズコーンに装着され、外周方向から光を集めて
光電管に焦点を結んだ。光電管は光を電気信号に変えて増幅回路に送った。
レンズからの入光量が急激に変化すると、増幅回路がサイラトロン管に起爆信号を
送る仕掛けになっていた。これは夜明けや夕方での僅かな光量でも機能したのである。
そしてVT信管と同様に安全スイッチと自爆装置が仕込まれた。
信管先端部にあるレンズは「プレキガラス」と呼ばれる透明なメチルメタクリレート
樹脂が用いられた。レンズは射出成形法にて製造された為に研磨等の後工程が不要だったが、
表面を半透明にするためにスプレーで黒くつや消し塗装を施された。
普通のつや消し塗料ではレンズが痛むため、耐水性シール材と同様に材料選定で
苦労した。
増幅回路等の耐衝撃性を確保するため、各部品は油を含浸させた木材の中に
埋め込まれた後ワックスで固定される。この方法は電気回路が安定する副次効果もあった。
開発のポイントは2つ、約1,000Gの衝撃に耐えられる事と、低コストで大量生産に適している事だった。
ここでベル研が電話機製造を通じて得たノウハウがものを言う。
つまり樹脂加工、ダイキャスト成形、含浸材料、そして配線技術である
大量の光学式近接信管がWestern Electric Companyで製造され、1,000に1個の割合で抜き取り検査が行われた。品質管理をベル研が担当した。
<磁気式>
第二次世界大戦中にベル研究所では別タイプの近接信管が開発された。
それは船舶が地磁気を乱すのを感知する機雷用信管であった。
磁気機雷の為に開発されたこの信管は磁気合金、
とりわけパーマロイと呼ばれる合金技術が要求された。
ベル研究所でパーマロイを発明したG. W. Elmenは後に海軍で
磁気機雷の開発に携わる事になる。
磁気機雷もWestern Electricで製造され、航空機から投下する
最新式の機雷となった。機雷には敵の掃海作業を想定し、
何隻かが通過してから初めて起爆可能となったのである。
機雷投下は高度30,000フィートから「パラシュート無し」に行うことで、
散布精度が高まった。
<出典>
Optical and Magnetic Proximity Fuzes-a Survey
By Edward A. Sharpe, Archivist SMEC (c)
www.smecc.org/pfuze.htm
(パラシュート無しに着水したら衝撃は何Gになることやら)
(VT信管だけでV-1をバタバタと撃ち落した訳でない
事を示す別ネタを紹介します)
ed-thelen.org/pre_nike.htmlから抜粋
「ロンドン防衛戦」(その1)
1944年6月13日、ロンドンへのV-1攻撃が開始される。
V-1は高度300〜3,000フィート(90〜900m)、
速度360〜400mph(580〜640km/h)で1トン近い炸薬と共に飛来。
最初の9ヶ月で、8,000発のV-1がロンドン目掛けて発射された結果、
2,000人が死亡。2,5000人が負傷した。
もし英国がダブルスパイ化計画で「着弾報告」を操作出来なかったら、
被害はもっと増えただろう。
話は1943年に戻る。
V-1の脅威に気付いた英国のEdward Pile将軍は、
ベル研究所に対空火器管制計算機、"Predictor"を要求。
これはレーダーから敵機の情報を受け取り、アナログ計算機で
90mm対空砲に方位、仰角と時限信管の調定を指示した。
"Predictor"が英国に到着したのは、まさにV-1が飛来し始めた時だった。
「ロンドン防衛戦」(その2)
当初V-1を迎えたレーダーには捕捉機能が無い為、V-1を1機撃墜するのに
平均2,500発が必要だったのがM-9の登場で約100発にまで向上した。
当時の対空砲では時限信管を調定してからブリーチブロックが閉じられるまで
7秒は掛かっていたので、Predictor に7秒後の予想位置を計算させた。
対空砲弾は1秒間に約800mに進むのだが、
V-1を中心とする半径30フィート(9m)の範囲で起爆させるには
時限信管の調定に0.015秒以内の精度が要求される。
しかも砲弾の飛び具合は天候、装薬の温度とロット、砲身の磨耗
によって左右される。VT信管はこの難題に答えたのである。
V-1が低空を真っ直ぐ飛ぶ、絶好の的であった事も対空砲火側に味方した。
「ロンドン防衛戦」(その3/完)
それでもロンドン防衛戦の収支(1994年6月〜1945年3月)は
V-1発射総数・約8,000機(100%)の内
ロンドン命中:約2,000機(25%)
迎撃機による撃墜:1,847機(23%)
対空砲火による撃墜:1,878機(24%)
妨害気球による撃墜:232機(3%)
故障による中途墜落:約2,000機(25%)
故障墜落を除去すると「迎撃機+対空砲火のスコアは66%」である。
何といっても炸薬1トンの爆発に巻き込まれる危険を冒して迎撃した
パイロット達による戦果が半分を占めている。
VT信管は「残り半分」の中でのがんばりに過ぎないのだ。
(アントワープの時は66%+αと考えて良いのかな?問題はαの量ですな)
172 :
SAM2:01/09/30 19:11 ID:LQFD8I5A
スレ立てたものです。初め、馬鹿にされていたので、放置されているのだろうと思っていましたが、
Dr.Merle A Tube氏が精力的に詳しく書き込んでいてくれたのを
今日発見して、凄く感激しました。その他の方々もありがとうございます。
専守防衛ということで、どんな敵航空機を撃ち落せる防御法(レールガン、テスラ砲、
プラズナー??)を日本が開発したら、アメ公なんかに大きな顔させないのだけれど。
ところで、自衛隊の91式携行対空ミサイルは、スティンガーより性能良いのでしょうか?
> SAM2殿
強引にスレを乗っ取ってゴメンナサイ。
>専守防衛ということで、どんな敵航空機を撃ち落せる防御法(レールガン、テスラ砲、
>プラズナー??)を日本が開発したら、アメ公なんかに大きな顔させないのだけれど
世界中の軍用機メーカーに袋叩きにされそうな恐い技術すね。
民間ジャンボ機に乗っても、乗務員に笑顔でコーヒーを掛けられたりして(妄想)
私だったらその技術を「封印」します。
>自衛隊の91式携行対空ミサイルは、スティンガーより性能良いのでしょうか?
私には判りません。「初心者歓迎〜」スレで聞いたほうが収穫があるのでは?
174 :
名無し三等兵:01/09/30 23:41 ID:PZC5iZA.
175 :
名無し三等兵:01/10/03 01:56 ID:24KuJZtQ
雷撃隊の数少ない生き残りの方によると、雷撃隊員もやはりVT信管
の存在を察知しており、その対策法をいろいろ考えていたとのこと。
対策法として、雷撃針路に入った後も、エンジンの出力を調整したり、
フラップや脚を出したりして速度を一定にしないようにしていたとのこと。
この方法を実践した機は帰還率が高かったという。
VT信管の性質上速度の増減速はあまり関係ないから、
機銃弾を避ける分には効果があったのかもしれない。
>175殿
>雷撃隊の数少ない生き残りの方によると、雷撃隊員もやはりVT信管
>の存在を察知しており、その対策法をいろいろ考えていたとのこと。
以前の書き込みで「素人目でも新兵器だと分かった」とありましたが、
やはり雷撃隊の方々は、理屈はともかくその威力を実感されたのでしょう。
続編をぜひ希望します。
(四方山話ですが、埋め草として2件をUPします)
<湖底からVT信管を発見>
U.S. GEOLOGICAL SURVEYがオンタリオ湖の環境調査のため、
1978〜1996年にわたりN.Y.州ロチェスター付近の湖底を底引き網で
調査したところ、Mark 45信管の部品残骸が多数発見されたそうです。
ロチェスターにはVT信管メーカーだったKodak社があり、スクラップを
オンタリオ湖に投棄したものと推定。
さすがに信管本体は発見されず、ノーズコーン、電気回路、電池、水銀スイッチ、
電気雷管が破損した状態で個別に回収。
報告書にはMark 45のカット写真とイラストが添付されていました。
出典:“Survey of Lake Ontario Bottom Sediment off Rochester, New York, to Define the Extent of Jettisoned World War II materiel and its potential for Sediment contamination”
By Gregory Kennedy and William Kappel
U.S GEOLOGICAL SURVEY Open-File Report 99-237
<空母エンタープライズの報告書>
太平洋戦線で日本軍の航空攻撃(通常、特攻)を受けた米艦船の
VT信管関連の報告書(対空戦闘、補給)を探していますが不調です。
以下のGunnery Officer Reportのみが見つかったのでご参考まで
艦船:エンタープライズ(CV-6)
日時:1942年9月1日
(リモコン機撃墜テストの半月後、軽巡洋艦ヘレナ「初戦果」の5ヶ月前)
場所:東ソロモン諸島
報告者:O. L. LIVDAHL Lieut. Comdr., U.S.N.
出典:www.cv6.org/ship/logs/gunnery19420824.htm
主題:1942年8月24日の敵機攻撃について
抄訳:(かなり端折っていますで出典を確認された方が良いかと)
・17時前に敵機を発見。距離8,8000ヤード、方位300〜310度。
40,000〜50,000ヤードで迎撃した戦闘機が急降下爆撃機と雷撃機を多数確認。
快晴で視界は良好だったが、敵機は夕日に潜んで接近してきたため発見が遅れる。
レーダーが16,000ヤード手前で捕捉した時はまだ発艦作業中だった。
・最後の1機が発艦してから2分後に最初の急降下爆撃機が襲来、
距離4,000ヤードで対空射撃を開始、この機は撃墜された。
・次に3機の敵機が2方向に分かれて襲来、高度16,000〜20.000フィートから
ダイブしてきた。これら敵機はレーダー射撃管制装置でカバー出来なかったので、
各対空砲が照準を現場で合わせた。
レーダーは「雷撃機接近」も伝えてきたが、実際にはやって来なかった。
・5インチ砲は1.5秒の時限信管(precut fuses)を使用したが結果は良好だった。
対空砲の要員によれば敵機の目視照準は容易であったとの事。
砲弾は敵機の進行先で起爆し何機かは回避運動したが、3機を撃墜した。
・もし5インチ砲と”influence fuzes”を組み合わせれば、
敵急降下爆撃機に大打撃を与えられるだろう。
・最初の爆弾命中で動力がストップし、手動で5インチ砲を操作したので
発射速度は半減になった。
・1.1インチ対空砲は曳光弾で照準を合わせた。照準には経験が必要だが
概して問題は無かった。しかし舷側方向に射撃するときは、
砲座の動きが制限される欠点もあった。照準が合った瞬間に艦がジグザグ運動して、
絶好の射撃機会を逃した事例も複数あった。
砲座はもっと艦首側、艦尾側に移動すべきである。
・少なくとも敵14機が付近海面に落下、もしくは空中で破壊された。
残りの4機が遠方で墜落したのを確認。
・弾薬消費量:5”/28 AA Common = 97 発、1.1 = 1500発、
20mm = 12280発、0.50 caliber = 885発
・20mm砲について(省略)
・艦体への被害について(省略)
(すでに砲術担当士官はVT信管の開発成功を知っていたのでしょうか?
VT導入後の対空砲戦レポートが気になりますね)
179 :
名無し三等兵:01/10/09 17:16 ID:31yCtj56
保存あげ
米軍の場合は弾幕が凄いんでVT信管のおかげかどうか分かるんでしょうか?
>180 殿
時限信管と有意差があれば、対空戦闘の当事者(攻撃側の日本軍も含む)は
「何かしら」を感じると私は思います。
砲術担当士官の生報告書ならば噂話や想像が入り込まないと期待をしていますが、
肝心のソレが入手できません(泣
「VT信管の評価について(私案)」
これまでOUTPUT(命中率等)に注目してVT信管の優劣が語られてきましたが
「INPUTに見合うOUTPUTであったか?」との疑問が当然あると思います。
研究開発費は除外しても、信管製造に関わった資材、工場設備、人件費を
別のエレクトロニクス軍需品製造に振り向けていたら米国の戦況は
もっと有利になったでしょうか?
もしかしたらVT信管は「結果オーライの道楽兵器」、
「単に戦時中の雇用(給与)を確保しただけ」かも知れません。
NBS(標準局)の資料によると戦時中のVT信管生産規模は
全米の電子部品製造業の25%、樹脂成形製造業の75%を占め。
総計2,200万発の信管は関連企業87社、110工場が関与。
総コストは10億ドル、全米の生産コスト・3日分に相当したそうです。
皆様はこのインフラで何を作りますか?
私は月並みな物しか頭に浮かびません(苦笑
・前線の兵士全員に携帯用ラジオを支給
・遭難、航法用のビーコン発信、受信機
・レーダーの生産台数UPに振り向ける
・単に労働力を航空機製造の応援に出す
(この程度ならVT信管を作っても良さそうか)
>182
攻撃を防げなかった場合に被ったであろう人的・物的損害及び
復旧にかかる労力などを考えると見合ったと言えるんじゃない
でしょうか。
もしインフラを転用するとしたらレーダーによる射撃管制に
資源を集中するとよかったと思います。
相当無理してネタを振って見ましたが、このスレもここらが限界でしょうか?
保存用にとageて下さる方が居られますが、私個人としてはこのまま倉庫行きになった方が
気が楽になります。
それでは最後にVT信管とはスレ違いではありますがレスを下さった皆様への
感謝を込めて、オペレーションズ・リサーチの対特攻機対策をUPします。
関連スレが全部沈没状態でかつ新規スレ立てする程のネタではないので、
艦隊防空の一環として興味のある方はどうぞ。
それでは皆様さようなら。
特攻機とOR」(その1)
表1. 特攻機数と艦船への命中率
(表記は機数/率の順)
<大型艦船>
・BB、CA、CL – 48機/44%
・CV - 44機/41%
・CVE、CVL - 37機/48%
<小型艦船>
・DD、APD、DM、DMS – 241機/36%
・AP、APA、AKA、AKN – 21機/43%
・LSM、LST、LSV – 49機/22%
・Small craft – 37機/22%
考察
・突入した477機中、36%の172機が命中。
・477機のうち、詳細報告が残っているのは365機分のみ。
・命中した艦船のうち27隻が沈没
「特攻機とOR」(その2)
表2. 艦船の回避運動と特攻機命中率
(詳細報告のある365機について分類。突入機数/艦船命中率)
<回避運動有り>
・大型艦船 – 36機/22%
・小型艦船 – 144機/36%
・合計 – 180機/33%
<回避運動無し>
・大型艦船 – 61機/49%
・小型艦船 – 124機/26%
・合計 – 185機/34%
考察
・大型艦船は「回避運動有り」の方が特攻機命中率は下がる。
・小型艦船は「回避運動無し」の方が特攻機命中率は下がる。
・どのような回避運動が効果(弊害)あるのかは判断つかないが、
「全速でフル操舵を行わなかった」場合は「回避運動無し」と報告
された模様
「特攻機とOR」(その3)
表3. 回避運動と対空砲火命中率
(突入機数/砲火命中率)
<回避運動有り>
・大型艦船 – 36機/77%
・小型艦船 – 144機/59%
・合計 – 180機/63%
<回避運動無し>
・大型艦船 – 61機/74%
・小型艦船 – 124機/66%
・合計 – 185機/69%
考察
・大型艦船は回避運動の有無と対空砲火命中率の関係は断言できない(サンプルが少ない)。
・小型艦船は回避運動無しの方が対空砲火命中率は向上するが、
小型艦船ほど回避運動によるピッチング、ローリングが影響すると予想される。
「特攻機とOR」(その4)
表4. 特攻機の突入角度と艦船への命中率
「回避運動無し」の艦船への突入機のみを集計(有りでは判断し難いから)
大型、小型艦船を同時集計(艦の形状と対空砲火の配置分布は相似だから)
(突入機数/艦船命中率)
<高高度からの突入>
・艦首正面 – 1機/100%
・左右舷前方 – 6機/50%
・舷側真横 – 10機/20%
・左右舷後方 – 13機/38%
・艦尾正面 – 5機/80%
<低高度からの突入>
・艦首正面 – 11機/36%
・左右舷前方 – 17機/41%
・舷側真横 – 23機/57%
・左右舷後方 – 13機/23%
・艦尾正面 – 23機/39%
考察
・高高度から突入された場合は、艦首や艦尾側が舷側に比べて艦船への命中率が大きい。
しかし低高度から突入された場合は、舷側が船首、船尾側に比べて命中率が大きい。
・特攻機の立場から見ると、高高度から突入する場合は有効面積が大きい
船体軸方向が操縦誤差によるミスが小さい。
他方低高度から突入する場合は舷側の方が有効面積は大きくなりミスが小さい。
「特攻機とOR」(その5)
表5.駆逐艦の回避運動と艦体への命中率
上記の考察を検証するために、回避運動した駆逐艦のデータのみを再集計
(突入機数/艦船命中率)
<高高度から突入>
・特攻機に舷側を向けた – 6機(17%)
・舷側を向けない – 11機(73%)
<低高度から突入>
・特攻機に舷側を向けた – 9機(67%)
・舷側を向けない – 11機(45%)
考察
・回避運動にて対空砲の効率が低下しても、突入角度に応じて操艦すれば
被害は低減できる。
「特攻機とOR」(その6/完)
<提案戦術>
1.「全ての艦艇」は、高高度からの特攻機に対しては舷側を向け、
他方、低高度からの特攻機に対しては舷側を向けないようにすべきである。
(なおこの提案は艦艇に特攻機が命中した際のダメージは特攻機を迎える
角度によって大差が無いとの仮説による。
もし大差があるならば本提案は見直されるべきである。)
2.「戦艦、空母、巡洋艦」は上記の回避運動を「急速」に行うべきである。
3.「駆逐艦および小型艦艇」は上記の回避運動を「低速」に行うべきである。
急速に回避運動すると対空火器の命中精度が低下する。
4.上記の最適戦術を取った艦艇への特攻機の命中率が29%に対して、
そうでない場合は47%であった。
おしまい
191 :
海の人:01/10/22 05:50 ID:3Zxh7p/m
お疲れさまでした。
また質疑応答などでコメントいただけることを期待しておりますです:-)
192 :
名無し三等兵:01/10/29 03:19 ID:P5sdwv/l
age
「軍事とコンピュータ」スレで大迷惑を掛けてしまいました。
無視や批判は覚悟の上でしたが、まさか皆さんが完全に引いてしまうとは...
もう元のマターリ雑談状態には戻らないのでしょうね。
あの話の続編は準備してあるのですが、たぶん何処のスレでも「はた迷惑」かと
何か良い方法はありませんか?
194 :
海の人:01/11/02 00:48 ID:vwr0mhFy
>193
をよ?レス付かないだけで、みなさん静聴体制に入ってるだけなんでわ。
かくいう海の人も、ネタ返しにふさわしいのが手元にないので様子眺めになって
いますが:-)
まぁ、別に荒らしてるわけでなし、小出しに一日1つぐらい出していけば定期刊行に
なっておもしろいのでわ:-)
>194
海の人 殿 アドバイス有難うございます。
これから戦線に復帰します。
(「ミサイル回避方法について」スレで
ミサイル入門教室HPの久保田隆成先生とVT信管が話題に上ったので、
以前ホームページのアンケート欄に「VT信管の文献を紹介して欲しい」と書いたら
丁重な返事メールを頂いた事を思い出しました。
以下はメールのからの抜粋ですが、防秘の関係上これが限界かなと思いました。ご参考まで)
以下抜粋
さて、VT信管に関する文献ですが、VT信管を単独で採り上げている本はな
いようです。
私も、防衛庁内で、1年間、幹部学校(旧陸軍大学に相当)の学生として研修する機会があり、
そのとき ”航空機が対空火器の発達に及ぼした影響について"と題するペーパーを提出しました。
昭和50年のことですが、そのコピーが手元に残っています。
それによると、高射砲の信管は、火道式時限信管、機械式、時限信管、近接信管(VT= Variable Time Fuze) と発達してきたました。
機械式時限信管は、信管測合機によって信管秒時を設定するものですが、
信管測合機を装填のサイクルに組み入れることによって設定時間遅れを極限まで少なくした例が、
90mm高射砲であり、VT信管を組み込んだ例が75mm高射砲で、いずれも、昭和40年代の初期まで、陸上自衛隊で使われていました。
近接信管は、対空ミサイルにも当然使われています。
ただし、ミサイルは、火砲と比べて、容積に余裕があることと、発射時の加速度が少ないこともあって、クリティカルな問題としてはクローズアップされてないのが現状です。
以下に、文献を示します。
歴史に関するもの
@ 小山弘健:「図説世界軍事技術史」、昭和18.7、教材社
A 小橋良夫:「兵器図鑑」、昭和47.2、芳賀書店
B フォッグ(小野訳):「大砲撃戦」、昭和47.7、サンケイ新聞社出版局
C 砲兵沿革史刊行会:「砲兵沿革史」第2巻〜第4巻、昭和40〜47、偕行社
ミサイルの信管技術に関するもの
@ 「Principle of Guided Missile Design」 , D. Van Nostrand, Inc,Princeton, N. J., 1956
(注: 著者は各巻によって異なります)
この文献は、私の記憶しているところでは、全6巻にのぼる大著です。
内容的には、ミサイルの機体、空力、ロケットエンジン、航法はもとより、レーダ、OR、コスト、開発における各種試験などを含んでいます。
ミサイルの開発に携わる人は、一度はお目にかかる、いわば教科書であり、定番でありますので、あるいは、既に読まれいているかもわかりません。
私の手元には、その内、関係分野のコピーが残っています。
さげ
198 :
名無し三等兵:01/11/15 02:27 ID:5Dt4Bcn2
素晴らしいスレだ
ファルコンには近接信管なかったけど、あれは特殊な例ですナ。